「時空間をこえた移動」の物語
今週の収録は、2026年7月22日(水)午後2時過ぎ、RyutaさんはTokyoから、MugikoはKyotoから参加しました。今週のトークは、Part1では異常気象の話題に続き、Part2ではW杯とディアスポラ、ニットキャップシアター「チェーホフも鳥の名前」、Part3(No. 800-2 & No. 800-3)では朝日美術館「その先の世界へ〜柳沢健コレクション」について話題にしています。Part 2 & 3は、どちらも「時空間をこえた移動」の物語、第800回のHarukana Showらしいテーマです。
第800回のHSもハラハラ
ところが実は、HSの放送直前までUCIMCではインターネットの接続障害によって大混乱。別の場所にいるStuartさんからMugikoへ緊急連絡、「記念すべきHS 800回だけど、ひょっとして放送・配信できないかもしれない。万が一の場合、WRFUの番組アーカイブに先に収録音源をアップしておきます」と。
幸いにもネットは夕方までに回復し、7月24日 6PMには無事にHSは放送・配信されました。金曜日の午後、UCIMCのスタッフやボランティアの方々、ご対応をありがとうございます。曲入りの番組全体は、こちらから聴取できます。[2026-07-24-1800.mp3 (55MB)]。

Part1 , 日本各地で「酷暑日」、Champaignでも大気汚染でマスク
山火事の煙がChampaignへも、大気質に悪影響、外出時はマスク使用
ChampaignのTomさんによると、カナダで発生した大規模な山火事の影響で、Champaignの上空にも煙が流れ込み、月曜日には外出時にはマスクを使用していたそうです*。翌日には、”much less smoky”というメッセージが届きました。
*Molly Sweeney, ‘Air Pollution Action Day ‘ issued for Illinois, WCIA.com July 18, 2026
RyutaさんがChampaignに滞在していた時も、夏場に遠方での山火事発生による大気汚染は発生していました。極度に乾燥している時は、”No Burn Order”が発令され、屋外での火気使用(ゴミを燃やしたり焚き火なども)が禁止されることもあるそうです。
日本各地、連日「酷暑日」「熱中症警戒アラート」、ゲリラ豪雨も
日本でも異常気象が続いています。場所によっては「酷暑日」(最高気温40℃以上)となり、熱中症警戒アラートが発表されています。夜間も気温があまり下がらず、エアコンを使わざるをえません。また、短時間に雹などを含む激しく雨が降ることもあります。それぞれの場所で状況は一様ではありませんが、どうか気をつけてお過ごしください。

Part2, 演劇「チェーホフも鳥の名前」が描くサハリンの複雑な記憶
ワールドカップの多様化
今週の月曜日(7/20)は日本では「海の日」の祝日、早朝に起きてFIFA W杯の決勝を観戦した方も多かったのではと思います。2026年は出場チームが32から48に増えたことも影響して、参加チームや選手が多様化したという話を、HSでもしてきました(HS No. 799-1)。親の世代が移民として他国に渡り、あるいは出身国を離れて他国のプロチームで活躍する選手たちが、W杯においては自分がルーツを持つ国の選手として参加する例も多く見られました。
ディアスポラとスポーツ
今回のトークでもRyutaさんがディアスポラ(特定の場所にルーツを持つ人々が世界に離散して暮らす状態)について説明されていますが、国家の枠組みだけでは語れないW杯の複雑な背景を知るきっかけとなりました。

ニットキャップシアターによるサハリンを舞台にした2作品の上演
W杯について話した同じ時期にMugikoは、京都府立文化芸術会館でニットキャップシアターによるサハリン*を物語の舞台にした2本の作品を観ました。
*サハリンとは?「北海道の宗谷岬から約43km北にある島。昔からたくさんの民族が、日本と大陸の双方と交流をもちながら暮らしていた。近代以前はどこの国にも所属していなかったが、ロシアのシベリア開拓や日本の近代化以降は、両国の国境地帯として何度も戦火にみまわれた。日本統治時代は、島の南側は「 樺太 」と呼ばれ多くの日本人や朝鮮人たちが暮らしていた。終戦後は住民の多くが日本に引き揚げた一方で、国家間の様々な事情などによりサハリンに残留した人も多い。現在は「サハリン州」として事実上ロシア連邦に属しており、ロシア、朝鮮、日本、北方民族の人々が多文化的な生活を営んでいる。」『チェーホフも鳥の名前』フライヤーより
『フレップの花、咲く頃に』(脚本:山田百次、演出ごまのはえ)
7月4日、明るい和室で、7人の役者が椅子に座って脚本を朗読するリーディング上演でした。物語が展開するにつれて声が「人」となり、舞台がそこになくても観客にとっての「場面」が思い浮かび、集中して引きつけられました。「声」って想像力を掻き立てるメディアだなあと思いました。
『チェーホフも鳥の名前』(作・演出ごまのはえ)
7月18日に観たこの作品は、3時間にわたる壮大な舞台演劇でした。サハリンという場所で多様な他者が出会います。
「日本とロシアに挟まれた島、サハリン*。この島に「チェーホフ」と名付けられた街があるのをご存知でしょうか。ロシア人、日本人、朝鮮人、ニヴフやアイヌなどの北方民族――この街に暮らした様々な人々が、ときに国家間の思惑によって翻弄されながらも生活する様子を、アントン・チェーホフや宮沢賢治ら、かつてこの島を訪れた作家達の眼差しとともに辿ります。サハリンのある街と人々の暮らしを描いた、約100年のクロニクル。(フライヤーより)

100年にわたる「移動とディアスポラの物語」
『チェーホフも鳥の名前』では、100年にわたる「移動とディアスポラの物語」をサハリンを舞台につむいでいきます。第1幕から第4幕まであり、明治のロシア時代、大正の日本領時代、第2次世界大戦後、1980年代とそれぞれの時代背景も政治的状況も大きく異なります。
そこに関わり生きていく様々な立場の人々
各幕で新しい人物が登場し、また同じ人物でも年老いていきます。必ずしもこの島で生まれたわけではない。ロシアだったり、朝鮮だったり、日本だったりする。あるいはこの島で生まれたが親たちの出身はこの島ではない。また、この島に何世代も生きてきたけれど、ニヴフの立場を隠して、自分の言葉を使うこともできないこともある。外部からの島の訪問者には、アントン・チェーホフだったり、宮沢賢治だったり、赤ん坊の時に家族と島を離れた人もいる。
複数の役を身体化させる観察・演技力
戯曲の登場人物は30近く、それをステージではわずか9人の役者が演じています。つまり、一人が3役、4役をこなす。それぞれの役に対して衣装やメーク、セリフのなまりや言語も異なりますが、Mugikoにとって印象的だったのは、それぞれの役を演じる時に、背骨などの骨や手足の歪み、筋肉の使い方を変えて体格や年齢の違いを表現していることです。
「自分は何者なのか」、他者との関係の中で揺れ動く感情
歴史年表や事実の羅列とは異なり、時代や関係性の中でさまざまな「当事者」たちは、「自分は何者なのか」という問いに答えを出すことはできない。あるいは、出さない、考えないまま、他者との関係の中で揺れ動く人々のアイデンティティや感情を、この演劇では、人間の体や生演奏を用いたパフォーマンスで表現しています。「お芝居の想像力」の凄みに圧倒されました。

W杯という「舞台」が終わった後に、自分は何者であるのか
この演劇を見てからW杯を振り返ると、そこでは、チームも選手も何かを「代表」し、観戦する側も何を応援しているかがはっきりしているから、世界があれほど熱狂し盛り上がることができる。でも、そんな「夢の舞台」であるW杯が終わって、そこから離れた後、選手の一人ひとりは、自分が何者であるのかについて時には揺れ動きながら人生を旅し、移動していくのかもしれない、と思いました。-Mugi

◼️石田想太郎&水野邑玲feat. しらぼん「酷暑」◼️Chiyomi Yamada & 山田令子「Ancient Folk Songs of Gilyak Tribes: No. 1, Ai Ai Gomteira」