No. 799-2, July 17, 2026, 「こもれび夏のzine」でZineと「奥付」について考える

MugikoはKyotoの「こもれび書店」(HS No. 790)で開催されている「こもれび夏のzine 2026」(7月10日〜21日)をみてきました。

Part3, こもれび書店でzineの展示・販売、Zineの書誌情報

「こもれび夏のzine 2026」、いわゆる「パージン」(personal zine)

ギャラリー・イベントスペースもあり、そこに多数のZineが展示・販売されていました。お店の酒井陽香さんのお話では、「こもれび夏のzine 2026」の募集を始めて一週間で申し込み数の上限に達したそうです。2年前にこのイベントを始めた時には小説系が多かったけれど、今年は「自身のことを書いたエッセイ」系のZineが多く集まっています。

Sakaiさんのお話を聞いて、UCIMCにあるZine Libraryでは、こうしたジャンルのZineは分類するとしたらパージン(personal zine)*と呼ばれていたなと思い出しました。

*No. 337, Sept. 1, 2017, 夏のUC レポート, 「Zineは時代とともに」with Em-san「UCIMCのZine Collectionにも、多様なZineがあります。コミック、パージン(personal zine、Zineのすべてがパージンだという人もいますが)、パージンのコミック版、音楽、アート、TV番組などのファンジン、政治関連のZineなど、分類はなかなか難しいところですが、現在、デジタルなカタログ作りに取り組んでいます。Zineの検索、貸し出しができるようになるといいのですが。」by Em-san

作り手の思いを込めた「小さな本」たち

Mugikoは、「こもれび夏のzine 2026」の全体を眺めて、サイズと形が整っていることに驚きました。一冊ずつ手に取ってみると、日本では当たり前かもしれませんが、縦書きも多く、そして、意外に挿絵(と空白)が少ない。これも私の勝手な思い込みで、Zineにはその人ならではの(下手であっても)イラストが入っているというイメージがありました。一通りを見(触り)終わって、そうかあ、ここに集まったZineたちは、作り手の経験や思いを言葉にして届ける「小さな本」たちなんだと思いました。

Zineと「奥付」

また、ここで展示されているZineの多くには「奥付」があります。著者やタイトル、発行年月と並んで、印刷所名も記載されている。Zineにもこうした基本情報が記載されるものなのだ、、、あれ、そうだったっけ?昔、UCIMCのZine Libraryで見たようなローカルなZineには、基本情報が必ずしも記載されておらず、Zine Libraryのボランティアたちが、Zineを分類したり目録を作成する際に手こずっていました。

*No.287, Sept.16, 2016 Zine collectionをライブラリーするwith Kathryn「IMCのZine Libraryには、UCIMCの活動の影響もあって政治的なジャンルのZineもたくさんあります。2011年、12年、13年は、Midwest Zine FestがここUICIMで開催され、その際に多くのZineがこのライブラリーに寄贈されました。また、この部屋にあるメールボックスに入っていたり、各地から郵送されてきますが、誰が寄贈したのか、どこで作られたのか不明なものもあります。赤いタグをつけているものが、ローカルなZineです。学生とともに整理に取り組んでいますが、すぐには終わりそうにありません。いつかオンラインでカタログを公開できるようになればと思います。」

Zineの流通と基本情報

ひょっとしてZineがさまざまな場所で展示、販売され、流通するようになって、日本では「奥付」に類する基本情報を掲載することが当たり前になったのかもしれません。確かに、ロンドンの書店などで扱われているZineには、書誌情報が記載されていました。そんなことを思い出しながら、今回のHSのトークでは、大学で図書館情報学の授業も担当されているRyutaさんと。Zineと「奥付」について次のような話をしています。

出版物の書誌情報

日本でいわゆる「奥付」とは、出版された書籍などの最後に記されている出版物についての書誌情報、いわゆるメタデータです。例えば、Mugikoのたまたま手元にある文庫本には「タイトル、発行日、著者、発行者、発行所、印刷・製本、装幀。ISBN番号、NDC分類番号、版、総ページ、出版社HP」などの情報が、掲載されています。

Zineについてのメタデータ、例えば「場所」とは?

Ryutaさんのお話では、ライブラリーのコレクションなどでZineを扱う場合に、こうした書誌情報をどう扱うかが課題になります。現在流通しているZineであっても、こうした基本的な情報が必ずしも全てには掲載されていません。こうした問題はZineに限ったことではなく、図書館では古文書などを扱う場合も、その資料を位置付けるメタデータをどう判断し記録するかが重要になります。

Zineについても、仮に図書館でアーカイブ化する場合も、著者やタイトルだけでなく、いつ、どこで発行されたのかは重要になります。Ryutaさんが例として挙げたのは、「日本で発行された台湾旅行記のZine」であれば、「場所」についても、発行された場所(日本)と内容に関する場所(台湾)を分けて記載する必要があります。どの言語で記述されているのか、著者とは別に写真や挿絵の作者情報も必要になるかもしれません。

誰が、何のために記録するか、イベントと「手間」

Ryutaさんと話しながらMugikoは、Zineについてのメタデータとは、その情報を誰が何のために記録し、どのような方法で利用するのかによっても変わってくるのかなと思いました。もし、多数の作者から委託を受けてZineを展示・販売するとしたら、書誌情報とはまた別に一人ひとりの作者と作品の発送、受取や諸経費などをめぐる情報を共有しなければならない。そんなことを想像すると、こうしたZineイベントの開催には、どれほどの「手間」がかかることだろう、と思いました。

Zine Cultureをつなぐ人々

IllinoisでもLondonでもKyotoでも、Zineをめぐるローカルな展示やイベント、活動の関係者たちと話していると、Zine Cultureなるものへの深い思いが伝わってきました。自己表現としての自身のZine体験だけでなく、多様な人々の表現としてのZine Cultureなるものを大事にしていきたいと願う気持ち。Zineには、作り手や受け手のやりとりだけではなくて、その間をつなぐ人々の営みがあって、それぞれの時代、社会の状況の中で展開してきたのだろうなあ。

「長いものに巻かれない、そこにはzinesがある」

今から15年前、第4回HSで、当時のUCIMCのRadical Zine Librarian GroupのChrisさんにお話を伺った感想を、Mugikoはこう記しています。「アメリカのzinesには、マジョリティの排他性への批判が根底にありそうです。”長いものには巻かれない、そこにはzinesがある”」今のアメリカのZineにはどんな思いが表現されているのだろう。そこに紙のZineはまだあるかな、今度、アメリカに行ったら、Zine LibraryのZineたちに触れようと思います。HSでこれからも、さまざまな立場の人とZineのある風景や思いを語り合う機会があればいいなと思います。-Mugi

◼️EST VAINQUEUR「

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