Grassroots Media Zine創刊号!

Grassroots Media Zine とは

Grassroots Media Zine の創刊号ができました。Harukana Showを始めて2年半、その間、番組スタッフのTateishiさんから、Zine作りについて度々お話を伺いました。また、UC-IMCには、Zine Libraryがあったり、Zine Festが開かれ、さまざまなZineを見る機会もありました。作者のスピリッツや作品の肌触りが、紙や文字やインクやデザインから伝わってくるのが、モノとしてのZineの魅力です。Zineを作りたい、と考えてきました。

ようやく最初の一册、Zineのタイトルは、Grassroots Activities and Mediaを縮めてGrassroots Media としました。ここでのMedia とは、人と人、情報、場所をつなぐコミュニケーションツールという意味です。

GMZ#1cover

GMZ#1cover

創刊号のテーマは、「多文化接触のメディア空間」

A Media Space for Cultural Exchange

Exploring Community Radio in the United States

GMZ#1inside cover

GMZ#1inside cover

著者はMugiko Nishikawa、編者はThomas Garzaです。西川麦子「多文化接触のメディア空間ー米国のコミュニティラジオから」(『世界思想』40号2013年春、特集:認識するということ、世界思想社、pp.18-21)をもとに、英語で内容を大幅に加筆し、写真や図を加えました。Tomさんが最終的な英作文とZineの編集、レイアウトを担当しています。アメリカでレターサイズと呼ばれる紙を二つ折りにした大きさで、本文は18頁です。Champaignの印刷屋さんでコピー、製本しました。

PDF版は下記からダウンロードできます

GMZのPDFは、下記から2種類をダウンロードできます。1つは、見開きレターサイズ、もう1つは、見開きA4サイズです。

Grassrtoos Media Zine #1(Letter Size) Grassroots Media Zine#1(A5size)

GMZ#1contens

GMZ#1contens

全文英語なので、4つ章が扱う話題を簡単に紹介します。また、Tomさんによる各章の音読を添付します。Tomさんは、目が不自由なリスナーのためのラジオ番組で、雑誌記事を読むボランティアを20年続けています。声が柔らかく、英語が苦手な人も、トムさんの読み聞かせを音として楽しんでいただけると思います。

各章の内容と朗読

GMZ#1Chapter1

GMZ#1Chapter1

Chapter1

文化人類学者のMugikoが日本、バングラデシュ、イギリスと場所を移動してどのようなフィールドワークを行い、なぜアメリカ、イリノイ州までやってきたのか。Grassroots Media Zine#1recording:Chapter1

GMZ#1Chapter2

GMZ#1Chapter2

Chapter 2

Urbanaの住まいの近所に、Independent Media Centerの建物がありました。これは何だろう?IMC内にあるコミュニティラジオ局、WRFU-LPとは?「誰でもメディアになれる」というIMCのコンセプトに疑念と好奇心をいだき、「自分の言葉」で話すことができるラジオ番組に心を動かされ、また、ロンドンで出会った人々から刺激が受けて、私は、WRFU-LPの活動に関わることにしました。(Chapter2)。Grassroots Media Zine#1recording:Chapter2

GRM#1Chapter3

GRM#1Chapter3

しかし、U-Cでは新参者の私には、一緒に番組を担当する日本人の知人はいません。そこで、WRFUのスタジオと日本とをインターネットでつないだ生放送のトーク番組をしてみよう、と考えました。WRFUに番組開始の申請をした直後、3.11の大震災がおき、原子力発電所事故など緊急異常事態が続きました。そのような状況のなかで、海外でどのように日本語番組に取り組むべきか、深く悩みました。(Chapter3)。Grassroots Media Zine#1recording:Chapter3

GMZ#1Chapter4

GMZ#1Chapter4

2011年4月1日にHarukana Showは始りました。毎週金曜日夜7時から1時間番組です。その年9月に私が日本に帰国した後も、日米でのスタッフ、協力者をえて番組は続きます。2013年8月には120回をこえ、70名あまりのゲストに迎えました。どんな人々がHarukana Showに集まり、そこでどのようなメディア空間が生み出されているのか(Chapter4)。Grassroots Media Zine#1recording:Chapter4

 

多文化接触のメディア空間

地域を拠点としたグローカルなメディア

多文化接触のメディア空間という発想は、Harukana Showを始める時から抱いていました。アメリカと日本とをつないで、いろいろな場所から参加できるコミュニティラジオ番組ができたら、地域限定ではなく、地域から発信しするメディアになるのではないか。

その地域のなかでは小さな一人であっても、場所をこえて他の地域の小さな一人とつながることができたら、いろいろな立場の人が声をだしやすくなるのではないか。それぞれの事情によって外へ出ることが困難な状況にある人でも、自分の家から参加できるラジオ番組だったら、社会とつながるひとつのきっかけになるのではないか。自分がかかわっているコミュニティや地域について、遠くの場所や異国に暮らすリスナーに向かって話してみたら、自分がいる場所を見つめ直し、自身自身を違う角度から発見できるのではないか。そんな妄想をあれこれといだきながら、Harukana Showを始めました。

メディアをとおして想像された空間の生の声

実際に番組を続けてきて感じるのは、メディアが生み出す空間は、輪郭がよくわからず、参加者、リスナーしだいで随時に内容もかたちもかわり、拡散し、容易に消えてゆく、ということです。ラジオ番組は、ある意味では、関わる人によって想像された場所ともいえます。ラジオのリスナーやサイトのビジターを含め、番組に関わる人たちが、どのような関心をもち、どの言語を母語、あるいは生活で使う言語とし、どこで育ち、どのように生きてきたか、その歳月や、ラジオやインターネットとの付き合い方、それぞれが居る場所やメデイアや情報をめぐる環境、日本やアメリカにたいしていだく各人のイメージや実体験、日々の暮らしや季節、社会的、文化的状況などによって、番組からこぼれる音や言葉や文字の受け取り方は異なります。

メディアをとおして生み出され想像されたスペースではありますが、そこから流れる一人一人の声は、その人の心身から発せられたものです。音声がデジタルな記号に置き換えられるとしても、出演者の、その人でしかない声、抑揚、間、話し方が届けられ、番組のなかでおしゃべりが揺れ動きます。それは、インターネットのなかの文字とはまた違います。さまざまな生の声とその掛け合い、息づかいの面白さがあります。「私、こんなこと話してるわ、意外や」などと、話し手自身が心のなかで驚き楽しみながら会話がすすんでいったりします。想像の場所に往き交うのは、Urbana-Champaignや、アメリカの他の地や日本の異なる場所からあつまる他者の生の声です。

物理的な場所とそこに集う人たちの営み

そして、Harukana Showが存在するのは、アメリカのイリノイ州のUrbanaという小さな街に、UC-IMCの大きな建物があり、そこに手作りの小さなラジオ局がある、からです。2005年の開局から7年のあいだに地域から寄付を集め、2012年には念願の100フィートの高さのタワーをたてることができました。半径10キロメートルほどの範囲まで低出力のラジオ電波が届くようになり、聴取可能地域は広がりました。しかし、スタジオは、歳月をたつほどに老朽化してゆきます。天井の一部ははがれコードがたれさがり、機材は頻繁に故障し、マイクを支えるスタンドのねじがゆるみ適当なマイクを固定できません。

公共放送を行ううえで万全の環境ではありませんが、それでも、スタジオという物理的空間が地域の人々の身近な場所にあり、そこに毎週、集うボランティアのスタッフがいて各番組は作られます。インターネット環境がよくなり、機材が発達し、瞬時に情報が世界をかけめぐることが可能だとしても、それを使い、動かしているのは、人であり、その人たちの時間と労力と気持ちです。

グローバリゼーションがますます進む時代にハイパーローカルなメディアがもつ可能性や難しさについては、これからも、ゆっくり考えてゆきたいと思います。

GMZ#1の内容は、日本語でもいくつかの論文やコラムに書き記しています。ご関心のある方は、下記のPDFをダウンロードしてお読みください。

西川麦子「コミュニティラジオをグローカルに開く」甲南大學紀要文学編No.162, 2012

西川麦子「運動としてのコミュニティメディア」甲南大學紀要文学編No.163, 2013

西川麦子「多文化接触のメディア空間」『世界思想』40号, 2013

GMZ#1やレポート、Harukana Showについてご意見、ご感想をいただければうれしいです。下記のコメント機能をご利用ください。スタッフに直接届きます。

なお、GMZ#1の冊子版をお求めの方は、お名前、ご連絡先を次のメールアドレスにお知らせください。haruwa@me.com

GMZ#1inside of back cover

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