巨大データセンターへの懸念
先週のHS(No. 802-2)のイベント情報として、2026年8月13日にUCIMCで開催予定のアートワークショップについてお伝えしました。これは、近年のAIの普及とデータセンターの問題を、どのように共有し抗議を表現していくのか、というテーマの集会でした。Champaign Countyでは、巨大データセンターに対して住民からさまざまな懸念の声が上がり、郡ではこの春、新たなデータセンター建設を1年間認めない決定をしました。そこでまず、Part2で「そもそもデータセンターとは何なのか」を、Ryutaさんに解説していただいたうえで、Part3で、IL州やChampaign 郡の情報をお伝えします。
Part2, AI普及後の巨大デンターセンターとは? 何が問題なのか

データセンター:「サーバ」を格納した建物
「データセンター」は、「サーバ」と呼ばれるコンピュータを格納した建物です。「サーバ」は、コンピュータネットワークを介して、他のコンピュータに、データを保存する領域や、データを処理する演算能力を提供します。ネットワーク化されたコンピュータが使われるようになった初期のころは、データセンターは、銀行のオンラインシステムなど、限定された目的で使われるだけのものでした。
コンピュータネットワークの全世界的な繋がりと「ウェブサーバ」
その後、1980年代になってコンピュータネットワークが全世界的に繋がりはじめ、インターネットやワールドワイドウェブが出現すると、特にウェブサイトの中身を24時間・年中無休で提供する「ウェブサーバ」と呼ばれるコンピュータの必要が生まれます。
ストリーミング、クラウド型サービスの登場、データセンター需要拡大
さらにその後、インターネットの接続速度が向上すると、音楽や動画を配信するストリーミングサービスや、文章作成、画像処理などのようなソフトウェア的機能を提供するクラウド型サービスが登場し、サーバや、大量のサーバを格納する独立した建物であるデータセンターの需要が拡大しました。
生成AI普及前・後のデータセンターをめぐる状況の変化
ただ、ウェブサーバやストリーミングサーバ、クラウド型サービスを提供するためのサーバは、オフィスや家庭で使うコンピュータよりも性能が低いものでよいことも多く、このころのデータセンターの消費電力や環境負荷は、それほど注目を集めるものではなかったかもしれません。状況が変わったのは、生成AIが注目され、普及するようになってからです。
高性能な生成AIとサーバコンピューター、ノンストップの大量電力消費
生成AIは、通常のソフトウェアと異なり、機械学習済みの「モデル」全体を、常に、コンピュータの作業領域内に展開し続けておく必要があります。そのため、高性能な生成AIの機能を提供するサーバコンピュータは、大量のメインメモリ(RAM)や画像演算ユニット(GPU)を搭載しています。そのようなコンピュータは大量の電力を消費します。
大規模DC開発への疑問ー大量発熱と冷却用水、騒音など地域の環境負荷
また、大量の熱を発するので冷却が必要となり、そのために水が使用されることになります。そのほか、コンピュータに搭載されているファンなどが発する音も、単体ではそれほどの音量ではないかもしれないですが、数が集まると思わぬ騒音になる可能性があります。予備電源として使用される発電機は、軽油など、クリーンではない燃料を用いるものであることもあります。このような、生成AIを念頭に置いた大規模データセンターの開発に、いま、疑問の目が向けられるようになってきています。– Ryuta
Part3, データセンター建設を規制、Champaign郡とIL州の決断
巨大DCに対する行政レベルの方針等のズレ
Part 2のRyutaさんの解説の通り、現代の生成AIを支える巨大データセンターは、従来のものとは要求される性能も規模も異なり、莫大な電力と、サーバを冷却するための大量の水を消費します。しかし、データセンターは何かを生産する「工場」とは異なり、環境影響評価(アセスメント)や排水の温度規制などの法的なルール整備が追いついておらず、企業の自主性に依存した「野放し状態」になりかねない懸念があります。
また、アメリカでは国、州、郡(County)、市などの行政レベルごとにデータセンター建設をめぐる方針が異なる場合があります。州がDCの誘致を進めていても、地域住民のインフラを守るために郡でストップをかけるといった、行政レベルのズレや葛藤が表面化しています。
IL州のデータセンター建設推進から、電力・水資源保護への方向転換?
イリノイ州では、2019年からデータセンターを誘致するために、税制優遇措置(tax incentives)を導入し、シカゴ周辺を中心に次々とデータセンターが建設されてきました。しかし、生成AI用データセンターの急激な増加による電気料金の高騰や環境負荷が社会問題化し、2026年現在、データセンターの税制優遇の新たな申請の受付停止と電力・水資源の保護へと、「ある意味」で方向を転換しています。
POWER ACT制定に向けた議論、新規税制優遇措置の一時停止
イリノイ州議会ではしかし、データセンターの環境規制法案、いわゆる「POWER ACT」(IL House Bill 5513)を2026年春の通常議会で決議できず、2026年秋の特別会期での正式な法制化に向けて議論が持ち越されています。
この事態を受けてPritzker州知事は2026年6月5日に、「7月1日よりデータセンターに対する新規税制優遇措置の一時停止」に関する発表を行い、電力・水資源の確保を進める方針を説明しています*(Gov. Pritzker Pauses New Data Center Tax Incentives:Governor outlines framework to protect consumers and lower energy costs, calls on General Assembly to act in veto session, Office of the Governor JP Pritzker, Friday, June 5, 2026)、DCEO, Data Center Investment Tax Exemptions and Credits.
*2026年7月1以前にThe Illinois Department of Commerce and Economic Opportunity(DCEO)と契約している場合は優遇措置を継続。
Champaign County議会12ヶ月のモラトリアム可決ー2026年4月23日
一方、Champaign Countyでは、2026年4月23日、新規の大規模な商業用DCの建設許可を12ヶ月間にわたり停止する「モラトリアム」が可決されました。郡議会では、大型データセンター計画の浮上を受けて「Data Center Activities Task Force」を設置し、土地利用・ゾーニング基準を策定などを検討してきました(Champaign County Department of Planning & Zoning, CASE 196-AT-26, March 5, 2026)。
この日の郡議会では、多くの住民が公聴に駆けつけ、また数10人が意見を述べました。データセンターの建設を凍結するモラトリアム期間を9ヶ月とする最初の提案は、2時間に及ぶ議論の末、最終的には12ヶ月として承認されました。このモラトリアムは、学術・研究目的であるイリノイ大学のナショナルスーパーコンピューターセンターなどは除外されています。
データセンターに対して立場によって異なる意見
Urbanaの郡議会における議論の詳細は、IPM NEWS(April 24, 2026) “Champaign County Board approves 1-year data center moratorium“に記されています。ここでは発言者の立場によってモラトリアム期間の長短についても、環境保護や雇用の創出など、意見が異なり、住民のさまざまな対立を生み出しかねない問題を含んでいるようです。
管轄行政区内におけるDCをめぐる法規の策定準備
DCの問題は、単に「環境を守るか、雇用を作るか」という二者択一ではありません。郡では、1年間のモラトリアム期間中、設置された「Data Center Activities Task Force」において、定例会合を開き、騒音、水資源、電力についての課題を検討し、具体的なゾーニング条例(管轄区内における土地使用や建物の基準などを定めた地域法規)の策定を進めています。
現在のAIブームの中長期のサステナビリティ
またRyutaさんが今回のトークの最後に、「AIブームがもし数年先で落ち着いた際、中はコンピューターだけしか入っていないあの巨大な建物が、一気に撤退したあとにゴーストタウン(抜け殻)として放置されてしまうのではないか」とコメントされたように、中長期的なサステナビリティの懸念もあります。
Champaign、ILを事例とした世界共通の課題、情報共有
IL州議会においても、Champaign County議会においても、データセンター建設を全面に否定しているわけではありません。地域社会の環境保全と最先端インフラ整備を健全に共存させることが可能なのか。このシビアで複雑な議論は、今まさに世界中の「現場」で直面している課題です。さまざまな分野や立場の地域からの意見を、HSでも共有していきたいと思います。-Mugi

◼️王舟「とうもろこし畑」◼️SHOW-GO「Crying Inside」◼️寺尾紗穂「熊本 葦北の守子歌 『ねんねしなされ』」(芦北郡芦北町湯浦)
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