CU Immigration Forum:草の根の意味, April 10, 2017

Harukana Showの先輩たち

2011年からWRFUで日本語番組を始めたときには、このコミュニティラジオ局には、英語だけでなくスペイン語の番組や、移民関連の番組がありました。「日本語番組を始めてみたら?」「自分の番組を見学に来ていいよ」「番組を手伝うよ」と私に声をかけてくれたのが、こうした番組を担当していたRicadoさんとTomさんでした。彼らが担当する番組を見学して、私は、ラジオ番組の作り方のこつを学びました。

Champaign Urbana Immigration Forum:移民フォーラム

RicardoさんもTomさんも、自身が移民一世、二世であり、Champaign Urbanaに住む移民の子供たちの教育支援などの活動をしてきました。そのなかで、地域のさまざまな団体や個人と情報を交換したいと考え、Champaign County内の移民問題に関わる団体や個人に声をかけChampaign Urbana Immigration Forum(「移民フォーラム」)という連絡協議会を立ち上げました。2009年12月から毎月第2火曜日に公開集会を開き、地域内外、全国の活動との連携をすすめてきました。現在はTomさんが代表を、Ricardoさんがメディア担当をつとめて、イリノイ大学キャンパスにあるYMCAに拠点をおいています(詳細はこちら)。

CU Immigration Forumのブース@Quad Day, Illinois Uni. August 23, 2015

フォーラムという形態と多様なメディア利用

Tomさん、Ricardoさんをとおして私は、移民フォーラムの活動を知り、さまざまな個人や組織が関わり合う「フォーラム」という形態やそこでのメディアの使い方に興味をもつようになりました。移民問題に関心をもつ人々をつなぎ、地域の人々と問題を共有し、さまざまな当事者に必要な情報を届けることは、容易ではありません。移民フォーラムは、集会やワークショップなどを重ね、ホームページFacebook、WRFUのラジオ番組(CU Immigration)、Urbana Public TVのケーブル放送番組(CU Immigration Forum TV)など、インターネットや地域メディアを利用し、さまざまなかたちで情報を提供し、また、地方の新聞、テレビ局からの取材にも応えてきました。

Ricardo(右) & Tom(左)@Urbana Town Hall, August 2013

協議からアクションへ

移民フォーラムは、私にとっては、そこからChampaing Urbanaやアメリカ社会の動きを垣間みる定点観測の場所となっていきました。

2012年にオバマ前大統領がDACA(Deferred Action For Childhood Arrival)を発表し、その申請受付を開始すると、移民フォーラムは、地域の学校関係者、弁護士、研究者、学生、地域住民のボランティなどと広く連携し、DACAに関するワークショップをコミュニティセンターや住民の集会場、図書館などで開催し、申請希望者の相談を受け、煩雑な書類作成や手続きを支援してきました。また、移民法改正案(Comprehensive Immigration Reform)が議会に提案されると、これについて何度も集会を開いて、地域の人々にも問いかけ、イリノイ州内の団体、活動と積極的に連携してきました。(西川2014:120-124)

“We will stand by you”、移民に寄り添う立場

トランプが次期大統領に選出された2016年11月の月末には、移民フォーラムは、“How To Be A Supporter For The Immigration Community”という集会を、Champaign Public Libraryで開催しました。会場に入りきれない人々が集まりました(FB写真)。選挙後の大きな衝撃と動揺が広がるなかで、集会を開き多くの人を集め、移民に寄り添う立場を表明する移民フォーラムの機動力に感心するとともに、こうした集まりに地域の公立共図書館が場所を貸すことに驚きました。(“Group’s post-election letter to immigrants/ ‘We will stand by you”News-Gazette, 11/29/2016)

Urbana市のSanctuary City 宣言

2016年12月19日にUrbana市が、Sanctuary City宣言を決議したときにも、移民フォーラムの関係者たちも市議会に駆けつけ、個々人がPublic Commentを述べていました(HS Podcast No.315)。この時は、私はイリノイに到着した直後で、市議会の決議の様子を見ることができました。Illinois Public Mediaが、Urbana市における聖域都市採択の意義についてレポートしています(What It Means To Be A Sanctuary City In Urbana, February21, 2017、あるデータ[Rob Paral]によると、Champaign County[人口20万人あまり]には、推定1万1000人が不法に滞在していると述べています。)

CU Immigration Forum Tshirt

移民フォーラムへの注目

2017 年には、移民フォーラムは、毎月第2火曜日に定例の集会だけでなく、第1火曜日の運営委員会を除く、他の火曜日に公開の集会を開いています。トランプ政権下で、移民問題にたいする(それだけでありませんが)人々の危機感が強くなるにつれて、移民フォーラムの動きが注目され、集会に以前より多くの人が集まり寄付が届けらるようになりました。

人と情報のネットワーク作り

2017年3月に渡米した際には、毎週の移民フォ―ラムの集まりや番組を見学にゆきました。3月14日(火)の定例集会にはキャンパス内の YMCAでは大きなテーブルを囲み25名ほどが集まりました。参加者は、自分たちの団体や個人の紹介をしながら、今後計画される移民関連のイベントの方向性についてそれぞれの意見を、次々と述べていました。そこに居る人たちは、立場も職業も専門も関わっている団体も多様で、互いをよく知っているわけではなさそうです。毎回の集会では、参加者が名前とメールアドレスを残していきます。それは移民フォーラムの活動を伝えたり、関連団体が何かを行うときにの連絡先にもなります。こうした集会は、そこで何かを決めるというよりは、まとまらない声を互いに聴き、人と情報のネットワーク作ってゆくことが、目的なのだと思います。

University YMCA@Champaign, March24, 2017

対抗キャンペーンの難しさ

しかし、実際にイベントを実施するには、そのための企画を具体的に考えていく必要があります。3月17日(金)は、移民フォーラムの運営委員が、UrbanaのダウタウンにあるUCIMCに集まりました。WRFUのラジオ局は、UCIMCの建物のなかにあるので、私は、金曜日の6時からHarukana Showが始まるまで、運営委員会の議論を聞いていました。移民フォーラムがこれから開催するイベントのコンセプトについて話し合われ、“Immigrants Make America Great!”というテーマを掲げてはどうかという意見が出されていました。私はこのフレーズを聞いたときに、それがトランプが言う“Make America Great Again!”をもじった、現政権への異議申し立てをこめた表現だとしても、言葉が一人歩きして、国家主義の文脈にのみこまれていきそうで不安をおぼえました。

CU Immigration Forum運営委員会@UCIMC, March17, 2017

現場の不安と焦り

3月21日(火)、イリノイ大学は春休みで、キャンパスは人気が少なく、ひっそりしていました。この日の移民フォーラムは、大学構内にあるChanning Murray Foundationで開かれました。この日の出席者は少なく、地域の学校の先生や教会関係者など6名ほど集まりました。教会や生徒の家族などをとおして、不法滞在者を含む住民と直接に関わっている人たちが、直面している問題や不安を率直に語り合っていました。集会に大勢の人たちがいるときには、現場で起きている個々の出来事についてはなかなか口に出すことができません。たとえば、シカゴへ至急に手続きへゆかなければならないがその旅費も交通手段もない人々への車の手配といった具体的な問題、またそうした支援をしようにも、警戒されて対象者との連絡がなかなかとれない苛立や、移民を含む社会の問題が「移民の問題」ととらえられ、移民という存在が社会から孤立していくような不安感などです。

人として生きていくこと

不法移民というカテゴリーのなかには、移住先で子供が生まれ家族で長年、その地域に暮らしてきた人もいれば、仕事を求めてこの街に最近来た人もいます。そうした個別の事情とは別に、交通違反や軽犯罪によってリストアップされ人々が、それぞれの事情とは別に、ある日の朝早く、突然にICE(Immigration and Customs Enforces:移民税関捜査局)が自宅に来て、子供たちの前から親を連行し、出身国へ強制退去させられる、ということも起こりえます。( Several detained in immigration raids in Champaign, The News Gazette, April5, 2017) 検挙が行政命令にもとづき合法的な行為であったとしても、その場所で長年生きて来た人の日常と関係が突然に奪われることを、残された人々を含めた人権の問題として考えていくと、とても複雑です。しかも、政府の方針は、政権によっても理不尽に変わります。

大きな政治をにらみながらも、移民フォーラムの活動の原点は、この場所で人として生きていくときに誰にとっても大切なことは何だろう、という問いかけが根っこにあると思います。

CU Immigration Forum, ラジオ生放送&UPTV収録中@WRFU Studio, March13, 2017,(ex.CU Immigration Forum TV Episode#107, #108)

コミュニティラジオ/テレビ番組の足跡

イリノイ滞在中は、WRFUのImmigration Forum/Urbana Public TVのCU Immigration ForumTVの放送と収録も見学します。Harukana Showの制作もそうですが、番組として放送するのは、番組制作のプロセスの一部であり全てではありません。Immigration Forumの場合は、ラジオやケーブルテレビをとおして人や情報を紹介するだけでなく、番組制作という営みをとおして、人をつないでいます。

番組の出演者は、移民フォーラムの関係者や、集会に来てくれた人や、そこから紹介してもらった人たちなど、さまざまです。集会では一瞬の出会いかもしれませんが、番組のなかで1時間話すと、その人となり活動についてより深く、広く知ることができます。しかし、放送という特殊な状況のなかで話せることは限られています。番組が終わってからむしろ、本音の対話が始まることもあります。

WRFU, Immigration Forum生放送中@Urbana, WRFUL, March27, 2017

出会いの軌跡

たとえば、その人がどうして、その活動を始めたのか。自分はアメリカ国籍をもつが、親は不法に住んでおり、いつ何が起きるか不安を抱えている、あるいは、自分は誰なのかわからない、安心して存在できる場所がない、そんな想いを抱いて生きてきて、自分の問題として移民に関わる活動に携わりながらも、自分の存在を問うような内面的な気持ちを身近な人に伝えることも難しく、それが活動をすすめるうえでの壁となっている。そんな話を、番組のあとで参加者どうして語り合って、「そうやね、なんか前向きになれたわ、ありがとう!」と言ってスタジオを後にする人もいます。それは番組には残されない、出会いの軌跡です。

移民フォーラムは、関わる人によって、何を問題にするのか、どのように取り組むのか、一人一人考え方は違います。大きな政治へ対抗する運動をめざす人も、現場の問題について少しでも手伝いたい、という考える人もいます。しかし、移民の問題に関わる人たちに共通しているのは、何かについてのその人自身が当事者であるという感覚があると思います。そのなかで私は、日本から来たビジターとしてそこいることを異質だと感じます。せめて、何を見て、感じているのかを、言葉にして伝えていこうと思います。Mugi

移民フォーラムの看板@Illinois University, August 20, 2015

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