No.547-2, Sept.17, 2021,「京うちわなお話」基本編 with 蜂屋うちわ職店

路地奥に「蜂屋うちわ職店」

Kyoto在住のMugikoが、自宅から徒歩6分のところに発見したのが、ちょっと階段を上がった路地奥のうちわ屋さんです。「京うちわ」という伝統工芸を、年配の方がされているのかと思ったら、意外にも、若いアーティストが一人、週末に、うちわ職店を営んでおられます。「蜂屋うちわ職店」の蜂屋さんに、8月20日にオンラインで、静岡のRyutaさんとKyotoの蜂屋さんとMugikoを繋いで、お話を伺いました。京うちわとは何か、どのようにして職人となるのか、今日はうちわトークの基本編です。続きの修行編は、No.547-3をご覧ください。Podcastの文章も、Hachiyaさんに書いていただきました。Mugi

Part2, 「うちわ」とは何か、京うちわの特色

自己紹介

はじめまして。京都にて京うちわという伝統工芸品の職人をしている蜂屋佑季と申します。現在は「蜂屋うちわ職店」という自分の店を構え(京うちわ専門店としては約50年ぶりの新規開業…!)試行錯誤しながらも日々制作に励んでいます。

この度は偶然うちの店を見つけて、さらにうちわを仕立てるお客さんにもなっていただいたMugikoさんとのご縁もありこのようにお話をさせていただきました。

この機会にざっくりではありますが「うちわ」そして「京うちわ」とはなんぞや?というようなことをお伝えできたらと思っています。どうぞよろしくお願いします。Hachiya

そもそも「うちわ」とは何か

収録の際に改めて「うちわとは何ですか?」と聞かれ、普段は考えもしないくらい根本的な質問に正直ちょっと戸惑ってしまった自分がいました。そして、そもそも「うちわ」って何なんだろう…?自分はうちわについて何もわかってなかったんじゃないのか…?などと余計なことを色々考え深みに嵌ってしまいました。

(うちわ職人としてそれってどうなの?とは思いますが…)

そこでふと思い立ち、この仕事を始めてもうすぐ10年になろうとしているここにきて初めて広辞苑で「うちわ」を調べてみました。

うちわ【団扇】

細い竹を骨とし、紙または絹を張って柄をつけた、あおいで風を起こす道具。多くは円形。〈[季]夏〉。「ーであおぐ」

と、このようにありました。参考までに、蜂屋が作っている京うちわver.とするためいくつか補足をしてみると

京うちわ【京-団扇】

細い竹を放射状に並べた両面に和紙や布地を張って丸い面を作り、そこに竹や木からなる持ち手を付けたもの。あおいで風を起こすための道具で、涼を取ったり羽虫などを追い払うために使用する。一部ではあるが、使用はせず飾るためだけの美術・工芸品としての団扇も存在する。by Hachiya

と、このような感じになるでしょうか?ちなみに英語でうちわと扇子を表す単語は”fan”がありますが、英語が母国語の友人に聞いてみたところどうやら扇子のイメージが強いとのこと。なので蜂屋は「うちわ」を他の国の方にも知ってほしいという思いもあり、”fan”は使わず”Uchiwa”で通しています。

京うちわの特色

日本には京都のほか香川・熊本・岐阜・奈良・千葉などいくつかのうちわの産地があり、それぞれの地方によって作り方や用いる材料などが微妙に違っています。その中でも蜂屋が作っている京都の京うちわは、京都以外の産地のうちわと比べると基本的な形とそれに伴う技法がとりわけ大きく違っています。

(そういった意味で京都以外の産地のうちわは、「大まかな形」と「作る技法」だけで見たら親戚のようなものと言えるかもしれません)

違うポイントは主に2つ

①骨(放射状に並べる細い竹)の本数  ②「一体型」か「差し込み型」か

まず①の骨に関してですが、京うちわの骨は1本1本が細く、使われる数が多いのが特徴です。他の産地のうちわ一つの骨が30〜40本ほどなのに対して京うちわの骨は60〜100本ほどとなり、基本的に骨の数が多くなるほどより高価になります。資料として写真が残されている昔の京うちわには骨が120本以上のものも見られます。これは完全に美術・工芸品の扱いとなります。この本数の違いによって得られる繊細さが京うちわの特徴のひとつと言えます。

次に②に関して結論から言うと、京都以外の産地のうちわが「一体型」、京うちわが「差し込み型」となります。これはうちわの面の部分と持ち手部分が一体になっているか、別々に作って最後に差し込んで繋げるかという違いです。差し込み型である京うちわでは面と持ち手の形や素材、または素材の仕上げの選択肢が増えるため、より意匠の凝らした品を作ることができます。

このようにこれらの繊細さや意匠性といった独自の特徴を持つことに踏まえ、日本画をはじめとした他の美術・工芸といったものとの親和性が強い京都という土地柄もあったことで、日用品はもとよりさらにそこから一歩踏み込んで美術・工芸品といった領域にまで届き得たというのが京うちわの特色と言えると思います。HS No.547-3へ続く, Hachiya

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