厳しい気候、激動の季節
今週の番組収録は、日本時間の1月22日(水)午後、RyutaさんはShizuokaから、MugikoはKyotoから参加しました。この時のChampaignの気温の表示は−19℃。自宅で暖房が使えなかったり住まいがない場合、どうするのだろう?Part1では、体の温まる食や、シェルター、そして様々な機能を持つ公共図書館の話をしました。
1月20日の大統領就任式、そして多数の大統領令への署名というニュースが次々と日本にも届きました。ところで、大統領令とは?Ryutaさんがわかりやすく解説します(Part2)。番組後半では、先週の番組(HS No. 721) のテーマ「阪神淡路大震災から30年」について、HiroshimaのKanaさんからのメッセージを紹介しました(Part3)。継承するだけでなくどうやって学び続けることができるだろうか。GISシリーズ第8話のKenyaさんのプラットフォーム作りについての話題にふれました。
Part1, 極寒とシェルター、滞在型ライブラリー、”Book Sale”
厳しい気候とシェルター
Champaign在住のTomさんの話では、気候や状況に応じてシェルター(行政、NPO、教会など)が開設されるそうです。そうした情報が共有される仕組みがあるのだと思います。また、Public Libraryも多くの人にとって居心地のよい場所ですが、Ryutaさんのお話では、閉館後に、風雪を凌ぐスペースを利用できるようにしておくLibraryもあるそうです。
住民と図書館の連携、FriendShop Bookstore
Champaign Public Libraryのイベント情報を見ていると、住民のさまざまな活動にも図書館の空間が使われています。また、例えば、FriendShop Booksotreは、図書館と「友の会」会員とボランティア有志が連携した活動です。住民から寄付された本やCD、DVDのうち図書館が不要なものをFriendShopが受け入れ、販売し、収益を図書館に寄付します。Champaign Public LibraryのFriendShop Booksotreは、図書館の地下1階にあり、水曜日から日曜1-4pmに開いています。誰でも利用できますが、友の会のメンバーは、特別価格が設定されています。住民と図書館が連携しながら人の輪ができ、本や音楽や映像が優しい価格で入手できる、実利にもなる仕組みですね。地元のこうした活動について、いろいろな情報をお寄せください。-Mugi
Part2, 大統領令とは?
職務開始直後に多数の大統領令に署名
1月20日に米国大統領の就任式があり、昨年11月の選挙で当選したトランプ氏が今期の大統領としての職務を開始しました。その直後に、いくつもの大統領令に署名したことが日本でもニュースになりました。
大統領自身の権限で出す告知や覚え書き
「大統領令」は、米大統領が、自身の権限で、議会での議論や承認を経ずに出すことができる、さまざまな告示や覚え書きなどのことです。緊急性が高いと思われる政策や、自身が特に進めたいと考える政策などをすぐに施行するために使われることが多いようです。(第2次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容もルーズベルト大統領が署名した大統領令が根拠法でした。歴代大統領が出した大統領令のアーカイブはこちらで閲覧できます。)
合衆国憲法の最終的権限は連邦議会
ただし、大統領令では、合衆国憲法そのものを変えることはできません。(「立法」の最終的な権限は連邦議会にあるからです。)憲法に違反している可能性がある場合は、誰かからの訴えがあれば、裁判所(司法)がその違憲性を判断し、必要であれば差し止めを行います。
連邦法の権限が及ばない州独自の法律の分野も
また、米国は「州」の独立性が高く、連邦法の権限が及ばない法律の分野もあります。(つまり、分野によっては州独自の法律を作って大統領令を棄却できる、ということになると思います。)
現行の施策とのすり合わせ、システム変更の手続き
さらに、政策というのは、おおざっぱに言えば法律の施行のしかたを変えるということなので、内容によっては現行の施策とのすり合わせやシステムの変更といった手続きが必要となり、「すぐに」といっても、大統領令が求めることが、すべて即座に実施できるとは限りません。(よくも悪くも「官僚制」というものがあるので……)今回、さまざまな人たちの日常生活に直接影響のありそうな大統領令も布告されましたが、いつ影響が出はじめるかについても不確定なところがありそうです。- Ryuta
Part3, HiroshimaのKanaさんから継承と学び。参加型プラットフォーム
先週の番組(HS No. 721)について、Hiroshima在住のKanaさんがメッセージを寄せてくれました。「30年前、あなたはどうしてましたか。」
阪神淡路大震災から30年…Kanaさんは小学1年生
当時、私は小学1年生で、東灘区に住んでいた叔父と叔母と叔父のお母さまが家を失い(無事だったので何よりなのですが)、広島の私の実家に3人で避難していました。3か月間くらいだったかと思います。当時、叔母は今の私くらいの年(30代後半)、働き盛りでした。その叔母も先日定年を迎え、今はパートタイムで働いています。
広島・長崎での被爆者の超高齢化
ラジオを聴きながら、時間の流れを思い起こしていました。『建築雑誌』のお話、興味深かったです。龍太さんも少しヒロシマ・アーカイブについて仰ってましたが、映像記録があるとはいっても、広島・長崎での被爆者の超高齢化は、いまだにやっぱり問題だと思います。広島にいるとニュースでよく取り上げられるので、特にそう思うのかもしれません。(ノーベル平和賞とってよかったね、だけで終わるわけにはいかないだろうし。)
体験の記憶・記録と継承、学び続けること
デジタルや映像で残ればそれで、体験の記憶・記録と継承になるのか、という問題なのかなあ、など考えました。『建築雑誌』のようなアプローチだったり、歴史(現代史含む)やその時々の人々の知恵を「学んで」いくことは、年齢関係なく当たり前に大事で、学び続けながらどうにかしていくことしかできないんだろうなー、とも思ったりしました。-Kana
体験者の語りの時間的な制限、記録をどう活かし学び続けるか
HiroshimaのKanaさんからのメッセージは、大きな2つの問題にふれています。災害や被爆の伝承の記録は、体験者が生きているあいだというシビアな時間の制約があります。また、たとえ語りを音声や映像や文字などの記録に残したとしても、そこから何をどう学び続け、その先へとつなぐのか。
HSのGISシリーズ、地図を使い多様な情報を記録・分析・活用
この問題について、Harukakα Showでもさまざまな側面から話題にしてきました。Wataruさんが中心に展開しているGIS(Geographic Information Science/ System)シリーズでは、地球上の多様な情報を地図を使いながら記録し、可視化された情報や分析を、過去と現在と未来へどうつなぐのか、多様な現場の実践者のお話を伺ってきました。
Kenayaさん「地球の全てを記述できる、記述したい世界にする!」
2022年11月の第8話(HS No. 557)では、Kenya(田村賢哉)さんが、「地球の全てを記述できる、記述したい世界にする!『APLLO & Re:Earth」について話されました。KenyaさんはHiroshima出身で、大学院博士課程の時に東京大学渡邉英徳研究室による「ヒロシマアーカイブ」プロジェクトに参加されました。その経験をとおして、その後、「文脈や質感までも保存できる次世代型 地理空間情報データベース(APLLO)と、それをデジタル地球儀に可視化するプラットフォーム(Re:Earth)の開発に乗り出し」(HS No. 557)、仲間とともに株式会社Eukaryaを設立しました。
ともに学び続けること、次へつなぐ実践のヒント
KenyaさんとWataruさんとRyutaさんとの3年前のトークのなかで語られた、「全てを記述できる!?」という技術の可能性と「記述したい世界にする」というKenyaさんの発想に、Mugikoは衝撃を受けました(No. 558-1)。今回、HiroshimaのKanaさんからのメッセージを読んで、Kenyaさんたちの取り組みには、「ともに学び続けること、そこから次へつなぐ実践」について考えるさまざまなヒントがあるのではないかと改めて思いました。
誰でもがすぐに情報をデータとして格納し、可視化、共有できるツール
昨年のインタビュー記事のなかでKenyaさんは、「デザイナーやエンジニアでなくても、誰でもすぐに情報をデータとして格納でき」「ビジュアライズやシュミレーションができるツールがあればいいと思ったことが、『Re: Earth」の開発に繋がりました」(2024/08/27)と述べられています。
「誰でも、どこからでも、いつでも参加できる」
多様な立場の人々との協働のプロセスを随時に記録することができるプラットフォームがあれば、学び続けながら、それぞれの場所で動きながらつながりやすい。Kenyaさんがいう「全てを記述する」とは、技術的にも、「誰でも、どこからでも、いつでも参加できる」ことが前提となっているのかな、と思います。今後も、GISシリーズ、楽しみです。-Mugi
*起業家 田村賢哉|「考えられる市民の形成」が教育のあるべき姿|双葉町メッセンジャーインレジデンスレポート#4 2024年3月4 日 ・田村賢哉「位置情報をもとに情報を整理し不確実性を減らす『ジオイント』」2024/08/27 Mitsubishi Estate
· NO.556-2, NOV.19, 2021, 「世界一の地理学者になる!」 WITH KENYA, GISシリーズNO.8-1 NO.557, NOV.26, 2021, 地球の全てを記述できる、記述したい世界にする!「APLLO & RE:EARTH」WITH KENYA_GISシリーズNO.8-2・ NO.558-1,DEC.3, 2021, 記述することの政治性、 誰でも記述できる仕組みつくり WITH KENYA, GISシリーズNO.8-3
■マカロニえんぴつ「たましいの居場所」■竹原ピストル「RAIN」■平原綾香「Back to Life」