No.567-2, Feb.4, 2022, PACAー歴史的建造物保存・保全と地域コミュニティの個性with Tom-san

Champaignの古い建造物保全活動とDIYカルチャー with Tom-san

2月のHarukana Showのトークは3回にわたって、PACAの活動を紹介します。第1回は、PACAの歴史的建造物保全活動の概要とTomさんがこの活動で何を大切にしているかについて、第2回は解体される建物から建材などの回収活動とアメリカのDIYカルチャーについて、第3回はTomさん自身の家のリノベーションのお話やPACAの建材リサイクルショップについてです。Tomさんを囲んでの英会話を、Ryutaさんが日本語でもわかりやすく解説しています。

Part1,Tomさんの自己紹介&PACA紹介

Part2,ChampaingでのPreservation活動、1980年代の時代背景

Part3,場所や建物のPersonality, 保全運動のソフトパワー

TomさんのPACA紹介

On today’s show hosts, Komaki Ryuta and Nishikawa Mugiko talk with guest Thomas Garza about his work with the Preservation and Conservation Association (PACA). Tom is the executive director of PACA, which is a non-profit corporation located in Champaign Illinois, USA, that seeks to identify and educate the public about historic places in the area and, whenever possible, preserve them from unnecessary alteration or destruction.

When the loss of one of these places is inevitable, the group also attempts to save whatever pieces of these buildings that it can, which it then sells to the public at its Architectural salvage warehouse.

In this discussion, Tom tells a bit about the history of the organization and the social/political context that gave rise to it and other similar groups around the country. They also discuss the current climate in the local communities and how that affects the group’s work as they enter their 40th year of service to the community.

The use of terms is discussed as well. PACA’s name contains both the words ‘preservation’ and ‘conservation’, and Tom explains a bit about their different meanings as it applies to his organization. ‘Conservation’ is the responsible use of resources, whereas ‘preservation’ is the effort to protect those resources, and this applies to PACA’s work in that the group does not seek to resist all change, only change that is unnecessarily inappropriate. The organization actively promotes responsible alternative uses for buildings that have outlived their original purpose.

日本語解説: PACAとは

今回はTomさんに、PACAの歴史と活動内容を話してもらいました。PACAはPreservation and Conservation Associationの略で、シャンペーン・アーバナ地域で活動している非営利団体 (non-profit organization) です。Tomさんは団体のExecutive Directorを務めています。

PreservationとConservationは、それぞれ「保存」「保全」を意味します。PACAが保存、保全しようと試みているのは、「歴史的建造物」です。歴史的に意義のある建物などが不必要な理由で取り壊されそうになったときに、持ち主や周辺住民に働きかけ、守ることの必要性を知ってもらい、建物を残す活動に取り組みます。また、取り壊しがどうしても避けられなくなった場合は「サルベージ(Salvage)」を行い、再利用可能な建材等を引き取ります。(引き取ったものは、原則、PACAのリサイクルショップで販売します。詳しくは次回以降のトークに出てきます。)

保存、リユースの機運

米国で建造物の保存、保全に取り組む機運、「新しいもの」ではなくリサイクル、リユースなどに目を向ける機運が高まったのは、1960〜70年代ごろからです。第2次世界大戦直後は、都市再開発 (urban renewal) がよいこととされ、都市部では、歴史のある界隈や建物が次々に取り壊されて、新しい開発プロジェクトに置き換えられていきました。このような動向へのカウンターとして生まれてきたのが保存、保全運動です。

PACAはシャンペーン・アーバナ地域でそのような活動を行う団体として1980年代に作られました。(今年、40周年を迎えるとのことなので、1982年設立なのだと思います。) シャンペーン・アーバナには、イリノイ大学周辺のキャンパスタウンで学生向けの新規アパートを建てるために建物の取り壊しが早い周期で行われやすい、など、特有の事情もあるようです。

保存、保全の難しさ

ただ、「歴史的建造物」の保全は一筋縄ではいかない、とTomさんはいいます。PACAの理念としては、1つ1つの建物の「建築史的意義」「歴史的意義」のみを語るのではなく、その建物と地域コミュニティの個性のかかわり合いを守りたいのですが、保全を巡る話し合いになると、1軒の建造物を取り壊すか守るかが争点になってしまいがちだということです。

また、「保存」と「保全」の両方の語が名前に入っていることでも表されているように、PACAは必ずしも、「完全な現状での保存」を目指すわけではありません。使われなくなった学校の建物を他の用途で利用できるように再生し、活用しながら残すようなこともPACAの目標のひとつです。

次回以降、サルベージやDIYなど、先週までの番組でRenさんにうかがった内容(HS No.566)とも関連する話も聞いていきます。- Ryuta

このまちの「らしさ」を時代に合わせてつなぐ

歴史的建造物を残していく場合、建物は残すけれど使い方を状況、時代に合わせて変える(Conservation)例として、UIUCのChampaignのColonel Wolf Schoolの建物は、業者が買取りアパートしての改修中です。

Champaign Pubic Libraryの東側にSolon Houseと呼ばれる住宅は、1860年代に建てられたイタリア風建築です。長く使われず取り壊されるのではないかと懸念されていました。PACAはこの家の歴史的意義をうったえてきました。2005年にはこの建物はPACAに寄贈されました。そこで、また誰かが住むことができるように修理、改修することにしました。(詳しくはPACA Newsletter Vol.38, No.1, Summer2018)

行政からの助成金もえて、地域の人々も多数参加して、何年もかけて少しずつ建物を修築してきました。Mugikoも、何回か作業の手伝いをしました。剥がれ落ちた壁も建材も、人の手によって作られ、使われ、残った形状も、朽ちても美しく、天井の柱はしっかりしていて、この家、生きているなあ、と思いました。現在は新しい持ち主が住宅として使用しています。PACAの活動の大きな目的は、古いものを残す活動をとおして、より多くの人々が、このまち「らしさ」に気づき、場所や建物への愛着をもつことではないかなと思います。Mugi

■Peter Muffy –Strange Kind of Love ■CHAI – N.E.O.

 

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