No.590, July 15, 2022, 「Z世代のメディア利用」「多様なメディアの選択と組み合わせ」

日本全国でCOVID-19感染急拡大

日本では、局所的に記録的な大雨が記録されるなど、不安定なお天気が続いています。また、全国でのコロナ感染者確認数が1日10万人を超えました(7月16日には11万675人、10時45分NHK NEWS WEB)。来週の月曜日は「海の日」の祝日、多くの人出が予想されます。京都では、祇園祭3年ぶりの山鉾巡行が行われます。感染予防対策も意識して、よい連休をお過ごしください。

Chmpaign Countyも要警戒

Confirmed Champaign County COVID-19 Cases, 7. 54.AM, July 15, 2022, CUPHD

Champaign Countyでも、陽性者数は7月も500人前後、警戒レベルも赤色のままです。入院患者数は先週より増え、利用できるICUベッドの割合は減っています(7/8:14人、38%、7/15: 24人、22%)。

Part1, COVID-19感染拡大、甲南大学「メディア文化論」Webinar4について

今日のHarukana Show HSのPart2では、甲南大学(@Kobe)の「メディア文化論」Webinar4の一部をお届けします。先月はWebinar3「VR美術館でリアルタイムに国際交流」をHSでもお届けしました(No.585)。

Webinar4(Part2)では、テレビの映像制作の現場に携わってきたMatsumotoさんが、若い世代のテレビ離れがすすむなか、異なるメディアを組み合わせたどのような制作、発信を展開できるだろうか、と問いかけます。これを受けて、神戸東灘区を拠点としてインターネット放送局の活動を続けてきたTstujinoさんが、マスメディアとは異なる地域メディアの制作現場についてお話をされます。そして、Part3では、Ryutaさんが、コミュニケーション学でいうメディア選択論や図書館情報学でいう情報探索行動論という視点からのコメントをしています。

Part2, 多様な媒体の組み合わせ、異なる映像制作、発信の現場からwith Matsumoto, Tsujino

Part2はMugikoが文章にまとめています。

テレビの映像制作の現場からの危機感 with Matsumoto

大学での授業を受けている、いわゆるZ世代(1990年代半ば以降に生まれ、現在10歳代から20歳代半ばの世代)は、テレビやインターネットとどのようにふれているのか。ビデオリサーチ「ひと研究所」の調査研究レポート*では、Z世代のテレビ離れが進み、コロナ禍をとおして、行動が制限されて空いた時間の「楽しみ」を求めて、ネット動画視聴が増えたと指摘しています。また、テレビを見ていても、スマホを触りSNSをしながらという場合も多く、Matsumotoさんたちテレビの映像制作の関係者はテレビという媒体のこれからについて危機感をいだいています。

*ビデオリサーチひと研究所「Z世代のネットとの関わり」(1)(2)2022年4月&7月、「2021コロナ禍における映像視聴行動研究レポート」2022年5月

テレビの制作現場から、異なるメディアを利用した3つの試み

こうした状況において、Matsumotoさんは、テレビの制作現場に関わってきた人たちが試みている3つの取り組みを紹介しています。

対策① LINE NEWS VISION:LINE社が提供する映像配信のためのプラットフォーム、これまでテレビで放映した映像を、LINEを通じて配信する。

対策②「縦型:スマホで見やすいように、縦型のドラマ、ニュース、マンガなどを作る。

対策③「短尺」Micro Docs(Yahoo)の場合、これまでドキュメンタリーの尺を3分以下にして、この時間内に報道、内容を完結させる。

Matsumotoさん自身は、縦型の映像制作はやってみたいと考えています。-まとめ by Mugi

インターネット放送局MEDIA ROCCOの場合 with Tsujino

MEDIA ROCCOは神戸市東灘区に拠点をおく「ひがしなだコミュニティメディア(HCM)」のインターネット放送局です。2012年10月より、毎週土曜日に、地域情報などを中心に1時間のライブ動画配信をしています。Tsujinoさんは、HCMの活動に10年近く関わってきました。インターネット放送局を立ち上げたメンバーは、テレビに馴染みのある世代が多く、視聴者もパソコン画面で配信を見ている人が多くいます。最初はスマホの画面で見ている若い世代を含む視聴者についてはあまり考えていませんでした。特集も1つの話題を40分の長さで扱うこともありました。最近は、番組の中で複数の特集を組み、1つの尺が20分程度にして以前より短くしています。

地域の情報を伝え続け、社会の変容やグローバルな世界と接続

MEDIA ROCCOのような地域メディアは、マスメディアのようなより多くの視聴者に見てもらうことに重点をいているわけではありません。地域からの情報を撮り伝え続けることで、ある種の定点観測として、その社会の変容が記録されていきます。

たとえば、MEDIA ROCCOでは、神戸市灘区の深江の多文化フェスティバルを、毎年取材してきました。深江という地区は、外国人労働者が多く、多様な国籍、出身、文化的背景を持つ人々が住んでいます。このイベントを手伝う子どもたちの出身地もさまざまです。取材の中で出会ったある子どもは、最初の年はなかなか言葉が出ませんでした。2年めは、インタビューにしっかりとこたえてくれた。3年目にはリーダーとして他のメンバーをサポートするようになっていました。そうした成長が、映像には刻まれていきます。ミクロな点からも、その社会の変化やグローバルな世界との接続をとらえたり、社会の問題を浮き彫理にしていくこともできます。-まとめ by Mugi

Part 3, コメントwith Ryuta & Mugi

メディアスタディーズや図書館情報学における「利用者研究」-Ryuta

Ryutaの専門分野はコミュニケーション学(メディアスタディーズ)や図書館情報学ですが、これらの分野には、メディア生産に還元するためではない、純粋に利用者を理解することを動機にした「利用者研究」の伝統があるのではないかと思っています。メディア選択理論や情報探索行動論はそういった研究のベースになるもののひとつですが、おおざっぱにいうと、どちらも、「メディア(情報)の利用者は、自身の周囲に数あるメディアの中から、自分がやりたいことや、状況、自分のスキルに見合う、『最適』なメディア(情報への到達経路)を選択して利用する」のではないか、ということを言っている理論です。

新しい媒体の登場は、必ずしも既存の媒体との「競合」ではない

この、利用者研究の視点から考えると、まず、異なる媒体の存在や、スマートフォンのような新しい媒体の登場は、必ずしも既存の媒体との「競合」ではない、ということができるかもしれません。また、利用者は、それぞれの媒体、媒体が作り出す「場所」、そこから得られるものを理解した上で、(理性的かどうかはわかりませんが)選択的に、あるメディアにアクセスしている、と考えられるような気がします。

さまざまなメディアが、メインストリームから外れながらも生き残っている理由

これは(情報の伝達経路、消費経路として「最も効率的なもの」は、もちろん最もよく選択されるかもしれないですが、)そうではないものにも選択される余地がある、という話かもしれません。そして、さまざまなメディアがメインストリームからは外れながらも生き残っている理由でもあるのかもしれないな、と思います。 – Ryuta

「数」にならない小さなメディアの意味と可能性-Mugiko

誰かと何かを共有するツールやメディアの組み合わせ方の選択肢は、たくさんあります。でも、その多くは、より多くの視聴者に情報を届けその成果を分析し次なる制作に活かすというシステムからは、こぼれおちてしまいます。米国のコミュニティラジオ局WRFUから発信される日本語の声は、いったい誰に届くのだろう。限られた冊数しか発行していない手作りZINEに、出会えること自体が奇跡、かもしれません。

それでも、数にならない制作や発信の一つひとつにプロセスがあり、見えないところにつながりがあります。今は、どこに向かうのか分からなくても、未来につながる足跡を残すことはできます。小さなメディアが存続し活動に関わる人たちがいることの意味と可能性を、Harukana Showでも考えていきたいと思います。-Mugi

■Daryl Hall & John Oates「You Make My Dreams (Come True)」■山下達郎「僕らの夏の夢」

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