No.432-2, June28, 2019,米国での日本のポップカルチャーの浸透と日本語学習 with Misumi さん

1980年代から今日のアメリカでの日本語学習の変化 with Misumi

今週のゲストは、イリノイ大学EALC(East Asia Language and Culture)で日本語や言語学関連の授業を担当されているMisumi(美澄)さんです。アメリカ在住30年、ずっと日本語学習に携わってこられました。Misumiさんが渡米された1980年代後半には、日本語ブームがありました。それから、アメリカにおける日本語学習はどのように変わってきたのでしょうか。 

Part2,自己紹介, 日本語学習ブーム、日本のポピュラー・カルチャーの影響

Part3, イリノイ大学の中国人留学生の増加、上級日本語学習者の養成からCommunicative Aproach へ

1989年、四国からワシントン州へ、大学院で学びながら日本語を教える

香川県の大学で数年間助手として働いていた時に、ワシントン州にある姉妹校の大学から、日本語教師募集の案内が届きました。1980年代後半は、日本の経済が好景気で、多くの日本企業がアメリカへ進出し、日本語熱が高まりました。Misumiさんは、1989年に渡米し、最初は大学で、そして中学・高校からも依頼を受け、特別許可を得て4年間日本語を教え、その一方で、大学院で学び教員資格を取得しました。アメリカで結婚し、アリゾナの大学院に入学し研究生活に戻り、博士号を取得、2003年にイリノイ大学に就職し、以来、Urbana-Champaignに住んでいます。

アメリカでの日本語ブームが去っても、日本文化への関心は強く

1980年代後半から90年代にかけて日本語学習ブームがあった時には、ビジネスでも「正しい」日本語が使える上級レベルの語学力が修得できる教育が求められていました。日本経済の落ち込みとともに日本語ブームは下火になっていきましたが、アニメやゲームなどはアメリカでも根強い人気があり、日本語学習者は大きくは減少しませんでした。

日本のポピュラー・カルチャーの普及が生徒の視野を広げる

Misumiさんがアメリカの中学、高校で日本語を教え始めた時には、アメリカ人が日本文化に触れる機会は少なく、例えば、Sushiもまだ広くは知られていませんでした。そのため、ポケモンのアニメがアメリカに入った時には、「寿司」に、Jelly Donutというサブタイトルがつけられ驚いたことがありました。Misumiさんが、中高で日本語を教えていても、文化の違いを「変だ」(weird)と感じる生徒が多く、日本語を教えることも容易ではありませんでした。今では、日本のポピュラーカルチャーがアメリカで浸透し、そのおかげもあって、学生たちの視野が広がり文化の違いを受け入れやすくなっています。

インフォーマルな日本語学習者

日本のサブカルチャーのアメリカでの浸透にともない、現在では、必ずしも学校の授業で日本語を学ぶわけではなく、日本のアニメやゲームを通して、楽しく日本語と文化を吸収していくインフォーマルな学習者が増えています。イリノイ大学でも、Japanese Conversation Table(JCT)のように、日本語学習者同士が集うサークルには多くの学生が集まるそうです。日本語クラスの受講生も、「日本のアニメをサブタイトルなしでも理解できるようになりたい」という動機から日本語を学ぶケースが多く見られます。

中国人留学生の日本語学習

イリノイ大学の日本語学習者は、この何年間は、中国人留学生が増えています。イリノイ大学全体の在籍者も中国人留学生数が増えており、他のアメリカやカナダの大学でも、それによって大学の経営が大きく支えられているという傾向が見られます。日本語学習の動機は、出身国による大きな違いは見られませんが、中国人は日本語で使われている漢字を見て、日本語を学びやすいと最初は考えるようです。しかし、日本語は漢字よりもむしろ「ひらがな」によって文法や文章が構成されるので、助詞などの重要性を理解できないと、日本語学習が進みにくくなります。

コミュニケーション重視の日本語教授法へとシフト

現在のアメリカでも専門家を育てる日本語教育は行われていますが、大きな流れとしては、コミュニケーションを重視するCommunicative Approachへと教え方も変わってきています。「昨日は何を食べましたか?」という問いに、「ピザ」と一言、答えれば、日本語の文章としては完全でなくても、実際の会話は成立します。しかし、大学の試験では、その授業のレベルに応じた総合的な日本語能力が求められますが。(まとめ by Mugi)

Part4, コメント、ソフトパワー外交by Ryuta

ソフトパワー外交 by Ryuta

Ryutaさんは、アメリカでの日本語ブームをリアルタイムには経験していませんが、数多くの日本企業がアメリカに進出したことを話には聞いています。日本企業は、アメリカでビジネスを展開するだけでなく、企業が資金を出して、日本語プログラムを実施したり日本文化を広める活動を展開してきました。日本語ブームの背景には、軍事力や経済力を強引に使うのではなく、文化理解を進め摩擦を軽減し(商品も買ってもらう)ソフトパワー外交、政策の影響もあるのではないかと、Ryutaさんは考えています。

日本語学習、文化を伝える活動の積み重ね by Mugiko

Mugikoは、アメリカでの外国語学習者の数が、スペイン語、フランス語、ドイツ語、アメリカ手話についで、イタリア語を抜いて、中国語を抑えて、日本語が第5位だというMisumiさんの話を聞いて驚きました。先週のゲストのErikaさんが話されていたように(No.431)、地方のコミュニティカレッジに日本語クラスが存在するのも、その一例です。日本のサブカルチャーのアメリカでの大量消費が日本文化への関心の裾野を広げ、日本語や日本文化を伝える様々な立場の人々の歳月をかけた営みが、アメリカで日本語の多様な学び方を可能にする環境を作り育ててきたのだと思います。

日本語を学んで使って面白い

また、コミュニケーション重視の日本語教育が展開するなかで、日本語を「学んで使って面白い」という好奇心いっぱいの学生たちがHarukana Showにもやって来て、番組を開始した8年前も現在も、生き生きと、それぞれの日本への関心を語ってくれました。(まとめbyMugi)

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