TateishiさんのDIY TRIPの続き
CHIPRC(Chicago Publishers Resource Center)を訪ねたいと思ったのは、Tateishiさんの『DIY TRIP:手作り印刷物とDIY精神をめぐる旅〜シアトル・ポートランド編』(2011)やHarukana Showでのトーク(HS Podcast No.7-2, No.22-2)でふれられていたPortlandのIPRC(Independent Publishing Resource Center)を思い出したからです。CHIPRCも、Zineや個人による小冊子作りをサポートするNPOなのかな。幸い、日曜日がオープンデー(12pm-5pm)、Quimby’s Bookstoreからも遠くない。
なんだか、し〜んとしている
「もう5時だよ」というTomさんを、「まだ15分あるよ」とうながし、CHIPRCの前まできたものの、扉の前で、入ろうかどうか躊躇しました。OPEN HOURS SATURDAYS 12-5pmと記されていますが、中の様子はわからず、し〜んとしています。
「えっ、ここ、何?」
そろりとドアを押すと、ガランとした空間に、ぽつんと白い簡易テーブルが1つ。「えっ、ここ、何?」ポータブルのパソコンの前に女性が一人、向こうの椅子に男性が一人座っています。オープンアワーの終わりの時間に、突然に見慣れぬ訪問者が現われ、戸惑う空気が流れました。
さっそく、Quimby’sでつながり
男性はJohnさん、CHIPRCのダィレクターをしています。Chicago Zine Festのオーガナイザーの一人でもあります。女性はLizさん、Quimby’sで仕事をしています。「私たちは、今、その本屋から来ました」と話すと、空気が柔らかくなりました。
Zineについてどう伝えるか
私が、Kobeの大学で、フィールドワークのクラスで、学生たちが取材をした内容を伝える方法の1つとして、Zine作りをとりいれていると話すと、2人はぐっと興味をもってくれました。というのも、ZineやSelf-publishingについてどうやって伝え、方法をシェアしていくかは、CHIPRCにおいても重要な課題だからだと思います。JohnさんやLizさんも、CHIPRCの活動やアメリカのZineの流れについて語ってくれました。そして、Tomさんと私が2人にGrassroots Media Zineを渡すと、4人の議論はさらに熱くなりました。
スペースと機材と道具と情報をシェア
CHIPRCでは、スペースと機材や道具を提供し、人々が物語をえがいたり、冊子にしたりする活動をサポートしています。映像や音声も使って、Podcastを作ることもあります。日曜日はオープンデーですが、ウィークデーも、この空間を利用していろいろなワークショップなどが開かれています。ある種のコミュニティセンターですが、ここでのコミュニティとは周辺地域ではなく、「シカゴ」という場所とかかわる人々という広い意味です。
“Zine Culture”をはぐくむ活動
Zineは、古くはSFのFanzineや70年代のPunksのzinesなど、いろいろな流れがありましたが、self-publishingがひろくZineとよばれてきたわけではありません。comicsのはやりもかさなり、Zine Festなどのイベントが行われるようになり、だんだんとZineという言葉がより多くの人たちに使われるようになりました。
しかし、JohnさんやLizさんは、Zineという言葉の定義や歴史よりも、その人が作る物語をその人らしい形にしつながっていく営み自体を大切にしています。2人のような人たちがたくさんいて、「Zineしようぜ」と声をかけあい、CHIPRCのような活動をひろげ、イベントを開催し、長年にわたってZine Cultureをはぐくんできたのだと思います。
グラスルーツメディアの活動
CHIPRCを訪問し、Zineとは、さまざまな立場の人々がそれぞれの「声」をかたちにし社会と接するひとつの方法であり、それをささえつなぐ「各地」での草の根の活動があることを、改めて知りました。UrbanaにあるUCIMCのZine Libraryもそうした活動の一つです。
最後にJohnさんが、『ZINES 101』を手渡してくれました。28頁の短い冊子に、Zineの歴史から種類、作り方、Zineフェスの情報なども載っています。私が探していた、はじまりのZine。今回もZineをとおして人と出会う旅となりました。