No.511, Jan.8, 2021, 「Hiroshima Nagasaki Download』監督Shinpei Takedaさん(2)「声紋」と表現、アートの力、技術・機械との付き合い方

2021年は、波乱の始まり

日本は大寒波が続いています。1月8日には、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)に「緊急事態宣言」が出されました。医療体制が逼迫しています。アメリカでは、6日にトランプ大統領の支持者が、連邦議会議事堂を一時占拠、7日未明にようやく、大統領選挙の結果が公式に確認され、バイデン次期大統領の勝利が正式に確定されました。波乱の年明けです。

日本時間1月7日夜に、番組を収録しました。Part1は話題が多すぎて、Mugikoはしどろもどろ、Ryutaさんはいつもの通り、落ち着いた声です。Part2&Part3は、映像作家・アーティストの竹田信平さんのトーク後半です。前半はHS Podcast No.510をご覧ください。

Part1, 波乱の始まり。UIUC JPN COVID-19 Town Hallの開催日程

TH、春学期は木曜日6.45pm-7.30pm開催

UIUCの春学期期間(5月まで)には、THは木曜・夕方6時45分~7時30分(CST)に開催されます。COVID-19感染状況がTier3(11/20〜現在)レベルのあいだは、毎週開催されていますが、2021年はしばらくは、1週間交代でZOOM開催と事前録画(by Tatsuya)配信になります。今週は、1月7日にZOOM開催されましたので、来週1月14日は動画配信となります。U-Cを中心としたCOVID-19に関する日々の情報は、THのTwitterに随時に掲載されています。本ページのPodcastの最後に1月7日のTHの資料の一部を掲載します。

「声紋」と表現、メディア、技術、機械との付き合い方

with Shinpei Takeda

Shinpeiさんは、ドキュメンタリー映画を制作する一方で、英語、日本語の著作もあります。また、国連軍縮局と多言語Websiteを共同制作し、個展やグループ展、野外アートプロジェクト、パンク音楽パフォーマンスを展開しています。Shinpeiさんの多様な表現、社会活動はどのようにつながっているのだろう?以下、Mugikoがトークの内容をまとめました。

Part2, 声紋と表現、国連軍縮局との共同企画、多様な媒体の組み合わせ

Part3,ファンタジー実験映画を製作中、アートと技術の進化と人権

Shinpeiさんの表現において「声紋」とは?

S: 声の紋章と書いて「声紋」ですね。『Hiroshima Nagasaki Download』(2010)映画制作をとおして、自分の中や映画作品に落としこめなかったものを別の方法でどう表現をしていくかを考えました。その一つの言語して「声紋」を使いました。声紋には、その人の声の「震え」感じられます。話の内容だけでなく、その人が何を感じたのか、大事だと思います。

M:Shinpeiさんのアートにおいて声紋とは、Shinpeiさんが出会ってしまった経験を他の人とも共有するツールであり、翻訳できない言語のようなものでしょうか。一方で、国連軍縮局プロジェクトとして北米在住の被爆者の声を多言語に翻訳して、映像を地図に落とし、多くの人がアクセスできるWebsiteを制作されていますね。Hiroshima Nagasaki Download : Memories from the Americas 

脱文脈化と新しい動きへ

S:はい、そうですね。北米各地に在住する被爆者の声の記録に多言語の字幕をつける。こうした映像へリンクを貼った地図を掲載したサイトを世界の異なる場所からアクセスすることで、「Hiroshima, Nagasakiの8月のドキュメンタリー」「マッシュルームクラウド」「被害者講話」といった遠い場所での出来事、形骸化したイメージから、decontextualization(脱文脈化)する。観る人によっては、映像の中の語り手がブラジル在住であることによって、あるいはアラビア語の字幕がついていることによって、より身近に感じられ、「個人」のストリーとしてとらえやすくなる場合もあります。そこから、現代の核や放射能の問題や外交政策、桁の違うバイレンスの問題とつながっていくかもしれません。

多様なメディアの組み合わせ

M: Shinpeiさんの活動は、「α崩壊」「β崩壊」「アンチモニュメント」では、色々な素材と声紋を組み合わせてこられました。2020年夏の「声紋源場」では、長崎爆心地公園の地面に「声紋」を描き、これにスマホを当てると音声が流れるなど新しいスキルが使われています。パンク音楽もされています。自分の身体の他にどのような媒体を使って表現されているのですか。

現代の世界の生活者としての視点、「答えは他の媒体にある」

S:それは、いろいろですね。『Hiroshima Nagasaki Download』の映画を観て、「自分探しはやめろ」「若者の自分探しはくだらない」と言われたこともありますが、「自分がなぜ今、ここにいて、どこから来て、どこへ行くのか」という自分にとって大切なテーマとリンクさせながら、現在の世界の生活者としての視点からものを見ていくために、色々な活動をしてきました。そこで、場所、状況によっても違う媒体を使います。「答えは、他の媒体にある」とも言えるかな。本を書くことによって、自分の彫刻でやりたかったことが見つかったり、彫刻でできなかったことを映画で表すとか。でも映画を作ると配給の問題や、映画賞授業などの箔付けが大事だとか、いろいろなものがついてきて多くの人と仕事をするのが面倒なって、一人で自分に向き合う執筆の方により重点をおいたり、、、飽き性なんですね。

ファンタジー映画、目に見えない恐怖と向きあう旅

S:今、ドイツで、『アポカタスタシス』という映画を仕上げをしています。これは、古い言葉で、復元とかリセットするという意味も含まれています。実験的なファンタジー映画で、80〜90分の長さになる予定です。

S:ドイツに放射能に悩む女の子がいる。歯医者に通い連日、レントゲン撮影されるうちに自分が病気になっているのではないかと思い悩む。メキシコの国境沿いの町に麻薬戦争で兄を亡くした男の子がいる。人はなぜ、こうしたバイオレンスによって無意味に死ぬのかを問いながら旅にでる。その2人が、何かに導かれて長崎の五島列島の無人島で出会うことになる。そこは、昔隠れキリシタンが住んでいて教会もあったが、今は廃村となっている。Fukushimaの50年後といったイメージです。ガイガーカウンターを使いながら2人は、人間にまとわりついてくる目に見えない恐怖(放射能やバイオレンス)からどう解放されるのだろうか、というファンタジーです。

AIが生み出す実験的な音楽

S:「目に見えないものへの恐怖」を、この映画では、音で表現しています。音も、目に見えないものです。他のミュージシャンとコラボして、AI(人工知能)に2種類の声のパターンをディープラーニングせます。一つは被爆者の方からのお話を重ねた声、もう1つは、隠れキリシタンが唱えていたオラショ(oratio)というポルトガル語のカトリックの祈りの言葉です。これらの声からAIが生み出す音楽を映画では使っています。

映画の中では色々な言語を話しています。ドイツに住む主人公の女の子はイスラエル人で、ヘブライ語を話す。メキシコの男の子はスペイン語を話します。五島列島の島の中では、異なる言語を使っても分かり合うことができます。

COVID-19の影響、オープンマインド、限られたコミュニケーション

S: 映像は2019年に、ドイツとメキシコと日本で撮影しています。その時はCOVID-19の影響はありませんでした。編集や仕上げは、コロナ禍であってもそうでなくても、定刻に出勤するのではなく、家にこもって作業を続ける。これまではそれがアーティストの特権だったのですが、今では、より多くの人が、テレワークをしている。世界中でそうした現象が起きいるのは、ある意味面白いですね。暮らしのルーティーンも変わってしまって、これまで不可欠だと思ってきたものが、それがなくてもやっていけたりする。一人ひとりが、「自分」と向き合わざるをえないという意味で、みんなのマインドがオープンとなっている一方で、コミュニケーションをとるチャンネルは限られている。

マインドをオープンにするアートの力

S:アートとは、見てくれた人のマインドを少しでもオープンにするものだと思っています。見てくれた人が、こういう視点もあるんだ、それまでと少し違う見方になる。映画館から出てきたら、ちょっとだけ世界が変わった風に見える、それがアートの醍醐味です。コロナが誰かが仕掛けたアートプロジェクトだとしたら、ある意味でこれにかなうアートはない。これだけ世の中がこれまでとは違ったふうに見えるわけですから。核の脅威や環境問題なども、ある意味では世界中の人が経験している脅威だけれど、なかなか身近に感じることができない。

コロナを通して、世界中の人たちが同じことを経験して、同じ問題を考えている、という点では、面白い時期です。そのなかで、つながり方を考えていかなければならない。機械との付き合いをSFじゃなくて、リアルに考える時代になっています。

技術と機械の文化圏をクリティカルに考えていく

S:技術と機械の新しい、ある意味での「文化圏」のなかで、バーチャルな世界の中でも人権の問題や、例えばグーグルのアルゴリズムなどを考えていかなければならないと思います。AIによるリサーチなどもどんどん出てきますが、機械が中立であったりするわけではありません。誰がそのアルゴリズムを作っているかというと、人間です。機械を作る、使う人間の偏見や無意識の偏向がマシンにも反映されることもあります。顔認証にしても、例えば、黒人でパーカーという映像をどう認識するかは、現存の社会の人種差別をAIがどんどん学んでいきます。機械にどんどん頼らざるをえないなかで、そこにある文化圏をクリティカルに考えて行くことはとても重要です。

「歴史」の膨大なアーカイブを再活性化、機械をうまく使い、共存

S:「歴史」を語るときにも、この膨大なアーカイブの資料をどうやって残そいていく、残すだけでなく、どうやって多くの人がそれにアクセスして、残されたものを再活性化させていくかを、その方法を考えていかなくてはならない。それを人間だけではできないこともある。どのようにうまく機械を使い、共存していくのか。いろいろなアプローチがあっていいと思います。(まとめby Mugi。今日のトークの語彙の解説やコメントを、来週していきます)

なお、本日の音楽も、Shinpeiさんが参加されているバンドの曲です。■Ghost Magnet Roach Motel「Ghost Magnet Roach Motel#1, #3」*『Ghost Magnet Roach Motel』VICE en Español.

UIUC JPN COVID-19 Town Hall

2021年1月17日(木)18:45からZoomで開催されました。Tatsuyaさん、いつもわかりやすい資料と解説をありがとうございます。そこで提示されたスライドのうち3枚を掲載します。随時の情報は、Twitterをご覧ください。なお、来週木曜日のTHはTatsuyaさんによる動画配信です。

UIUC JPN COVID-19 Town Hall, Jan.7,2021資料by Tatsuya, p.6, リソース

イリノイ州の陽性者累積数は、100万件を超え、全米で5番目の多い数字です。

UIUC JPN COVID-19 Town Hall, Jan.7,2021資料by Tatsuya, p.10, リソース

C-U Public Health Districtのサイトに掲載されているChampaign CountyのCOVID-19に関する統計からの抜粋です。陽性者数が増えているようにも見えますが、これはホリデー明けの検査数の結果が今週出されたことにもよるようです。感染拡大は高止まりの傾向にあるようです。

1月7日の「州知事の会見によると、IL州内の11Regionのうち、IDPHが定めるTier 3→Tier 2への移行基準を満たすRegionは、1月15日以降、Tier 2へ復帰できるようになる見通し。それまでは、Holidayシーズンの影響を見極めるため、州内全域で(感染データの状況に拘わらず)Tier 3が継続される方針」TH Twitteより

UIUC JPN COVID-19 Town Hall, Jan.7,2021資料by Tatsuya, p.11, リソース

「Champaign郡内では、今日(1月8日)から75歳以上の一般市民を対象にCOVID-19ワクチン接種が開始。接種を受けるには、CarleまたはCUPHDのウェブサイトより事前登録が必要」TH Twitteより

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