2017年「星空と路」上映室へ,つながりの続きにあるもの, Feb.25-26, 2017

遠くからみて想うもの

2月25日と26日、せんだいメディアテーク(smt)へ「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(わすれン!)主催の「星空と路」上映室を観てきました。smt訪問は3回めです。「わすれン!」は、私にとっては、Harukana Showを始めた頃には、遠くからみて想うもの、でした。

せんだいメディアテーク, Feb.25, 2017

アメリカから「わすれン!」に衝撃−2011

2011年5月に「わすれン!」が開設されてすぐに、日本在住のTsujinoさんが、アメリカに滞在していた私に、こんな活動が始まったとメールで知らせてくれました。東日本大震災後まもなく、甚大な被害と事態の今後の状況も分からないなかで、その今の映像記録を、アーカイブしサイトに公開していく動きに驚きました。

コミュニティメディアの時空間を開く

同じ年の4月に、イリノイ州Urbana市にあるコミュニティラジオ局WRFUから、Harukana Showを始めたばかりでした。インターネットでの通話サービスを利用して日米をつないだトークを地域のラジオから生放送し、毎回の記録(編集音声と文章と写真)を番組サイトにアーカイブして公開し、小さなメディアの時空間を広げてみようという試みでした。

いろいろな可能性を示唆してくれる存在

東日本大震災が発生して間もないときに、アメリカの小さなラジオ局から日本語番組を始めるかどうか、「そんな場合じゃない」と悩み、こんな時だからこそ、小さなメディアの可能性を考えてみたいと思いました。異国の地で暗中模索するなかで、阪神淡路大震災直後から活動を始めて展開した多文化・多言語放送局FMわぃわぃと東日本大震災後に開設された「わすれン!」は、いろいろな可能性を示唆してくれる存在でした。

鷲田清一のラジカルラジオより(撮影岩川洋成June14,2013@Kyoto)

思いがけない出会い、Kiyokazuさんとトーク―2013

2年後の2013年、思いがけないことに、smtの館長の鷲田清一さんにHarukana Showに出演していただくことになりました(経緯はHS Podcastへ: No.115, June7, 2013, せんだいメディアテークって?「人がアクティブになれる場所」)。アメリカからはRyutaさんとTomさんが深夜にWRFUのスタジオに来て、日本からのKiyokazuさんとMugiko(写真)のトークを受け、Harukana Show深夜スペシャル(0:30am-1:35am)を放送しました。Kiyokazuさんからは、若い頃、長髪でバンドをしていた思い出や「嗄れ声」のアーティストが好きなこと、そしてsmtや「わすれン!」についてなど、たくさんのお話を伺いました。(No.116, June14, 2013「ラジカルラジオ」とのコラボ!、No.117, June21, 2013「壁がない」〜市民が主体の記録、表現装置 )

Tateishiさん、Tsuinoさん、Shimizu-さん@smt屋上、June28, 2014

いつか、smtとコラボしたい!と仙台へ―2014

翌年、HSメンバーのTsujinoさんとTateishiさんとMugikoの3人で仙台へsmt見学ツアーへゆきました。smatの清水さんが、展示場からsmtの屋上まで案内してくださり、感動して足が震えました。(No.171, July4, 2014, Harukanao Show トーク@せんだいメディアテーク with Tateishi, Tsujino & Mugiko、Mugi-chan Blog:震災と、記録と言葉と場所について考える旅、July12, 2014)

アーカイブの「利活用」とは?―2015

2015年、smtから「わすれン!」の活動報告冊子をいただきました(pdfは、websiteに公開されています)。報告書は4ブロックに分けられ、その最後の「アーカイブ活動における資料化や利活用の試み」について、私はとくに興味をもちました。ここでの「利活用」ってどんなことをさすのだろう?

報告書には、「上映会とDVD」、「対話の場」、「データから道具へ」、「うつらないこと」、「はじまりのごはん」、「民話にみる浜の文化」、「記録と想起の場づくり」、「震災を学ぶ」、「ウェブサイト」といったテーマが扱われていました。

考えるテーブル「シネマてつがくカフェ」会場@smt7Fスタジオa, Feb.28, 2016

「星空と路」上映室の「場」にふれる―2016

そこで、2016年には、「星空と路」上映室に行ってみることにしました。震災をめぐるさまざまな映像や記録を2日にわけて上映するイベントです。この年は、上映会にあわせて、『波のした、土のうえ』(制作:小森はるか+瀬尾夏美、2014年)についての「シネマてつがくカフェ」が行われました。参加者たちのあいで対話が生まれていく様子に刺激を受けました。(blog:「星空と路」上映室と「シネマてつがくカフェ」で考えたことー記憶を記録に閉じ込めず対話を開く Feb.27-28, 2016)

「星空と路」上映室でのトークイベント―2017

2017 年の「星空と路」上映室は、震災に関するたくさんの映像を上映するだけでなく、制作関係者が登壇するトークがありました。2月25日には、『5年後の飯舘村調査』上映後に林剛平さん(歓藍社)と鈴尾啓太さん(映像編集者)、2月26日には、『石と人』上映後に、佐藤徳政さん(FIVED)と瀬尾夏美さん(画家・作家)、『この町から問いかけて』+『3.11オモイデツアー(荒浜編)』+『HOPE FOR project 2015』上映後に佐竹真紀子さん(アーティスト、FB)、佐藤正実さん(3.11オモイデアーカイブ)、高山智行さん(HOPE FOR Project)。

「星空と路」上映室プログラム from パンフレット, Feb.25&26, 2017

「つながりの続き」にある上映会

上映作品によって、観る人や上映室の雰囲気が異なります。自分が関わった場所や活動や、知り合いが映っているなどの理由があって、その映像を観るために来る人も多いのかもしれません。smtを介したさまざまな活動と記録のつながりの続きに、「星空と路」上映室という場があるという印象を受けました。

私のように、震災の経験や地域についての情報を共有していないと、みおわったあとに取り残された感じがする場合もあります。上映される映像の多くは、商業作品のようなストーリーや作品としてのThe End(終わり感)がなく、その続きを観ている人が考えないといけない。地元の人々は、その続きの風景を心のなかで観ているのだと思います。終わりのない続きの今を共有し、これからをより多くの人に開きながら考えていく歩き方が「わすれン!」の活動なのかなと思います。

「星空と路」上映室トーク from パンフレット, Feb.25&26, 2017

登壇者の「途中」の想い

上映後の関係者によるトークは、私にとっては、映像が物語る背景や続きの現実が垣間見える貴重な時間でした。登壇者にとって、映像はそれぞれが直面する状況の「途中」を伝えるひとつの方法なのかと思います。形にしなければ消えてしまう時間や、見えないものを言葉にして共有する「営み」や、地域内でのさまざまな葛藤を抱えながらも、異なる活動がつながり地域内外の人々を巻き込み展開する可能性についての語りに、ひきこまれました。司会の北野央さん(smt)のことばからも、smtのスタッフの方々が、さまざまな市民と協働して多様な活動をサポートしてつなげてきた光景が見えるような気がしました。

「てつがくカフェ」のルール, Mugiメモ帳と「てつがくカフェの黒板」@考えるテーブル, smt, Feb.25, 2017

「てつがくカフェ」の参加ルール

今回の「てつがくカフェ」のテーマは、「相馬クロニカル」の作品から「想像力」を問い直す(ラジオ)。最初に参加方法を分かりやすく説明されるので、初めての人でも安心して話しができます。①手をあげて発言する。②自分のことばで話す。③聴くことを大事にする。④参加者へのリスペクト。参加者のあいだのダイアローグをそだてるためのこの4つのルールは、いろいろな場面で応用できそうです。しかし、2時間半という長いけれど限定された時間のなかで、対話を生み出してまとめてゆくファシリテーターと黒板の記録者のワザがすごいなあと今回も感心しました。

ホテルから仙台の風景を見ながらHarukana Show, Feb.25, 2017

smtにわざわざ行ってみたいと思うワケ

私が、わざわざsmtまで行ってみたいと思うのは、smtが地域の人々と協働してさまざまな企画、活動を支援するなかで、スタッフ一人一人が、クリエイターとしてその活動をデザインしたり他者につなぐ媒体となって、その活動を外へも開こうとするエネルギーをもっているからだろうと思います。その運動体に触れてみたい。というとアートのパワースポットのようですが、ひとつひとつの企画を実現するまでには、おそらく、たくさんの話し合いやぶつかり合いがあって、フィジカルに忙しく大変そうだけど、やっている人も面白いと思える力から、いろいろな発想をもらえる気がします。Mugi

仙台で見つけた招き黒猫と招き(?)福助@Kyoto, March3, 2017

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