No.575-2, April 1, 2022, TRPGのゲーム体験と図書館、「出版文化」の保存 with Ryuta

コミュニケーションツールとしてのTRPG

Podcast Part2&3は、先週に引き続き、図書館とTRPGのお話です。配信を聴いてくださったMichiyoさんから「触れたことのないゲームのお話なのに、なんだか楽しい気分になれました。図書館のイメージも拡がって良い時間でした」というメッセージとSakuraの写真を送っていただきました。ありがとうございます。

Ryutaさんのお話は、社会の交流の場としての図書館での模索、「文化資産」としてのアナログゲームの保存など、さまざまな課題が見えてきて、現代のライブリーの可能性を考えるうえでも興味深い内容です。なお、今週の番組のPart1は、No.575-1をご覧ください。-Mugi

Part2, TRPG体験と図書館、蔵書利用の入り口、Ryutaさんに場合は?

Part3, 出版文化としてのアナログゲーム、教育の現場で応用できそう

図書館とTRPG

前回(HS No.574)、イベントや蔵書にアナログゲームを取り入れる図書館が日本でも増えてきている、という話をしました。同様に、テーブルトークRPG (TRPG) にフォーカスした企画を実施する図書館も、徐々にですが出現してきています。これには、以下のようにいくつかの理由があると思います。

TRPGのゲーム体験と図書館

まず、TRPGのゲーム体験は、グループで、協力しながらナラティブ (物語) を作り上げていく、というものなので、図書館をソーシャルな場に、という図書館のミッションと高い親和性があります。また、他のアナログゲームと同様、日常生活とは切り離された安全な空間で新たなことに挑戦できるほか、日常生活よりもはっきりと割り振られた「自分の役割」を意識して果たし、明確な成功体験を得られる、その中で、他のプレイヤー/キャラクターの立場を考え、多様な思考を理解する経験ができる、といったポジティブな側面があると考えられます。(こういう理由から、社会への適合に困難を抱えている青少年に対するセラピーなどでの利用も試みられています。) 

図書館蔵書への入り口としてのTRPG

また、TRPGの世界やシナリオには、さまざまな歴史的、学問知的な要素が組み込まれています。完全なファンタジー世界を舞台にしたゲームでも現実世界の「中世風」を強く意識していることが多いですし、近年のシナリオには伝奇や心理学などの要素を取り込んだものも見られます。図書館には個人では所有していないかもしれない図鑑や便覧なども豊富に揃っているので、そのようなゲームを遊びながら、あるいは遊んだあとに関連する書籍を読む、という意味でも、図書館とTRPGの間には高い親和性があるといえると思います。図書館の側でも、あるTRPGの世界観や人気シナリオを中心にした蔵書展示を行っているところがあるようです。(カタシロ×図書館 ~図書館でのカタシロ展示を振り返る~

「出版文化」としてのアナログゲーム

ボードゲームやカードゲーム、TRPGのシステムやシナリオは、(将棋や囲碁などの伝統ゲームを除けば) デザイナーが考案、制作し、商業製品であればパブリッシャー (アナログゲーム専門会社や書籍の出版社) により、アマチュア作品であれば個人出版や同人作品として出版されて世に出るものです。近年はDTPや印刷技術の向上もあり、毎年、大小さまざまな規模で、かなりの数のアナログゲームが出版されます。

ただし、ボードゲームやカードゲームは原則としては「書籍」として流通するものではなく (例外はありますが、長くなるので省きます)、伝統的には図書館で収集する対象ではありませんでした。TRPGの場合、ルールブックなどには書籍として流通するものも多いので、日本では、少なくとも国立国会図書館に納本されて保存はされます。それでも、個人出版や同人作品として作られるシステム、シナリオなどは、作成した個人が能動的に寄贈する必要があります。そのため、アナログゲームの収集、保存に関しては、どのような機関が取り組むべきものなのかも含め、大きな課題があります。図書館は「出版文化」の保存装置でもあるので、そういった面での親和性も実は高いのではないかと思います。

RyutaのTRPGとの出会い

Ryutaは、中学生のころから同級の友人たちとTRPGをプレイしていました。当時 (1990年代前半) は、今でいうライトノベルを展開している出版社がTRPGも積極的に展開していて、書店で近い棚に置かれていたり、雑誌などで相互に言及されていた印象があります。そのあたりからTRPGという存在を知り、楽しむようになりました。(現在でもKADOKAWAあたりはライトノベルとTRPGの両方を展開していますが、このあたりは買収や吸収合併で巨大化してそうなった感じかも……

ちなみに、今回のようなトークをするほどのゲーム歴があるのに? と思われるかもしれないですが、Ryutaは、いわゆるアナログゲーム専門店の雰囲気がわりと苦手で、書店で流通するTRPGと出会っていなければ、アナログゲームの世界に触れることはなかったと思います。ゲームショップやボードゲームカフェ、TRPGカフェのような場所は都市部にはもちろん存在するのですが、公共図書館や学校図書館でTRPGに出会える意味、というのは、そういうところにもあるかもしれません。-Ryuta

Mugikoの感想

なるほど、図書館だからアクセスしやすい

TRPGは、誰かと物語を一緒につくっていく新鮮な面白さと、運命はいかに展開するかわからないゲーム感覚と、あくまで役を演じているのだという安心感があって、「その世界」にどんどん入っていけそうな気がします。アナログゲームの専門店に出かけるのは敷居が高そうだけど、図書館にあれば気軽に体験できる。Ryutaさんのお話を聞きながら、Mugikoは、参加したことがないTRPGについての想像がどんどん広がっていきました。

現実ともつながりうるゲームの世界観

地方を探検するTRPGがあれば、ゲームを通して自分でも調べ始めてリアルな地域がグッと身近になりそう。大学の国際交流センターで、日本についてもゲームについてもよく知ると自負する留学生たちが集まり日本語でTRPGをしたら、解釈や役割の演じ方が多様で、想定外の事態や生じ多文化発見・交流になりそう。人々が協力して想定外の災害から避難するTRPGがあれば、一人で考えおよばぬ発想や知恵や経験が共有されて、異なる立場にある人々の行動を想像できるようになって、現実の場面にも活かされそう。アバターで参加するVR TRPGがあれば、年齢もジェンダーも社会的な要素も吹っ飛ばして思いっきり役を演じてしまいそう、、、

12年目のHarukana Showの楽しみ

ある種の「文化資産」としてアナログゲームをどのように扱うか、という問題は、ZINE Cultureとも関連する課題ではないかと思います。TRPGが愛好家たちのあいだだけでなく、図書館やどんな場所で、どのように利用されうるのか、さらにお話を聞く機会があればいいなあ。12年目のHSの楽しみが増えました。-Mugi

■宇多田ヒカル「SAKURAドロップス」■池田智子 × Tendre 「水星 × 今夜はブギー・バック nice vocal」(5:01)

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