No.532, June4, 2021, IL州のワクチン接種の展開 with Tatsuya

IL州、6月11日にPhase5へ移行する見通し

UIUC JPN COVID-19 TOWN HALLのTatsuyaさんからのメールによるお知らせ(6月4日)によると、「IL全域では最速で来週金曜(6月11日)にPhase 5(施設・店舗の定員/営業制限の全面的解除)へ移行する見通しです。現状、監視対象となっている全てのCOVID-19感染データが安定しており、来週金曜日のPhase 5移行の確率が高まっています」。今後については、UIUC JPN COVID-19 Twitterの最新情報をご覧ください。

Tatsuyaさんとのトークは、先週(HS No.531:IL州のCOVID-19感染拡大と対策の概要)に続き、今回は、IL州のワクチン接種の展開についてです(Part2&Part3)。連邦政府と州政府との関係、州内での政策と情報伝達、有事の際を想定した体制づくりなど、いろいろな問題を考えさせられます(2021年5月22日収録)。

日本はワクチン接種、少しずつ

今週は、関西は梅雨が一休み、数日はよく晴れました。非常事態宣言が6月20日まで延長されました。新規に確認されたCOVID-19感染者数は減少していますが、医療体制はいまだ厳しい状況が続いています。高齢者を対象としたワクチン接種の進捗状況は、地方自治体によって異なりますが、今後は、大学や企業での関係者へのワクチン接種も実施されるようです。

SKU「自分語り」企画

Part1は、6月3日に収録しました。Mugikoが担当する甲南大学「メディア文化論」の受講生(SKU: Studetns of Konan University)による「自分語り」企画についてRyutaさんと話題にしています。あなたがHSに出演するとしたら、何ついて話しますか、という問いに240の企画案が集まりました。「非常事態宣言」下で勉強も暮らしもアルバイトも趣味の活動も、さまざまに制約される中での、大学生の多彩な関心、活動が見えてきます。来週からいくつかを紹介していきたいと思います。

Part1, 「自分語り企画」bySKU、Kanaさんのアイリッシュパンクやラップ選曲

Kanaさんからのコメント:SKU「自分語り」企画、圧倒的に「コロナ」関連が多かったですね。そのことだけでも、この企画が現役大学生の現実を反映しているなと思いました。コロナ下で新しいことを始めた人も多かったようですね。特にごはん・おやつ系。ーKana

そこから着想を得て、Kanaさんが選んだ曲はこちらです。

■Dropkick Murphys / “Mick Jones Nicked My Pudding“:アイリッシュ・パンクの代表格バンド(といってもアメリカ発なのですが)、ドロップキック・マーフィーズのメンバーが大事にとっておいたとっても美味しいプディングを、パンクの神様ザ・クラッシュの元ギタリスト、ミック・ジョーンズが食べてしまった! という大変社会的な大問題を扱った曲です。みなさん、冷蔵庫にある仲間や家族の食べ物を勝手に食べないようにしましょう。■chelmico / 「爽健美茶のラップ」毎日いろいろあるけれど、どんな時でも水分補給は大事です。■最後に、お菓子作り男子の話題から、最近大好きなYouTubeおやつ・ごはん調理チャンネルも貼っておきます。作業が綺麗で字幕も可愛くてとにかく癒しです。ばくばくっくさんのふわっふわ台湾カステラ。-Kana

IL州のワクチン接種の展開with Tatsuya

今週のテーマは、IL州のワクチン接種の展開についてです。Tatsuyaさんの声による丁寧な解説と、U-C地区に焦点をあてた詳しい文章を合わせて読むと、よりわかりやすいです。MugiPart2, IL州ワクチン配分、接種の仕組み、進捗状況

Part3,予約方法、柔軟な現場での対応、住所のない人へも接種、接種後のケア

2020年12月ーアメリカでのワクチンの緊急使用許可

アメリカ国内では、昨年12月10日にPfizerのワクチンに、同12月17日にModernaのワクチンに対し、FDA(米国食品医薬品局)から緊急使用許可(Emergency Use Authorization)が承認され、治験外での本格的接種が開始されました。

C-U地区のワクチン接種の展開

C-U地区でも、12月15日頃からPfizerのワクチンの第1陣が到着し、医療関係者を対象に優先接種が始まりました。その後、C-U地区では、概ね下記の時間軸で、ワクチン接種対象が拡大されてきました:

・~1月上旬:医療従事者、長期ケア施設入居者

・~2月上旬:65歳以上の高齢者、Front Line Workers(消防、警察、学校の先生など)

・2月27日:Johnson & Johnsonのワクチンに対しEUA承認

・~3月中旬:16歳以上で基礎疾患持ちの人

・~4月上旬:その他のEssential Worker(大学職員、メディア、教会関係者など)

・4月5日~:16歳以上の全人口(5月13日~は12歳以上の全人口)

新型インフルエンザを想定したパンデミック対応戦略をCOVID-19に応用

C-U地区は、IL州内で見ても、COVID-19ワクチン接種が特にスムーズに進捗した地域の一つです。いくつか要因は考えられますが、CarleやUIUCを始めとした医療資源・態勢が潤沢であった点、また、2010年ころにCUPHD(C-U保健所)が新型インフルエンザを想定して作成しステークホルダー間での机上演習を行っていたパンデミック対応戦略のうち、ワクチン大規模接種計画を微修正のみでCOVID-19に応用できた点があると思います。ワクチン接種初期(2021年1~2月)には、IL州知事や州兵などがC-U地区の接種会場を視察に訪れ、州内各地の大規模接種会場の設計・運営のモデルケースとして活用されました。

ワクチン接種速度の鈍化、集団免疫獲得をめざしたインセンティブ対策

2021年6月4日現在、IL州内の18歳以上の51.1%がワクチン接種を完了、67.9%が最低1回接種しています。ただし、最近数週間は接種速度が鈍化しており、州政府が様々なインセンティブ対策(ワクチン接種者に対しRestaurant/Barでのアルコール飲料一杯無料,“ワクチン宝くじ”の創設など)を打ち出しています。人口全体での集団免疫獲得(ワクチン未接種の人々を含め人口内での感染拡大を完全に抑制できる状態)に至るには、全人口の70~80%の人々がワクチン接種を受ける必要があると考えられており、IL州では独立記念日(7月4日)までに18歳以上の70%が最低1回接種を受けることを目標としています。ーTatsuya

Tatsuyaさんとのトークの中で、Mugikoには、とくに3点が印象に残りました。

連邦政府、州、地方自治体、軍隊の連携

第1に、連邦政府と州、地方自治体、軍隊の迅速な連携です。連邦政府(FDA、CDC)のワクチン緊急許可が決定後、各州にワクチンが直ちに配分されました。州政府によって方針は異なりますが、イリノイ州では、ワクチン接種が開始された当時は、COVID-19感染による死亡率が高いCountyにより多く配分されました。またワクチンを、IL州内の11Regionの拠点へまず軍が搬送し、そこからそれぞれにCountyの接種会場等へ届けられました。

有事にむけての現場からの実務的な対応戦略

第2に、U-Cでは、過去の危機対応の経験や想定が、その後に戦略的に現実的に応用されていること。連邦政府や州の政策決定を受け、ワクチン接種を行う現場での対応は、County によって異なります。U-Cの場合は、Tatsuyaさんの説明によると、C-Uの保健所が、新型インフルエンザを想定したパンデミック対応戦略を立て、保健所を含む関係組織(ステークホルダー)間がどう動くかの実務的な机上演習を以前に行なっていたというTatsuyaさんの説明に、驚きました。

公的制度を補完する多様なコミュニティの流動的動き

第3に、パブリックな行政の動きに対して、様々なレベルのコミュニティ(教会やNGOなど)が、状況に応じて、積極的に対応していることです。それが「自分たち」や「関係者」にとって必要である、あるいは得策だと判断した場合、教会がコミュニティのために接種会場の設定を申請したり、移民やホームレスなど、医療や福祉、保険の対象から除外されやすい人々を、ワクチン接種の動きとつないでいくという活動です(HS No.529)。

科学や理論に基づく政策表明とインセンティブ対策の組み合わせ

こうした動きがあまりにも緊密に機能すると、恐ろしいなあ(大きな力に一人ひとりが、呑み込まれてしまいそうな)と思います。しかし、実際には、マスク着用の呼びかけも、ワクチン接種も、それに応じるかどうかは、個人の判断にゆだねられています。より多くの個人を動かすために、科学や理論に基づいた政策と、ワクチン接種に宝くじをつけるようなインセンティブ対策、この組み合わせが通用することが、今のアメリカの政治のリアリティなのかなあ。来週、Tatsuyaさんトーク第3部では、COVID-19を通して、IL州の、あるいはアメリカのどんな側面が見えてくるのかを考えます。-Mugi

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