No.373, May11, 2018, 米国のメディアで今、何が?(1)「シンクレア問題」から考える

U-Cは、卒業式、そして移動の季節

米国のUrbana ChampaignもSt.Louisも、日本の関西も、5月の爽やかなお出かけ日和、かと思うと、朝夕ストンと冷え、寒暖の差が大きい1週間でした。イリノイ大学は、明日が、卒業式ですね。そして、もう夏休み、移動の季節です。

こいのぼりクッキー@Kobe, May8, 2018

韓国のAlexさんからは、久しぶりに曲紹介のメールが届きました。後半のトークは、最近、気になるアメリカのメディア事情について、Ryutaさんと話ししました。

Part1, Alexさんの曲紹介、1980年大学歌謡祭、U-Cイベント情報

やっと曲紹介するAlexです。何週間テストと宿題に集中しすぎて気づいたらもう時間がこんなに過ぎました。さて、今週の曲は昔の韓国曲を選びました。アーティストは「イ・ボム」と「ハン・ミョンフン」で曲名は「夢の会話」です。この二人は実は歌手ではありません。彼らはこれを歌った当時は普通の大学生だったんです。でも1980年、その時毎年あった「大学歌謡祭」で、二人がこの曲で参加して大賞をもらいました。ちなみに「大学歌謡祭」は1977年から2012年まで行われた歴史ある大会でしたby Alex

이범용「꿈의 대화 (duet with 한명훈)」

ねぎの花@May7, 2018

『タクシー運転手 約束は海を越えて』

韓国の大学歌謡祭について知っている?とKanaさんに尋ねると、「そういえば、先日見た『タクシー運転手 約束は海を越えて』2017年、チャン・フン監督の映画の中で、大学歌謡祭についてもふれていました」とのこと。参考:『タクシー運転手』4種のキャラクターポスター公開、ソン・ガンホらのコメントも2018.3.22 Real Sound 映画部2018,3,22

ベル&セバスチャン「Another Sunny Day」「大学歌謡祭とはちょっとちがうのですが、大学のレーベルからデビューしたということで大学つながり」by Kana

Hiroshimaの春日農園から5月の野菜の贈物@Kyoto, May9,2018

Part2&3, 米国シンクレア問題、大規模企業による放送局寡占、「公平原則」撤廃、言論の自由、

シンクレア問題

「米国の地方テレビ193局を保有する『シンクレア』が、傘下局に対する強制を強めている。内容そのもの以上に、各局のアナウンサーが統一したメディア批判を読み上げさせる姿に『民主主義の危機』との懸念が広がっている…」米巨大メディア、193局を統制 シンクレア「一言一句変えてはならない」『朝日新聞』2018年4月4日より、詳細はDEADSPIN 3/31/18へHow America’s Largest Local TV Owner Turned Its News Anchors Into Soldiers In Trump’s War On The MediaDEADSPIN 3/31/18

番組では、朝日新聞の記事を抜粋して紹介し、その内容を、Ryutaさんにアメリカの現在のメディア事情について補足説明してもらいながら、トランプ政権下のアメリカで(日本でも)何が起きているのかを考えていきました。

Dendrobium @ベランダ, Nagoya, May5, 2018 by Michiyo

大規模企業による地方放送局の寡占と報道内容への介入

今日、紹介した記事で、朝日新聞が問題にしているのは、現在のアメリカのメディアをとりまく状況における、2つの点です。ひとつは、大規模企業によって放送局の寡占が進んでいること。アメリカでは各都市に地方放送局があり、かつてはそれぞれが独立した経営を保ち、4大ネットワーク (ABC, CBS, NBC, Fox) との系列関係を維持していました。しかし近年、買収や経営統合などにより、地方放送局がより大きな企業体に所有されるケースが増えてきました。シンクレアもそのような企業体のひとつです。

(なおアメリカの場合、上記の4大ネットワークのスタジオは直接放送局を保有しているわけではなく、このような地方放送局と系列関係を持つことによって全国展開しています。なのでシンクレアは、それらネットワークのスタジオとはまた別の会社です。)

地方放送局はネットワーク本局制作のドラマやクイズショーの他は独自制作の地方ニュースを流していることが多いので、ふだん視聴者が背後にある所有会社を意識することは少ないのですが、今回のできごとによって、所有会社が報道内容に強く介入することが可能できることが明らかになりました。

トランプ政権になってから連邦通信委員会(FCC)の規制が弱まって、ひとつの企業がより多くの放送局を所有できる可能性が高まったため、寡占と報道内容への介入の相互作用がニュースへのアクセスに与える影響に懸念が広がっています。(地方放送局は地域のニュースを得る数少ない手段なので、ケーブルテレビやオンラインメディアが普及した現在でも、視聴者のテレビの地方局への依存度は比較的高いと思われます。)

参照:「米FCC,メディア所有の規制を大幅に緩和」NHK放送文化研究所『放送研究と調査』2018年1月号掲載 藤戸あや

春日農園から春の玉ねぎ、あまくておいしい!@Kyoto, May10, 2018

「公平原則」(fairness doctrine)がアメリカでは撤廃(1987)

もうひとつ、朝日新聞の記事が問題としているのは、テレビ放送の「公平原則」(fairness doctorine)がアメリカでは撤廃されていることです。この公平原則により、1987年以前のアメリカのテレビ局は、政治など、異なる視点が存在する話題を扱う場合、ふたつ以上の視点を「公平に」時間を割り振って放送することが求められていました。これはテレビ放送に使う電波を「限りある」公共の資源ととらえ、その限りある資源を使うためには市民に「公平な」放送を届ける義務がある、という考えにもとづくもので、日本の放送法などは、いまでもこの考えに強く則っていると思います。

「言論の自由」

ただ、アメリカでは政府によるこの規制が憲法で保証された「言論の自由」を制限するものであるとして反対意見が長く存在し、80年代に入って撤廃されるに至りました。また、この原則はあくまでも電波を利用する「放送メディア」にのみ適用されるものだったため、テレビ局などが新聞・雑誌などの他のメディアとビジネスとして公正に競争することができない、という懸念も撤廃を後押ししたかもしれません。(アメリカはけっこう超党派的に「民間企業の自由な競争」を重視する傾向があります。)

今回の問題に関して、アメリカ国内での議論はどちらかというとひとつめの点(メディア企業の寡占と報道内容への介入)に集中しているように思います。公平原則に関しても、撤廃が国内の政治的な分断に関与した、という批判はありますが、廃止から30年以上が経過していること、また、上述したような憲法で保証された自由や企業間の自由な競争を優先することから、再導入を強く主張するような声は比較的少数です。オバマ政権下でも、メディアの公平性を高めるための施策は、寡占の防止公共放送の充実「インターネットの中立性」(net neutrality)の維持が三本柱でした。

「ネットの中立性」については、時間があれば次回に。ちなみにこれら3つは、どれも現政権になって覆されました。by Ryuta

この問題については、次回の放送に続く、、、

5月のスズランの香り、来週もメディアの問題を考えてゆく予定です@Kyoto, May11,2018

ビートルズ「Strawberry Fields Forever

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