U-CのSatomiさんのメッセージとToy Film Museum
日本では、週末も夏日の暑さです。Champaignはこのところ、雨が多いですね。アメリカからは、政権と大学との軋轢など*、厳しいニュースが届きますが、それぞれの場所でいかがお過ごしですか。
*CNN. CO. JP「米政権、1000人超の留学生・卒業生のビザや在留資格取り消し 全米130以上の大学で」2025.04.18, BBC News Japan「米ハーヴァード大、トランプ政権の要求拒否 政府は助成金を凍結」2025/04.15
今週の収録は、日本時間4月16日(水)午後、RyutaさんはTokyoから、MugikoはKyotoから参加しました。Part1は大阪・関西万博、4月20日のイースターについて。Part2 & Part3では、Urbana-ChampaignのSatomiさんからのメッセージとKyotoにある「おもちゃ映画ミュージアム」を紹介しました。音楽入りの番組全体は、WRFUのHSのShow Archiveから聴くことができます。4月18日放送分は、こちらです。
Part1, 春が芽吹く季節に、大阪・関西万博、今年のイースターは4月20日
大阪・関西万博(2025日本国際博覧会、Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan)が4月13日(日)に、大阪湾の夢洲(ゆめしま)で始まりました。会期は10月13日まで。関西に住んでいても、万博はなんだか遠い世界のことのよう。これからどんな影響が出るのかな、レポート募集中です。
C-Uの情報を見ていたら、Champaign Public LibraryもUrbana Free Libraryも4月20日(日)は休館。イースターだった、とようやく気づきました。イエス・キリストの復活祭は、春分の日の後の満月後の日曜日 、グレゴリオ暦の場合、今年は4月20日です。地域によって気候は違うけれど、春が芽吹く季節に命をおもう行事なのかな。Champaignのスーパーにはウサギや卵の形のお菓子がたくさん並んでいるかと思います。
Part2, Satomiさんからメッセージ、「おもちゃ映画ミュージアム」とは?
Part3, 移転オープン、映像文化と歴史と人をつなぐ私設ミュージアム
「おもちゃ映画ミュージアム」をご存知ですか?-Satomi, U-C
HS No. 730で3月28日にイリノイ大学開催されたJapanese Paper Print Project: Film and Live Music Eventを紹介しました。この紙フィルム上映会に参加されたU-C在住のSatomiさんからこんなメッセージが届きました!ありがとうございます。
「Mugikoさんは、京都にある、おもちゃ映画ミュージアムをご存知でしょうか?私は、このイベントの映画鑑賞をするまで、そのミュージアムのこと知りませんでした。」
そこでKyoto在住のMugikoは、4月14日にミュージアムを訪問、その時の写真とともに、Satomiさんからのレポートを紹介します。
Spurlock Museumで紙フィルムプロジェクト講演と上映会-Satomi
先月末に、紙フィルム研究プロジェクトについての講演会そして映画上映が、Spurlock Museumで開かれました。プロジェクトですが、発端は、米国人の教授(Dr. Eric Faden)が「おもちゃ映画ミュージアム」を訪ねた時、映画の歴史上でとても珍しくて貴重な、でも年月が経って劣化している紙フィルムのことを聞かされたのがきっかけで、保存活動を始めることになりました。そして、1930年代に作られた紙フィルムの映画を再び上映するため、自分たちで映写機を開発し、あちこちで上映会を行っているようです。紙フィルムの映画そして研究プロジェクトの詳細は、「紙フィルム研究プロジェクト:The Japanese paper Film Project」へ。
紙フィルムの収集、保存、デジタル化
私は、紙フィルムについて全く知識が無かったので、このイベントに参加してその歴史・存在を知ったことだけでもよかったです。紙フィルムの映画保存、そしてデジタル化をするために(日本ではなく)米国の教授が中心となってプロジェクトを立ち上げ、熱心に保存活動なさっていることにビックリ。
Duo Yumenoの生演奏とショートフィルム上映の臨場感
実際、イベントの中で約20本のショートフィルムを見ました。全て、とても短くて、一つ一つの話は完結していませんでした。個人的には、「のらくろ」が一番面白かったかも。上映中に、Duo Yumenoの琴とチェロの演奏があり、それが無声映画の音として素晴らしい役目を果たしていました。他の観客たちからも、時々笑い声が聞こえてきて、反応がよかったです。皆さんそれぞれ珍しい上映会を楽しんでいたと思います。
日本文化としての紙フィルムの保存活動
イベントに出席した後、戦前から戦後、そして今にわたるまでの日本の(家庭内での)娯楽は、ものすごく発展したんだな、と実感。フィルムは紙でできているから、たいへん壊れやすく、それをデジタル化して保存して残す、というのは時間も手間もかかるということがよく分かりました。
紙フィルム映画は日本の文化だから、日本で話題になって、保存活動がさかんになればいいのに、とも思いました。-Satomi
Paper Film Projectと「おもちゃ映画ミュージアム」
Satomiさんのレポートから、イリノイ州でのイベントをとおして参加者が、90年の歳月をさかのぼって紙フィルムの存在を知り、素敵な生演奏とともにデジタル化された映像を楽しんでいる様子が伝わってきました。この日、解説されたエリック・ファーデン教授(Bucknell University)は、京都の「おもちゃ映画ミュージアム」とのご縁で、紙フィルムの保存活動に深く関わることになりました。
*エリック・ファーデン教授の研究発表会「デジタル時代における紙フィルムの復活」おもちゃ映画プログラム (おもちゃ映画ミュージアム)2023.06.10
京都映画芸術文化研究所が運営する私設ミュージアム、西陣に移転オープン
その「おもちゃ映画ミュージアム」とは、一般社団法人京都映画芸術文化研究所が運営する私設ミュージアムです。2015年5月18日に京都市中京区で開館しました。賃貸契約が10年の満期を迎えたため、中京区の町屋に移転、2025年4月4日に再オープンしました。館長の太田米男さん(元大阪芸術大学映像学科教授)と学芸員の太田文代さんが中心になって運営されています。移転に際して行われたクラウドファンディングを募るサイトには、次のように説明されています。
*「おもちゃ映画ミュージアムの引越し、移転、改修、原状回復費用にご支援ください」の説明から
おもちゃ映画とは?
屋号にしている「おもちゃ映画」ですが、無声映画全盛だった頃、映画館で上映されたあと家庭用に切り売りされていた35㎜フィルムの断片を、コレクターたちは“おもちゃ映画”と呼んでいました。剣戟スターの時代劇やアニメーション、ニュース映像など、30秒とか長くて3分ほどの短い映像ですが、無声映画の残存率が極めて低い日本にあっては往時を知ることができる貴重な映像です。発掘したり寄贈いただいたフィルムをデジタル化して、国内外の映画祭や各種上映会でご覧頂いたり、研究素材や映画、テレビ番組などで用いられることもあります。こうした貴重な映像をアーカイブすることが当館のメインの活動ですが、今では、16㎜、9.5㎜、8㎜といった小型映画も発掘して次世代に残そうと取り組んでいます(CFサイトより)。
映画館で上映されていた無声映画のフィルムが切り売りされて、「おもちゃ」として家庭用映写機が合わせて販売されことによって、無声映画は散逸したともいえるし、分散しながら少しでも生き延びたともいえるかもしれません。しかし、こうした初期の映画芸術を日本文化として位置づけ保存されることなく、21世紀に入ってしまいました。危機感をいただいた太田夫妻は、私財を投じてミュージアムを開設し、多くの人たちと協力してフィルムを発掘、修復、保存し、また次のような機材も収集、展示しています。
映画前史のアニメ玩具や家庭用映写機などを展示
映像だけでなく、19世紀産業革命の時代に誕生した映画は、▼写真(銀板写真のダゲレオタイプ、アンブロタイプ、ティンタイプ、横浜写真など)▼光学玩具(残像現象や仮現運動によって静止画が動いて見える原理=アニメ玩具)▼幻灯機(マジック・ランタン=画像を拡大して見せる映写装置)の3つの要素が関わりました。プレ・シネマ(映画前史)は、映画やアニメーションの原点です。これらを展示するだけでなく、触って体験もできる世界でも珍しい施設です。そして、当館の名前にもなっている各国の家庭用おもちゃ映写機や実際に撮影現場で用いられた撮影機や映写機も展示しています(CFサイトより)。
おもちゃ映画ミュージアムHPには、展示されている機材について詳しく解説されています(展示物 Exhibition)。
移転後の「おもちゃ映画ミュージアム」の開館(金〜月)10:30-17:00
西陣の「おもちゃ映画ミュージアム」の開館は、週4日(金〜月)10:30-17:00です。Mugikoは、今週の月曜日にミュージアムを訪問しました。入場料は大人1000円です。移転オープン後のとてもお忙しい時期にも関わらず、館長の米男さんが、各コーナを案内、古いフイルムも上映して見せてくださいました。
映画の歴史、記憶にじかにふれて、感じる
「どうしてこれらの機材に煙突がついているのですか」、といったMugikoの素朴な質問にも、米男さんは丁寧に解説し、さらなるお話が続きます。来館者が機材やフィルムにふれることで、映像の歴史と人々の記憶を心身で感じてもらいたい、それが世代をこえて歴史をつなぐ大切なプロセスだ、という米男さんの思いが伝わってきました。
商業映画の歴史と地域のアーカイブ、資料の劣化修復と専門知識、技能
番組のなかでMugikoの話を聞いたRyutaさんのコメントも、興味深かったです。地方の公共図書館やミュージアムは、地域の個人が撮影した映像を収集して残すことはあっても、映画会社が全国の映画館に配給していたようなフィルムについては扱いが難しいかもしれません。また、昔のセルロイドのフィルムは劣化し、ビネガーシンドロームとよばれるような酸化が進み、その修復や保存にも専門的な知識とスキルが必要となります。
おもちゃが「文化」になるとき
また、家に「おもちゃ映画」の映写機やフイルムが残っていたとしても、その「おもちゃ」の価値が認識されないまま捨てられてしまいやすい。だからこそ、「おもちゃ映画」の存在を多くの人に知ってもらい、散逸している資料を収集する窓口を開き、修復、保存する専門的な知識とスキルを共有する場所と機会は、とても重要です。そして実際に、おもちゃ映画ミュージアムには、国内外から多様な関心をもつ人々が引き寄せられ、次なる活動がうまれています。このミュージアムのサイトには、そうした動きが、随時に詳しく記され、足跡を残しながら次へとつなぐ姿勢にも、Mugikoは刺激を受けました。
いつかHSでYoneo さんとMugikoのおしゃべり
ところで、文代さん曰く、「米男と麦子、ええコンビやなあ」。いつか、Harukana ShowでYoneoさんとお話しできたらいいなあと、とMugikoは楽しみにしています。今回は、突然の訪問にも関わらず、米男さんと文代さん、そしてミュージアムの関係者の方々にお世話になりました。ありがとうございます。イリノイに「おもちゃ映画ミュージアム」についてお伝えするきっかけを作ってくださったSatomiさんにも感謝です。-Mugi
◼️エレファントカシマシ「四月の風」◼️Official髭男dism「日曜日のラブレター」◼️斎藤ジョニー「映写機」◼️水曜日のカンパネラ「エジソン」
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