No. 797, July 3, 2026, AI時代のGISと教育 with Wataru, GISシリーズ No. 14-1

ホリデーの週末、HSは7分遅れの始まり

あっという間に7月に入りました。日本は次々とやってくる台風の影響などで各地で被害が出てきます。Champaignは蒸し暑い日々が続いています。HSの放送・配信日の7月3日は、アメリカの独立記念日の前日のホリデー、その影響ではないと思いますが、今週のHSはなぜか7分遅れで始まり、ご心配をおかけしました。番組が少し短くなり、最後の曲をかけることができませんでしたが、収録トークはほぼお届けできました。Podcastでもう一度、ゆっくりお楽しみください。

Part1ではサッカーのW杯について、Part2&3では、久しぶりにWataruさんの出演です。テーマは「AI時代のGISと教育、研究」についてです。

Part1, “Men’s World Cup”、Japanチームは決勝1回戦で惜敗

今週、RyutaさんとMugikoの番組収録は、日本時間で7月1日午後2時頃です。その前日には、W杯で日本チームは1−2ブラジルチームに惜敗しました。Ryutaさんは、日本時間の深夜2時からテレビの生中継で試合を観戦したそうです。たいへんお疲れさまでした。アメリカはその後、ボスニア・ヘルツェゴビナとの試合に2−0勝ち、2回戦はベルギーと対戦します(現地時間7月6日17:00)。

「男子」サッカーW杯、「女子」サッカーW杯

Tateishiさんから、先週のHSでお伝えしたUIUCの”Men’s World Cup Viewing Schedule“をみて、こんなメッセージが届きました。

開催国ゆえにか、イリノイ大学内で試合が観られるのはいいなぁと思いました。あと、ちゃんと「Men’s World Cup」と書いてあるのがさすがアメリカだと思います。アメリカは国内サッカーリーグだと、女子サッカーのほうもすごく人気がありますので。そういえば来年は女子サッカーのW杯の時期だそうです。開催国はブラジルとのことです。-Tateishi

確かに、日本でサッカーW杯に「男子」をつけて報じられることはなさそう。来年の女子サッカーW杯ではどのように報道されるのかな。

第14回GISシリーズ前半 with Wataru-san

収録はESTの2026年6月28日(日)9pm、日本時間の29日(月)10amより2時間、楽しくおしゃべりしました。WataruさんはMarylandから、RyutaさんはOsaka、MugikoはKyotoから参加しました。今週と来週に分けてトークをお届けします。Wataruさんにまとめの文章も書いていただきました。

Part2, ソールズベリー大学に就職して2年、AI時代に教育について考える

前回の出演(HS No.755,  No. 756-2) から10カ月ぶりですね。今もメリーランド州ソールズベリー大学で、教員としてGeographic Information Science (地理情報科学:以下GIS) の教育・研究に従事しています。現職での2年目を終えて今は夏休み。一息入れているところです。

AI時代の教育法

この1年での大きな変化として、ChatGPTほか生成AIの急速な発展により、知識を伝達するのみの授業には価値がなくなりつつあります。AIの方が講師よりも説明が上手だったりしますからね(笑)。また期末レポートといった成果課題まで、生成AIが代替し容易に形骸化してしまう始末。知識へのアクセスや生成の在り方が大きく変化しつつある今、大学は学生にどんな教育を提供すべきなのか、より真剣に考えるときが来ています。

アクティブラーニングを充実

我がソールズベリー大学、地理・地球科学科でも、教員間で対応策の話し合いをしているところです。現時点で言えることは、私の授業では体験学習、アクティブラーニングをより一層充実させようとしています。測量やフィールドワーク、クラスメイトとのディスカッションは、AIでは代替できないですからね。学習プロセスに価値を置く授業設計に力を注いでいるところです。AI時代に求められる教員像はますます、知識を植え付ける監督者ではなく、学生の経験を価値ある深い学びへといざなう支援者・勉強仲間であるべきなのだろうと考えています。-Wataru

体験学習の例:二通りの3Dモデル(ベクター型・ラスター型)による山岳の地図表現の理解

Part3, 研究への影響、GeoAIの開発、批判的解釈、協働・対話の重要性

研究への影響、GeoAI

AIの波は教育のみならず、GISの研究にも影響を及ぼしています。空間パターンの検出、予測、および意思決定の支援を行うために、地理空間データに対して人工知能(特に機械学習や強化学習)技術・手法を適用する研究のことをGeoAI(ジオエーアイ)と呼び、最近注目を集めています。例えば、衛星画像や航空写真から建物ほか特定の要素のみを自動で抜き取り空間データや地図を作るといったことがGeoAIに含まれており、作業の効率化に著しい貢献をしています。

Autonomous GeoAI(自律型地理空間人工知能)の開発

また、それをさらに発展させた、人間の介入なしにAIが自ら空間情報を収集・分析・意思決定するシステム、Autonomous GeoAI(自律型地理空間人工知能)の開発も始まっています。専門知識・スキルがなくとも空間分析の知見を得られる可能性が広がる一方で、分析プロセスが不透明になりかねず、説明責任やガバナンスの欠如、空間的不平等の悪化など、たくさんの懸念や課題が指摘されています。

批判的解釈、問いを立て、仲間と協働・対話するプロセス

AIがどんなに賢くなろうとも、人間がそれを批判的に解釈する能力は不可欠で、研究者に限らず誰しもが、問いを立てたり、判断したり、仲間と協働・対話したりする努力を日々重ねた上に、真のAI活用はあるとつくづく感じます。-Wataru

体験学習の例:リモートセンシングに関連した内容のプラネタリウム上映-Wataru

地図を使って表現する「アート」

今回のトークの最初にWataruさんが、地図の面白いところは「科学でもあるけれどそれ以上にアートでもあること」と話され、Mugikoには強く印象に残りました。Wataruさんはまた、GISの主な目的は「地図を作って伝達すること」にあり、データを集めて分析するだけでなく、「自分の思いを載せる形で、見せ方を工夫する」と説明しています。

空間的思考と実践、身近な問題関心とGISの掛け合わせ

GISシリーズNo. 13( No. 755)で Wataruさんは、地理教育における重要な概念として「空間的思考」(物事の位置・形・関係性を空間的に理解し、問題解決に活かす力)について話して います。そして今回のトークでは、学生自身が身近な問題関心とGISを掛け合わせた事例として、学生の実家周辺のジェントリフィケーション(住宅地の高級化と住民の追い出し)の可視化や、地質学とのコラボレーションでドローンや地中レーダーを使って墓標がない墓地をマッピングした研究などを紹介しています。

多領域の連携が不可欠

こうした具体的な研究事例を聞いてMugikoがワクワクするのは、ある問題を考える時に特定の専門領域をこえて多様なデータを利用していることです。調査者がフィールドワークなどを通して独自に集める一次データと、公開されている衛星画像などの2次データ、さらには人文地理学や歴史学やさまざまな分野との連携が不可欠だとWataruさんは語っています。

情報のデジタル化と検索機能

Ryutaさんは日本の大学で図書館情報学などを教えています。政府の統計情報などのオープンデータやOCR(自動文字認識:Optical Character Recognition)によるデジタル化が進められていますが、それらの情報にどうアクセスし利用できるのかついては一般にはまだまだ知られておらず、またデジタル化されえない古い資料の問題についてもRyutaさんがコメントされています。

メタデータとマージナライズ

Wataruさんもトークの中で、データを使いやすくするための「メタデータ」の整備が重要であるが、その一方で、デジタル化から排除される情報についても話しています。AIはデジタル化された情報しか学習できないために、口頭伝承などデジタル化されていない情報や、社会において意思決定から排除されているマイノリティは、情報の扱いにおいてもマージナライズ(周縁化)される危険性があると指摘しています。

「人」が資料をつなぐ

Mugikoは、学生時代に日本のお産婆さんについての調査研究をしていましたが、そこでライブラリアンなど「人」がさまざまな情報をつないでくれたおかげ、大正、昭和初期のローカルな資料の存在を知ることができました。AI時代においても、さまざまな立場の人との対話を重ね、「声なき声」をどう伝えるのかを考える続けることがいっそうに重要になると思いました。Wataruさんとのトークは、来週に続きます。-Mugi

◼️Shakira「Waka Waka (This Time for Africa)」◼️JUNG KOOK & LattoSeven

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