Blog: ロンドンからZine レポート(3) ROUGH TRADE & Fanzine, ”Vague”, Sept.17, 2015

Notting HillのROUGH TRADE—レコードショップが気になる

2015年9月のロンドンからのZine レポート(1)(2)に続いて、第3回です。London College of Communicationを訪問した翌日9月17日、Notting Hillへ行きました。インタビュー取材の約束まで1時間ほどあったので、周囲を歩いていると、このお店の前を通りがかりました。知る人ぞ知る(実は私はよく知らなかった)、かの有名なレコードショップ「ROUGH TRADE」です。

ROUGH TRADE RECORDS@Talbot Road, London, Sept.17, 2015

ROUGH TRADE RECORDS@Talbot Road, London, Sept.17, 2015

レポート(2)述べたLCCのZine Collectionの担当者Leilaさんが、かつてのインデペンデント・ブックショップやレコードショップが、Zine をめぐる交流の場にもなっていたと話していました。Harukana Showでも、今年3月の番組のなかでTomさんが、アメリカのUrbana-Champaignでも「60年代、レコードショップはユースカルチャーの拠点」だったと言っていました(Podcast No.209 「レコードショップにZineがあった頃」)。そんなことを思い出しながら、「おぉ、レコード屋さんがある」とお店の前で足をとめました。

レコードショップに『CARNIVAL』

まずは、ショーウィンドウに置かれた1冊の本が目にとまりました。’CARNIVAL: A Photographic and Testimonial History of the Notting Hill Carnival’(Ishmahil Blagrove Jr.ed., RICENPEAS,  2014、関連記事)。Grassroots Media Zine(GMZ)#3で掲載する予定のJohn “Hoppy” Hopkins(1937-2015)への最後のインタビューのなかで、彼が、「『CARNIVAL』をぜひ、見るといいよ、大きな写真集だけど、Notting Hillに行けば手に入る」と話してくれました。ちょうど1年前の2014年9月のことです。その本が、Notting Hillのレコードショップの店頭にあるのを見て、うれしく、そして今年1月に亡くなったHoppyを思い寂しくなりました。

『CARNIVAL』@ROUGH TRADE, Sept.17, 2015

『CARNIVAL』@ROUGH TRADE, Sept.17, 2015

『CARNIVAL』のPREFACEの扉のページにHoppyの言葉が記されています。

“I think a lot of people feel strongly about the carnival and would like to have a piece of it. if you turn that around and see how memory works, people look back in time and say, ‘I was part of it, and I organised it and it’s mine.’ It’s not necessarily true but that’s just how memory works. People want to say that they were in there and creating it. John “Hoppy” Hopkins, Founder of the London Free School

ROUGH TRADEには、レコードやCDや、たくさんの手書きのポップや、ポスターなどが隙間なく置かれ貼られています。70年代から今日までのオルタナティブなカルチャーを凝縮したような空気に圧倒され、店内を一周しただけでいったん外に出ました。それからふと、Notting Hillのコミュニティ活動についての調査のなかで、「ROUGH TRADE」という名前を聞いたことを思い出しました。そのときは、Tradeと名がつくそのお店は何屋さんなんだろう、とぼんやり思ったまま確認せずにいました(情けない)。

かのレコードショップにGMZを渡す@ROUGH TRADE, Sept.17, 2015

レコードショップにもGMZ#1&2を渡す@ROUGH TRADE, Sept.17, 2015

Zineなる縁に励まされ

ロンドンでせっかくROUGH TRADEにまで来たのだから、関係者に少し話を聞いてみたい。そう思い直しお店に戻り、思いきってスタッフに話しかけました。「ROUGHT TRADEは、最初のお店は、どこにありましたか」。若いスタッフにかわって対応してくれたのはNigelさんです。私は、1960年代のNotting Hillのさまざまな活動に関心があると述べ、Grassroots Media Zine#2をNigelさんにお渡ししました。それがNotting Hillに関連する内容であることは、表紙のTrellic Towerの写真を見れば、(少なくともこの地域に関わる人であれば)容易に想像できます。

次のGMZは、故Hoppyの特集であり、いくつか教えてほしいことがあるとお願いしました。Nigelさんは、忙しく他のスタッフやお客さんとやりとりしながら、私の突然の問いにも丁寧に応えてくれました。そして、私がこれから訪ねることになっているTom VagueさんとNigelさんは、40年来の知り合いであり、どちらもFanzineを作っていた、という話までしてくれました。(Vagueさんの話しでは、Nigelさんは、かつて、Animals & Menのメンバーでした。)

ここでもZineなる縁に励まされ、最後にNigelさんに言ってみました。「次のGMZが出来たら送ります。もし、よかったら、このお店に置いてください。」

ROUGH TRADE, Sept.17, 2015

ROUGH TRADE, Sept.17, 2015

Tom VagueさんとZine談話 

このあと、Vagueさん(ペンネームであり、彼が1970年代末から発行してきたFanzine/雑誌のタイトル)のオフィスを訪ねました。取材内容は、彼が関わってきたローカルな歴史、文化を綴る活動(たとえば「Colville Community Forum」)についてなどです。Vagueさんとは2008年に初めてお会いしてから、幾度かの取材、メールのやりとりをしてきました。しかし、Fanzineの制作者として、Vagueさんからお話を伺ったことはありませんでした。今回は、依頼したインタビューの話題とは別に、Fanzineについても尋ねてみました。

Vagueさんが70年代終わりから80年代にかけてパンクのFanzineを作ってきました(Post Pank Fanzineシリーズ)。現在も、別のかたちで、Vague media project(Notting Hillの地域史、Underground/Pop Cultureに関する資料収集、小冊子発行)は続けています。また、最近はFanzineについてのトークを依頼されることがあり、あるイベントで、フロアーからこんな質問を受けたそうです。

「Facebookなどのソーシャルメディアについてどう思いますか。」

Vagueさんは、積極的にSNSを活用してきたわけでありませんが、この問いにたいして、「20世紀に私たちがFanzineを作り始めたときも、ゼロックスの機械を使い写真を貼ってコピーしてゆくことは、新しいことでした。その時々に可能な方法やメディアを利用してゆく営み自体は、ソーシャルメディアもFanzineも同じだと思います」と応えました。その質問者は、「私は、Fanzineはもっとラディカルなコミュニケーションのメディアであって、Facebookは、self-indulgent(勝手気ままな、自堕落な)な気がします」と述べられたそうです。

Zineもまた、Personal Obsessionじゃないかな

そのエピソードとともに、Vagueさんが私に述べた言葉が印象的でした。「でも、Fanzineもまた、personal obsessionsにすぎないんじゃないかな 。」

Tom Vague@Notting Hill, London, Sept.17, 2015

Tom Vague@Notting Hill, London, Sept.17, 2015

自分のこだわりをとおして社会/他者と対話する

Vagueさんがいう「パーソナル・オブセッション」を日本語にどう訳してよいのか。Zine Culutreについて考えるうえでは、この表現が意味することは、脅迫観念から、妄想、執着、こだわり、愛着、マイブーム、など幅がありそうな気がします。しかし、Fanzineにしても他のさまざまな内容、形式のZinesにしても、自分の閉じた世界のなかでの表現ではなく、Zine作りという行為、表現、物は、なんらかのかたちで社会とつながろうとする、対話への試みなのではないかな、と私は思います。そのことを、アート系本屋「bookartbookshop」を訪問してさらに感じました。続きは、ロンドンからのZineレポート(4)最終回へ(近日、掲載予定)。

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