No.485, July10, 2020, GISシリーズNo.6-3,「都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」情報は誰のものかwith Ai-san, M. Wataru-san, Ryuta-san

U-Cは蒸し暑い一週間

WRFUのスタッフに本日の番組収録音源を送ったら、返信にこう書いてありました。「しばらくすごく暑かったけれど、今日は暑さが少しやわらいできれいな日でした。夕方散歩しました」と記されていました。イリノイ州やU-CのCOVID-19関連の情報は、7月10日開催されたUIUC JPN COVID-19 Town Hall Meetingからのレポート(Tatsuyaさんによるまとめ)を、本ページの最後に記載しています。

日本は豪雨を続く。COVID-19感染、再び拡大?イベント開催緩和実施。

日本は今週は、西日本・東日本での集中豪雨が続いています。また東京都を中心に感染者数が増加し、7月10日には、243人の感染が確認されたと報告されています。一方、同日より、イベント開催制限が緩和されました。「政府 イベント制限緩和も感染防止の徹底呼びかけ 新型コロナ」NHK2020年7月10日4時12分

GISシリーズ No.6「感染者数マップ」

「情報は誰のものか」 by Ai&Ryuta&Wataru&Mugi

GISシリーズNo.6の3回目(No.6-1, No.6-2)、最終回です。GISスペシャリストのAiさんのお話の続きです。Aiさんたちのジャックジャパン株式会社が制作し、今年の2月16日から公開している都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ」の開発について、これまでお話を聞いてきました。イリノイ大学地理学部博士課程でGISを専門に研究するM. Wataruさんには、GISの専門的な用語も、わかりやすく説明していただきました。第3回のトークは、Ryutaさんのコメントから始まり、情報管理と政治の問題へも話が展開していきます(Podcast Part2&3)。M. Wataruさん、Ryutaさんに、Aiさんにまとめの文章も書いていただきました。

Aiさん(Tokyo)、M. Wataruさん(U-C, USA)、Ryutaさん(Shizuoka)、Mugiko(Kyoto)の4人でのトークは、6月21日に収録しました。GISシリーズNo.6のふりかえりトーク(Wataru&Ryuta&Mugiko)は、日本時間7月9日に収録しています。

Part1,西日本・東日本豪雨、銀河鉄道999つながり(7/9収録) 

Part2, GIS シリーズNo.6-3  「情報は誰のものか」 座談会前半

Part3, GISシリーズNo.6-3「情報は誰のものか」座談会後半

Part4, GISシリーズNo.6のふりかえりコメントby Wataru&Ryuta(7/9収録)

ジオプライバシー

トークのなかで、個人の位置に関する情報は“正しく”活用すれば、色々役立つとは言いましたが、“正しく”活用・運用するのは、様々な事情や立場の関係者が存在するので結構難しいですよね…。スマートフォンのGPS機能等、情報通信技術の革新によって、個人の位置に関するデータが、技術的には大量に収集可能となってきましたが、それを安全に利活用する社会的枠組みや制度については、まだこれからだと思います。個人の位置情報に関する保護や秘匿に関する課題は、地理学者の間ではジオプライバシーと呼ばれ、データ保護と活用の両立について議論されています。

情報銀行

両立のひとつの可能性として、「情報銀行」と呼ばれる概念があります。これは、情報提供者(例:スマートフォン利用者)関与の下でデータの流通や活用を進める枠組みです。信頼のおける運用機関にデータを預け、運用機関は本人許諾の範囲内で、民間企業等にデータ提供、利活用してもらうというものです。各個人が、自分のどのようなデータが収集され、どういう形で活用されているのか知ることができる。さらに、企業や研究者ほかデータ分析・利用側も一部大手企業がデータを牛耳る閉鎖的な環境ではなく、透明かつ公平な環境が提供されるとして、AI(Artificial Intelligence)、IoT (Internet of Things) 時代のデータ活用のあり方として注目されています。

報道のされ方

(日本ではCOVID-19のクラスターの感染経路も含めた報道がされていたそうですが)アメリカでは、確かに、感染経路を隈なく追いかけた報道はあまり聞かないかもしれません。感染者数が多い、国土が広いという理由もあるんでしょうかね。収録後に改めて考えると、日本と異なるかはわかりませんが、アメリカでは、人種や社会経済的格差、エッセンシャルワーカーに着目した報道が結構されたように思います。例えば、都市交通や人文地理に関連した報道では、貧困層ほど公共交通機関をコロナ禍でも利用せざる負えず感染リスクが高い。バス運転手(エッセンシャルワーカー)が乗客から感染し亡くなられた。COVID-19感染にたいして脆弱な人口はマイノリティの割合が高いといった様子です。受講していた交通地理学の授業で議論になったりもしました。

コロナ禍に留学生としてアメリカにいる

COVID-19は政治問題でもあるという話がトーク内にあったかと思いますが、今まさにそれを思い知る出来事が起きました。

米国への留学生 オンライン授業だけならビザ発給されず 新学期(2020年7月7日 14時57分NHK)

イリノイ大学は、秋学期を教室とオンラインの混合で開始予定なので、すぐの影響はなさそうですが、第2波が来た場合は、安全のため完全オンラインに切り替えるとしています。そうなると、私を含む留学生はCOVID-19が再流行中に移動、帰国を余儀なくされる場合も考えられ、どうしたものかと頭を悩ませているところです。7月8日時点で、イリノイ大学は、政府の政策にどう対応すべきか検討中で最善を尽くしていますと通達が来たところです。こういう時、自分は外国人で立場的に弱いんだなと改めて感じさせられます。by Wataru

*在シカゴ日本国領事館「新型コロナウイル関連情報」2020年7月8日「留学関連ビザの規制強化に関する米当局の発表」:「7月6日,米移民・関税執行局(ICE)は,米国の大学や高校の外国人留学生に対 し,新型コロナウイルスの影響で9月からの秋学期の授業が全てオンラインで行われ る場合,査証(ビザ)発給を認めない旨を発表しました。」

ダッシュボードとしての伝え方とアーカイヴとしての意味

現在の状況を伝える「ダッシュボード」という意味では、感染拡大の状況が変わったら異なる情報を伝える (あるいは異なる見せかたで情報を伝える) ことを検討する意義は大いにありそうです。ただ、これを「アーカイヴ」として考えると、同じ形式のデータが、変わらないインターバルで収集されていることにも大きな意味があると思います。低い粒度で収集された情報の粒度を後から高くすることができないのと同じように、リアルタイムに収集されていなかった情報を、後から収集して時系列に並べ替えるのは非常に手間のかかる作業になります。(リアルタイムで発表されていた情報が消えてしまい、そもそもできないこともあります。) なので、事後に研究を行う人たちにとっては、リアルタイムに収集されていた標準化されたデータというのは、とても役に立つものになります。

異なる組織により目的別の情報収集、元データのオープンな公開

もちろん、本来的には、「ダッシュボード」による情報発信を目指す人や組織が、「アーカイヴ」を求める人たちのための情報収集を行う必要がないことが、それぞれの負担を減らすという意味でも理想的だと思います。それは、突き詰めていけば、元のデータが、もっと収集しやすい、オープンな形式で公開されていれば、ということにもなるのですが……。

データ提供者への利用法についてのインフォームドコンセプトのあり方

また、収集されたデータが同時的に、あるいは事後に様々な分析に利用されるということになると、データ収集の際にそれらの利用法が説明されていたか、という問題にもなります。新型コロナウイルスに関する主要なデータは罹患状況と移動の状況ということになるので、これはデータ提供者のプライバシーにもかかわる問題です。アメリカの研究機関では、人間を対象とした研究を行う際、それがたとえ人文・社会科学的研究であっても、インフォームドコンセントを確実にすることが義務づけられています。これは、実験者と被験者の間 (あるいは情報収集者と情報提供者との間) に信頼関係を作る作業でもあります。たとえばスマートフォンの画面に長い「利用規約」が表示されて、それに「同意する」「同意しない」を選ぶだけでそのような信頼関係が構築できるのか、というのは、(ユーザーとしても、「研究者」になる立場になる可能性がある人間としても) 気になるところです。by Ryuta

情報を「集めること」にも意義がある

GISマップを公開して4ヶ月以上が経ち、「V.S.コロナから、Withコロナへ」といった生活様式も定着してきたのが6月下旬でした。この頃は日本国内1日あたりの感染者数は100人を下回ることも増え、世間一般に「第一波は抑え込めたのではないか?」といった認識も広くありました。そこで、国内の全体像を掴むことに適していたこのGISマップの仕様を変更したほうが、受け手にとってより便利になるのではないか?といった思いも生まれましたが、なかなか手をつけられない状況でした。Podcast内の私(Ai)の発言でもそういった迷いが表れています。

そこに、Ryutaさんから「情報を最小粒度で集め続けるからこそ、抽象化できる。アーカイブとして、研究の基礎資料としての価値が生まれる」「報道やニュースといった側面にとらわれない情報の集め方・公開の仕方も大事だと思う」といったご意見があり、まさにこのGISマップの根幹ともなる「症例情報を1件ずつ登録している/それをCSVデータとして公開している」部分も、プロジェクトの重要な柱であることを再認識しました。by Ai

UIUC JPN COVID-19 Town Hall Meetingからの 情報

Tatsuyaさんによる6月27日から7月10日の関連ニュースです。次のミィーティングは7月24日です。毎回、貴重な情報をありがとうございます。

Selected COVID-19 Information: IL & C-U (6/27-7/10)

Selected COVID-19 Information: UIUC (6/27-7/10 #1) by Tatsuya

  • (7/7) UI’s first saliva-based testing sites to open; UI opens on-campus COVID-19 testing sites
    • Beginning Wednesday, University of Illinois students and faculty will be able to get tested for COVID-19 on campus
    • A less invasive saliva-based test
    • Currently, there is an outdoor site at the Alice Campbell Alumni Center and an indoor site at the State Farm Center.
  • (7/2) Coronavirus response | UI chancellor: No major drops in enrollment for fall
    • “The UI doesn’t plan to revise its grading policy for this fall”
    • “For classes that meet in person, Bernhard said the UI is encouraging online versions to be made available but is not requiring it” 
    • “they’re still determining whether to finish the semester online after Thanksgiving break, as the academic affairs COVID-19 team recommended last month”
    • “When students return in the fall, everyone will be tested with a saliva-based COVID-19 test developed by UI researchers”
    • “Everyone will also be required to wear masks, and not doing so could lead to discipline under the student code and unpaid leave for faculty and staff”

■Lil Wayne – Mirror ft. Bruno Mars ■ゴダイゴ「銀河鉄道999」■村上ゆき「くちなしの花」

 

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