No.466, Feb.28, 2020, 「防災から減災へ、レジリエンス 、しなやかな回復力」GISシリーズ No.4(後半)with Yuta & M. Wataru

U-CとShizuokaとKyoto

日本の関西は、数日、少し寒くなりましたが、例年より穏やかな暖かさが続いております。本日は、WRFU StudioからはTomさん、日本のShizuokaのRyutaさんとKyotoのMugikoがオンラインで出演しました。先週の放送(No.465, Feb.21, 2020,「ランドスケープ・アーキテクチャーを本場で学ぶ」 GISシリーズ No.4(前半)に続き、Yutaさん(Houston在住)とM. Wataruさん(U-C在住)のトークの後半をお届けしました。

Part1, 日本のコロナウィルス感染拡大と対策、U-Cイベント情報

コロナウィルス感染拡大と対策・要請

コロナウィルス感染拡大を防ぐための政策が連日、出されています。大規模イベントの中止や延期要請(2月26日)、国税庁による確定申告期間4月16日まで延長(27日)、そして28日には、衆院予算委員会で安倍首相が「全国の小・中・高校、特別支援学校に3月2日(月)から臨時休校要請」しました。

臨時休校の期間や形態については、地域や学校の事情を踏まえて判断されます。たとえば、京都市立校は3月5日から、府立校は3月3日から臨時休校することを発表しました。京都市教育委員会は、共働きなどの家庭事情に配慮し、希望する児童生徒を市立小中学校で受け入れる方針を明らかにしました。(『京都新聞』2020年2月29日朝刊)

Wataruさんより、「都道府県別新型コロナウイルス感染症患者数マップ」(ジャッグジャパン株式会社)というWebsiteを教えていただきました。学部時代のGISゼミの先輩が携わっておられるそうです。各自治体等の公開情報を地図上に一元化されています。コロナウィルス感染拡大の全体像と、各情報のソースも記されており個別情報も確認できます。

U-Cイベント情報

U-Cでは、コロナウィルスの感染は現在のところ確認されていないようです。イベントも通常通り行われています。

Hinamatsuri – Girl’s Day @ Japan House: 3/1 (日) 1pm-2pm & 2:30pm-3:30pm (要前売りチケット, $10/child, 保護者は入場無料) Japan Houseインターンによるひな祭りの歴史紹介、ファッションショー、和菓子・折り紙・生け花体験など。

Part2, Stormwater Management、レジリエンス 、防災から減災へ with Yuta & Wataru

GISシリーズ第4回は、ランドスケープ・デザインがテーマです。青山学院大学で地理情報科学を学んだM. WataruさんとYutaさんは、その後、それぞれに渡米しました。Wataruさんは、イリノイ大学地理学部の博士課程に在籍、GISを専門に研究を続けています。Yutaさんは、ルイジアナ州立大学大学院でLandscape Architectureを学び、修士課程を終えて、2020年1月より、Houstonにオフィスがあるランドスケープ・デザインの会社に就職しました。トーク後半は、ランドスケープ・デザインとは何か、特にYutaさんが専門とされている Stormwater Management(雨水管理)についてお話を伺いました。

Yutaさんから届いたトークのまとめです。

洪水やハリケーンなど水害に対するデザイン 

庭のデザインや街路のデザインなどランドスケープの中でも様々な分野がある中で、僕が興味を持ったのが、Stormwater ManagementやGreen Infrastructure、Resilienceというキーワードでした。災害というものをきっかけにランドスケープの分野に飛び込んだ者として、洪水やハリケーンなどの水災害に対するデザインに興味がありました。

Stormwater ManagementとGreen Infrastructure

河川が氾濫するのは、周囲の道路などから流出する雨水が急激に河川に流れ込み、その容量を越えてしまうことで発生します。その河川に流れていく水のスピードを植物や土壌の自然の持つ浸透能力を活かしてゆっくり時間をかけて流していく。この考え方や手法で雨水をコントロールして洪水による被害を低減させていこうというのがStormwater Management で、それを助ける植物や土の機能を利用したインフラをGreen Infrastructureと言います。

ランドスケープデザイン:複数の機能を持つ包括的デザイン

ランドスケープデザイン分野におけるStormwater Managementの特徴は、単に水の流れを遅らせる設計だけではなくて、例えば、そこに自生の植物を植えることで生態系の循環を向上させたり、自然の中を散策できるトレイルを同時に整備したりすることで、複数の機能を持つ包括的なデザインをすることだと考えます。

修論で提案した河川と隣り合った公園のイメージ。現存の氾濫原を広げて大雨時の貯水量を増やすと同時に、河川がある程度増水した時は、一部が意図的に沈むように設計されたデッキを提案した。普段は歩けるデッキが大雨のたびに水に浸ることを可視化することで、周辺住民は自分たちが常に水と隣り合って生活しているということを意識することができる。減災、教育、生態系向上、レクリエーションなどの複数の機能を持つグリーンインフラ型の親水公園の提案。by Yuta

レジリエンス(Resilience)、ダメージに対する柔軟な回復

東日本大震災や昨今の気候変動による異常気象によって想定以上の災害がいつ起きるのかわからないという認識を持った人も多くいると思います。そういう時代において完全に被害を防ぐことを目指すのではなく、いかにダメージを少しでも減らすことができるのか、そして被害が起きた後にいかに早く柔軟に回復していくのかという「レジリエンス」という考え方が重要になってくると考えています。

自然が潜在的にもつ減災能力を取り入れたデザイン

様々な分野でレジリエンスという言葉が使われる中で、ランドスケープデザインにおけるレジリエンスとは、自然に抗うのではなくて、自然とともに生きていけるようなデザインをしようという考えです。つまり自然が潜在的に持つ減災能力や人間にもたらしてくれる恩恵を私たちの生活に上手く取り入れることで、自然がもたらす負の側面(例えば自然災害など)にも柔軟に対応していけるという考えになります。

防災から減災へ、生態系、自然とともに暮らしてきた地域の文化

例えば、高い防潮堤は多くの津波を防ぐかもしれませんが、一度その壁が越されてしまうと柔軟に排水してすぐに元の生活を取り戻していくのは難しいかもしれません。また、そこに住む人々と海の景観も壁に遮られてしまいます。一方で、海岸の元々のランドスケープである砂丘やそこに自生する植物の潜在的な減災能力を最大限に引き出すことで、津波が起きても水がすぐに引くようなデザインを考えていくことは可能です。そこには減災だけではなく、生態系を守るというメリットや、その自然とともに暮らしてきた地域の文化的な景観を守っていくことにもつながります。by Yuta

U-Cにも身近にあるランドスケープ・デザイン・プロジェクト 

ランドスケープ・デザインは、暮らしの中に寄り添うように設計されていて、普段は気づかないこともあります。近年、U-Cでも、雨水管理とグリーンストラクチャーを配慮した複合的なプロジェクトが実施されています。たとえば、Scott Park / Boneyard Creekの改修事業がいい例ですね」「Preservation Pond と Glenn Parkは、豪雨対策で近年(2013~2017)に整備、改修されたものみたいです」by Wataru

Stormwater Management, Public Works Department,”Active Projects Under Construction: West Washington Street Watershed”参照。

Part3, コメントwith Ryuta&Mugi

Resilience(レジリエンス )を日本語でどう伝えるか by Ryuta

Yutaさんのトークに出てきたResilience (レジリエンス)という言葉を日本語でどう伝えたらいいのか、というのが気になったので、建築におけるResilience概念について少し読んでみたところ、このようなオンライン記事に行きつきました (The Resilient Design Principles)ここに書かれている内容が専門家からみて妥当かどうかはわからないのですが、この中では、レジリエント・デザインを考える際に考慮すべきポイントとして、”Diverse and redundant systems are inherently more resilient” (多様性と冗長性のあるシステムは、より高いレジリエンスを有する)、”Locally available, renewable, or reclaimed resources are more resilient” (地産地消可能、再生可能、あるいは再利用した資源はより高いレジリエンスを有する) といった要素があげられています。

「グローバルシティ」や「スマートシティ」に対(補完)する提言

レジリエント・デザインというのは基本的、根本的には大規模災害を想定した概念だとは思うのですが、巨大土木プロジェクトだけではなく、世界的な物流や人的交流に頼ることを前提とした「グローバルシティ」や、これから作られようとしている情報技術ネットワークに依存した「スマートシティ」に対する (あるいは補完する) 提言としても読めるな、と感じました。(「グローバルシティ」の脆弱性は、大規模災害だけでなく、疫病の国際的流行のような事態が起きると強く感じることになりますね。) by Ryuta

Flexibility、Adaptability(適応可能性)by Yuta

まさにおっしゃる通りで、技術によって巨大なインフラが造れるようになったものの、それに頼り過ぎてしまうとそれが一度崩れた時に、生きていく術がなくなってしまってはどうしようもなくなってしまいます。Flexibility と紹介してくださいましたが、それと似ていてよくAdaptability(適応可能性) もResilienceの説明で使われます。特に気候変動など、どんな予測不能な自然的もしくは社会的なインパクトが起きたとしてもそれらの様々な変化に「適応できる」こと、として説明されます。by Yuta

コロナウィウルス感染拡大防止対策とレジリエンス

コロナウィルス感染拡大防止対策の報道を聞きながら、Yutaさん、Wataruさん、Ryutaさんとのトークについて、とくにレジリエンスって何だろうと考えさせられました。全国の小中高校が一斉に臨時休校することによって、コロナウィルス感染拡大はある程度の防止されかもしれない。しかし、学校が持つ機能が、突然に、一時停止することによって、社会に大きな影響を及ぼします。たとえば、子供たちがどのように自宅待機し、働く親たちはそれにどのように対応するのか。

そこで、教育委員会によっては、小中学校が柔軟に対応して、学校は休校するけれど、一部の生徒を学内に受け入れる場合もあれば、地域によっては、学童保育が受け入れ時間を拡大するかもしれない、状況に応じて職場の人たちが協力して、事情に合わせた出勤・休みを可能にする体制をとるかもしれない。社会がある衝撃を受けた時に、異なる立場の人たちの状況をふまえて柔軟に対応できることを想定したような暮らし方、つながり方、仕事の体制を考えておく、ということもレジリエンス の考え方なのかな。by Mugi

■斉藤和義「傷だらけの天使」■斉藤和義「いつもの風景」(作詞さくらももこ、作曲:斉藤和義,フジテレビ系アニメ「ちびまる子ちゃん」エンディング主題歌)■星野源「さらしもの」feat, PUNPEE ■Superfly「フレア」(NHK 連続テレビ小説『スカーレット』の主題歌)

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