No. 805-2, Aug. 28, 2026, Champaign CountyのData Centerをめぐる攻防、12ヶ月モラトリアム、ノン・ホームルールの制約、タスクフォースの集中的調査

生成AIの普及と巨大データセンター、日本でも議論

生成AIの普及に伴いアメリカ全国で巨大データセンターが急速に建設し産業としても拡大しています。アメリカでも白熱しているデータセンターをめぐるエネルギー・環境・社会問題は、日本各地でも表面化しつつあります。Ryutaさんが言及されたように、大阪府箕面市(大阪大学箕面キャンパス跡地の開発に伴う大規模DC計画)での動きや*、日本国内最大のデータセンター集積地である千葉県印西市での電力消費やインフラへの負荷が、地元メディアでも議論され始めています。個人がAIをどのように利用するかとは別に、データセンターは、地球上の各地で進行形の問題となっていくかと思います。-Mugi

*「低周波騒音による身体への影響」住民が不安を吐露…データセンター建設めぐり地元自治会が市に説明求める上申書を提出. YTV NEWS NNN 2026年8月24日, **【タカオカ・ミニ解説】「効率重視で真四角しかない」 データセンター建設めぐり日米で建設反対の動き 電力・水めぐり住民と対立, YTV, NEWS NNN 2026年8月24日19:00

イリノイ州のDC誘致と懸念、Power Act案頓挫と州知事の声明

イリノイ州では、2019年からData Center Investment Programを通じてデータセンターを誘致する税制の優遇措置をとってきました(20ILCS 605/605-1025)。ところが巨大(Superscale)DCの建設に伴い 、大量の電力消費、電気料金の高騰、地下水資源の枯渇など、州民の暮らしにも直接に影響を及ぼす懸念が生じてきました。

州では、2026年2月よりデータセンターに対する包括的な規制法案(Power Act)を検討してきましたが、春の定例議会では決議できませんでした。Pritzker州知事は2026年6月5日に、州知事の権限によって税制優遇措置の新規受付を7月1日より2年間停止する(Gov. Pritzker Pauses New Data Center Tax Incentives )声明を出しました。そこでは巨大データセンターから州民の生活、環境を守るガードレールを整備すべく7項目を提示しています(先週のHS No. 804-2へ)。

Champaign Countyでのタスクフォース設置とモラトリアム

イリノイ州内の行政区によっては、データセンター問題に対して独自の規制等が検討されています。ここChampaign Countyでは、HSでも話題にしてきたように、2026年2月にデータセンター問題へのTask Forceが設置されました。4月には郡議会(County Board meeting)でMoratorium条例を採択し、巨大DCの開発を12ヶ月にわたり停止し、その間に郡としての規制条例を制定することになりました(HS No. 803-2)

今週のHSのPart2では、このモラトリアム決議までのプロセスを、Part3では、その後のTask Forceの検討内容について話しています。そして、来週、8月31日(月)には、この作業部会が、データセンター規制に関する条例案を公開しパブリックコメントを受ける公聴会を開く予定です。今週のHS No. 805では、8月31日の原案に提示に至るまでのプロセスを辿っていきます。

Part2,Champaign郡でのタスクフォース設立と12ヶ月モラトリアム決議

Champaign Countyのタスクフォース立ち上げの経緯と(〜2026年2月)

Champaign郡のゾーニング条例においても、2022年5月19日(Zoning Case 030-AT-21)にデータセンターに関する規定が追加されていますが、そこでは、小規模なデータセンターを想定したものでした。このため、2026年に入り、郡に巨大データセンター開発の打診があった時に、現行の条例では巨大データセンターが規定の対象にもなっていないことが指摘されます。(John Hall Memo, Jan. 28, 2026, ELUC2026年2月5日)*。

*John Hall Memo(To environment and Land Use Committee, from John Hall, Zoning Administrator, January 28, 2026, Authorization for Public Hearing on a Proposed Zoning Ordinance Text Amendment to Add Requirements for “Big Data Centers”.”BACKGROUND: Champaign County added “data center” requirements to the Zoning Ordinance in Zoning Case 030-AT-21 on May 19, 2022. At that time the data centers at issue were not the “hyperscale” data centers that are currently attracting attention. Case 030-AT-21 required a special use permit (approved by the ZBA) for a data center and data center was authorized in the AG-2 Agriculture, B-4 General Business, and I-1 Light Industry Zoning Districts….” Environment and Land Use Committee (ELUC)Meeting 02/05/2026 Meeting Agenda Packet内)

データセンター・タスクフォースの設置ー2026年2月19日

そこで、2026年2月19日のCounty Boardでデータセンターのタスクフォース(a Data Center Activities Task Force as a County Board Select Committee)設置が決定されます(Resolution No. 2026-41)。そこでは、土地利用基準、電力、水道、下水、農業交通、農業資源、交通への影響、公共の安全、緊急時の防災対策、周辺の農地、住宅、商業地との調和など、多岐にわたる検討を行うことになりました**。

*02/19/2026 Meeting, Minutes) 。**02/19/2026 Meeting Agenda Packet. pp.63-64

9ヶ月モラトリアム案から12ヶ月案へ-2026年4月23日

郡議会で4月23日に12ヶ月のモラトリアム案が決議されるまでに、期間をめぐって議論は紆余曲折しました。2月5日のELUC(環境および土地利用委員会:Environment and Land Use Committee)では12ヶ月のモラトリアムを提案し、3月19日のゾーニング控訴委員会(Zoning Board of Appeals)においても承認されました。ところが、4月9日のELUC会合において、早期の建設雇用を求める労働組合関係者らが、パブリックコメントで開発停止期間を6ヶ月にまで短縮することを強く要求します。ここでは9ヶ月という妥協案が可決されます(Environment and Land Use Committee Minutes, April 9,  2026)。

4月23日の郡議会の満席の傍聴、異なる立場から意見、12ヶ月案採択

ELUCのこの9ヶ月モラトリアム案に対して、4月23日郡議会には、100名を超す一般市民や労働組合や環境保護団体関係者などが詰めかけ、傍聴席は満員となりました。数10人がマイクの前にたちパブリックコメントと議論を交わしました。ここでも、データセンター設立による環境への影響の懸念や州のPower Actの成立動向も見極め、慎重な審議を求める12ヶ月への延長を求める多くの声と、データセンターの早期開発と建設雇用機会を求める9ヶ月支持派と意見が対立しました。2時間の激論の末、最終的には12ヶ月モラトリアム案が可決されました。詳細は下記の議事録をご覧ください。

*Board Member Rodriguez offered an amendment to change the moratorium specified in section 5.5.2. from “nine months or 270 days” to twelve months;Board Member Thorsland seconded. Board Member Peugh requested a roll-call vote. The motion to amend the ordinance carried by roll-call vote:Yeas: Arres, Carter, Cowart, Fava, Fortado, Hanauer Friedman, Lokshin, Peugh, Rodriguez, Sexton, Thorsland, and Locke – 12 Nays: Cagle, Farney, and Wiggs – 3.The motion as amended carried by unanimous roll-call vote:Yeas: Arres, Cagle, Carter, Cowart, Farney, Fava, Fortado, Hanauer-Friedman, Lokshin, Peugh, Rodriguez, Sexton, Thorsland, Wiggs, and Locke – 15 Nays: none(Resume of Minutes of Regular Meeting of the County Board, Champaign County, Illinois, April 23, 2026)(RESUME OF MINUTES OF REGULAR MEETING OF THE, COUNTY BOARD, CHAMPAIGN COUNTY, ILLINOIS, April 23, 2026.)

Champaign Countyに生きる人々の多様性、こだわり、切迫感

4月23日郡議会の長時間の議論全体は動画(County Board Meeting-April 23, 2026-Champaign Countyでも見ることができます。発言者は小学生から高齢者まで、元市長もいれば、農業経営者やエンジニア、建設現場の労働者、大学院生や研究者、環境保護団体などの活動家など立場も様々です。Champaign Countyという場所でどのような人が暮らし、働き、生きているのか、それぞれの事情と、水の問題などを通しても地域へのこだわりも強く伝わってきます。

Part3, Task Forceの専門調査とホームルールをめぐる劇的ボイコット

4月23日の 12-Month Moratoriumが可決された後は、毎月、タスクフォースの会議が開催されています。Part3では、5月から8月にかけての5回の作業部会の活動を追いました。すべての会議の資料は公開されています(Data Center Activities Task Force)。

第3回(5月4日)先進事例オーロラ市の教訓、ノン・ホームルールの制限

イリノイ州の中でもデータセンターに関する規制条例を早くに設けたオーロラ市市長ら(Alison Lindburg, Director of Sustainability and Mayor John Laesch of City of Aurora, IL)を招聘しオンラインで話を聞きました。この日はまた、データセンター連合の州政策担当ディレクター(Brad Tietz, Director of State Policy, Data Center Coalition)からも話を聞いてます(DCTF Minutes, 2026-05-04)。そこでは、データセンターの種類(hyper-scale, micro-tenant or co-location, edge data center) 、開発における優先事項(コンピュータ機器のための安全・安心のスペース確保、途切れない電力供給、確実な排熱)など*についての説明を受けました。

*He(Brad Tietz) referenced what he would say are the three over-arching priorities in building a data center. 1. Provide safe and secure space for the computer equipment. 2. Ensure an uninterrupted flow of electrons to the computer equipment. 3. Reliably release the heat generated from the equipment. He explained that another concern they would have and something members should consider is the modularity and the ability to move things around inside depending on tenant needs and changes in efficiency.(minutes-2026-05-04, page2)

Non Home Ruleの障壁

シカゴ近郊のオーロラ市ではすでにデータセンターが稼働していますが、180日間のモラトリアムを経て、厳しいDC規制条例を可決しました。オーロラ市は独自のホームルール(home rule)権限により条例違反に対して重い罰金を科すことができます。シャンペン郡はこうした自治体として権限を持たないノン・ホームルール(non home rule)であるため、条例としてできることが限定されるという難しい現実も明確になりました。

第4回(6月1日)水と排水問題

6月1日には、水問題に焦点をあてた会合でした。Alliance for Water Efficiency(水効率連盟)から水利用に影響を与える要因(技術、気温、湿度など)の説明を受けました。イリノイ大学の研究チームからは、他州の事例をもとにデータセンターによる大量の水消費によるストレスについての報告を受けました*。また状況をきちんと伝えない不透明性が信頼を失うと指摘されました。

*By Hari Dave, Ana Pinheiro Privette, Ximing Cai, and Ana Barros, Center for Secure Water (C4SW), Department of Civil and Environmental Engineering, University of Illinois Urbana-Champaign, “Gap Analysis: Assessing the Impact of Data, Centers on Water Stress Conditions in Virginia and Arizona

Champaign-Urbana Sanitary District(U-C衛生地区:USCD)事務局長やChampaign County Planning and Zoning(郡計画ゾーニング局)局長らも報告をしました。そこでは、データセンターが下水処理すみの「再生水(recycled wastewater)」を冷却塔(Cooling towers)で再利用すれば、新規の地下水(マホメット帯水層)消費量を80%削減可能であると提言しています*。

*Johanna DeCotis Smith, P.E. Senior Manage of Program, “Preparing for the digital rush: What to Know Before a Data Center Comes to Your Community” Rick Manner, U-C Sanitary District, ” Champaign County Sanitary District Presentation pdf.”

第5回(6月22日)エネルギーと送電網への脅威、BYOCの是非

6月の2回目の会合では、電気に関する問題が扱われました( Agenda Packet, 2026-06-22)。まず、送電網(Grid)への脅威についてです。イリノイ州の市場構造が説明されました*。急増するデータセンターが送電も(Grid)へもたらす逼迫したリスクについて議論されました*。

*Mark Puitt, Principal, The Power Bureau” A Quick Tour of the Energy Market in Illinois: Champaign County Department of Planning and Zoning Energy 101.”, June 2026.

自前のエネルギー調達義務と農地の衝突

また、Power Act案(春の州議会を通過せず)を取り入れ、データセンターに対して消費電力量と同等の再生可能エネルギーの調達義務(Bring Your Own Clean Energy: BYOC)。そこで、郡の計画ゾーニング局のJohn Hall局長からは、BYOCを義務化すると、郡内の最良優良農地が太陽光パネル(Solar arrays)に埋め尽くされてしまうという懸念も共有されました。

第6回(7月13日)発電機の大気汚染、騒音、振動、離隔距離

データセンターは24時間、365日、コンピュータを稼働させる必要があります。メインの電源が切れた場合に備えてバックアップ用の巨大な自前の発電機( back-up Generators)を備えています。そこからの排ガスを削減する基準や、燃料タンク二次格納器(secondary containment)の要件などが議論されました。騒音制限に関しては、イリノイ州公害管理委員会(IPCB)の基準やAurora市の条例の事例なども参照されています。また苦情受付ホットライン(Complaint Hotline)の設置義務化を提案されています。

*JohnHall, Zoning Administrator, July 8, 2026, ” Proposed requirements for back-up generators, noise, vibration, and minimum separation for a BIG DATA CENTER.” in DCTF Agenda Full Agenda Packet 2026-7-13.  …ex.Excerpts of City of Aurora Data Center Requirements.  (1) Limited hours for testing of back-up generators. (2) Vibration standards. (3) Tier 4 emission standards for back-up Generators; minimum Separation (1,000 feet) to Residential, Hospital, and Educational Use; and noise standards; and continuous monitoring of vibration….

第7回(8月3日) 条例草案とこれからのステップ

これまでのタスクフォースでの情報収集、議論を総括して、8月31日の条例草案に向けての原案が提示されています(Agenda Packet 2026-08-03)。どのような草案が提案されるかは、来週のHSで紹介できればと思います。ここでは、Champaign Countyのデータベース・タスクフォースでは、これまでの議論で何が問題になっていたのかまとめます。

⚫︎Mahomet Aquifer(マホメット帯水層)の急激な水枯渇リスク

大規模データセンターは、冷却システムによって1日に数百万ガロンもの大量の水を使用します。ハイパースケール施設が設立されると地域の約80万人の飲料水源となっているMahomet Aquiferが脅かされることが強く懸念されています。

⚫︎送電網の逼迫と電気料金の値上げ

イリノイ州でもデータセンターの電気消費量が急増し、送電網が逼迫し、その増強費用が一般住民の負担になり、また電気料金値上げなどが起きています。Champaign Countyにおいても、エネルギーの確保のための規制が必要に迫られています。

⚫︎止むことのない騒音問題、低周波ハミング

データセンターの冷却機や巨大ファン、非常発電機は停止することなく稼働し、常時、騒音を発し、また近隣住民は、低周波ハミングが常に感じることになります。シャンペン郡でも、音響測定や振動モニタリングを義務化、データセンターとの住宅や公共施設等の間隔をどう規制するか議論されています。

⚫︎開発計画の不透明さ、住民の不信感

Champaign Countyにおいてデータセンターが問題になったのは、郡西部(Rising Road地域)でデータセンター開発の打診があったことを、住民に一切公表されず、非開示契約に守られた「謎(Mystery)」のまま手続きが進められようとしていることに対する住民からの不信と反発によるものでした。情報開示も大きな課題です。

⚫︎特別地方自治権(Home Rule)を巡る騒動と規制限界

データセンター問題は、Champaign Countyに自治体としての根源的な問題も突きつけます。Non Home Ruleであることによって、データセンター設立を禁止するなどの厳しい規制を課す権限がありません。

ホームルール案の住民投票への決議、緊急郡議会の議員ボイコット-8月17日

ノン・ホームルール問題に対して、Champaign Countyでは、8月17日に臨時議会を特別招集し、11月3日(火)の総選挙で住民投票(ballot)を行う決議案を採決することにしました。ところが、この緊急議会に多数の議員がボイコットして定員22名の過半数12名を割り、臨時議会は数分で散会となりました。11月の住民投票を行うための提出期限(8月3日)も過ぎていたため、ホームルール上程案は、頓挫しました。

反対派は、ホームルールというCounty行政全体に変わる問題の決議には十分な議論が必要であり、現段階での住民投票は拙速であり、またホームルールになってしまうと、行政が固定資産税を上げるなど問題が生じる懸念がある、などの理由です。

*C-U Citizen Access, July 2, 2026, “Champaign County seeking legal counsel to regulate data centers following failure of Illinois POWER Act.**C-U Citizen Access, April 30, 2026 “Champaign County put brakes on “mystery” data centers; joins state, other communities’ efforts to pause construction of centers.

Champaign Countyは、データセンター問題に対して、郡内での設立を禁止する法的手段を得られず、またイリノイ州のPower Act法案も成立しないまま、Countyとして限られた権限の中でデータセンターをいかに規制しうるのか、厳しい状況に置かれています。実は、このPodcastを作成するうちに、8月31日を過ぎてしまい、Task Forceによる条例原案も公開され(Agenda 2026-08-31, Agenda Packet 2026-08-31)。公聴会もオンラインでライブ配信されました。その感想等は、次のHSで共有しながら、Ryutaさんと話していきたいと思います。-Mugi

カテゴリー: Harukana Show-Podcast パーマリンク

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