No. 763-2, Nov. 7, 2025, Interview with Danielle (1) UCIMCとは何か

UCIMC共同設立者、Danielle Chenowethさんへのインタビュー

今回のDanielleさんへのインタビューは、2025年10月28日(火)にDanielleさんのご自宅で80分間にわたってお話を伺いました。

現政権下においての危機感を反映した熱い議論

No. 763-1で紹介したUCIMCでのディスカッションでは、25日(土)には、「ファシズムが進行する中で、一人ひとりのルーツや体験を大切にした文化的組織をどのように作り出していくのか」を、文化的背景が異なるパネラーたちが語り合いました。26日(日)には、U-C内外から独立系プレス関係者が集まり、「AI(人工知能)が人々の暮らしに急速に入り込み企業や政治的な意図によって情報が操作される懸念や、こうした時代における独立系出版社や印刷媒体の意味」について議論されました。どちらもアメリカの現政権下における危機感を背景とした重要な議論です。

Urbana Champaign Independent Media Center 1F, 26 Oct. 2025

ローカルな文脈からUCIMCについて紹介してほしい

しかしながらMugikoは、この25周年記念のイベント全体をとおして、UCIMCの全体像や地域との関わりが捉えにくいという感想をもちました。そこでDanielleさんに、HSのリスナーにもわかるようにUrbana-Champaign Independent Media Centerとは何かを改めて説明してほしいとお願いしました。今週の番組では、DanielleさんとMugikoの英語の対話の最初の20分を短く区切りながらお届けし、その内容をRyutaさんに日本語でわかりやすく説明してもらいました。Podcastの英語と日本語をお聞きください。また下記では、Danielleさんのトークの内容をMugikoが日本語の文章に訳していきます。-Mugi

Part2, 「UCIMCとは何か」センターとは建物ではなく、「人」である

Danielle Chynowethさん宅にて@Urbana, 28 Oct. 2025

メディア、アート、テクノロジーを用いて社会変革をめざす活動の集まり

UCIMCとは、メディア、アート、テクノロジーを用いて社会変革をめざす社会正義のための一つの傘のようなもので、そこに多様なグループや「取り組み」が集まっています。UCIMCは2000年に設立されましたが、それ以前にU-Cには多くの社会運動グループが存在し、活発に活動していました。

地域の多様な社会運動グループの取り組み

同性愛者の権利擁護をめざす「85% Coalition」(イリノイ州の性的指向や性自認に基づく差別禁止を求める活動)、大学院生の労働組合「Graduate Employees Organization(GEO)」、社会主義の未来を議論する「Socialist Forum」、食料品の正当な地元供給を目指す「The Commmon Ground Food Cooperative」、また気候変動に対する懸念から、当時Urbanaにはなかった「自転車連用レーン」を作る活動など、それぞれの目的を掲げた様々な取り組みがありました。しかし、それらを結びつける場がありませんでした。

グローバルなインディメディア運動との関係

IMCは、1996年のサパティスタ(Zapatista *)の新自由主義に対する抵抗運動や、1999年にシアトルで行われた世界貿易機関(WTO)への抗議活動など、グローバルなインディ・メディア運動の影響を受けていますが、同時に既にあるローカルな社会活動の木々をつなぐ森づくりを試みたのです。WTOの抗議デモからU-Cに戻った人たちが集まり、様々なグループに呼びかけ、UCIMCを設立しました。当時、私たちをグローバルにつなぐ新しいテクノロジーとしてインターネットを使い、インデペンデント・メディア・ネットワークを作り出すことができたのです。

*「サパティスタ民族解放軍は1994年1月1日、チアパス州の貧困を訴えて武装蜂起した集団である。とはいえ武器を手にしたのは2日間のみで、その後はインターネットを通じてメッセージを発信し、世界の共感を得ることで政府に対抗してきた。そのため『インターネットを駆使した社会運動の先駆け』と言われている。」柴田修子「サパティスタ22年の歩み」日本貿易振興機構アジア経済研究所『ラテンアメリカレポート』33巻1号, p.41.

高価な機材を持ち寄り「メディア」の仕組み作り

最初の5年間、実際には2、3年は特に、「メディア作り」に重点を置きました。当時、機材はとても高価でした。一人ひとりが、マイク、レコーダー、コンピューターといった機材を持ち寄り、ライブラリーのように貸し出す仕組みを作りました。機材を揃えて質の高いレコーディングができるようになると、Free Speech Radio Newsや、Deep Dish TelevisionFree Speech TVと連携しました。私たちのWebsiteでPodcastを作成するだけでなくアメリカのIMC website、グローバルなIMC Websiteにもつないでいきました。

一人ひとりの物語こそがメディア、個人の体験を表現するアート

当初から地域の人々のストーリーを大切にしてきました。私たちは、物語(narrative)こそがメディアだと考えいます。アートやストーリーテリングは、ハードなジャーナリズムと切り離されるものではなく、私たちは暮らしの感覚、それぞれの経験の語りをとおしてつながっています。自分のトラウマ、性的暴行、ドメスティック・バイオレンスについての経験をいきなり路上で大声で叫び始めるのではなく、自身に起きたことをアートや語りという形で表現し始める。だからこそ私たちは、アートギャラリーや、音楽パフォーマンスのスペースも作りました。

Urbanaの郵便局建物への移転、「人」こそがUCIMC

ところがUCIMCに多く人々、活動が集まりすぎたため危険だとして市から閉鎖されてしまいます。そこで、より広い場所を求めて、Urbanaの郵便局の建物を買い取る計画を立て、(2005年に)現在の場所に移りました。UCIMCが何かと尋ねられると、この大きな建物と設備のことだと考える人もいるかもしれませんが、IMCは建物ではなく、「人」こそがIMCなのです。

小さな木々から森を作り出すネットワーク

実際のところ私たちは、さまざまなグループをつなぐネットワークであり、半自律的な多様なプロジェクトの集まりです。そこでは、メディアとアートを使い社会を変革しようとし、若者のために学校や職場以外のサードプレースを提供し、人が消費者としてだけでなく作り手になれる場所、人々、アーティスト、オーナイザー、労働者が集まり、それぞれが経験している問題を語り合い、そして、その解決法をデザインすることなどに関心を持っています。それがIMCです。小さな木々から森をつくる手助けできると考えています。-(抄訳Mugi)

Part3, エンゲージメントの梯子、パーマカルチャーのエッジの発想

UCIMCという傘のもと、どのようにして個人を巻き込みつなぐのか?

UCIMCはどんな利用者にとっても安全な開かれた場所であろうとしますが、何かを代表しているわけでも、そこでの活動が特定の取り組みに集約されるわけでもありません。そういう不定形な運動体であるからこそ、UCIMCの全体像は捉えにくい。では、どうやって多様な個人がこのUCIMCの活動に巻き込まれ、あるいは、UCIMCがこの地域の住民にアプローチするのでしょうか。Danielleさんに、この点を尋ねてみました。-Mugi

個人を巻き込む仕組みーエンゲージメントの梯子

個人や住民がUCIMCの様々なプロジェクトに関わり方の一つとして、ある種の「エンゲージメントの梯子(ladder of engagement)」という方法があります。最初のきっかけは、UCIMCで行われた音楽や演劇のパフォーマンス」を見に来たり、Maker Spaceで開催されているリペアカフェ(Repair Cafe)で携帯電話の修理を学ぶこと、あるいは、Book to Prisonersでのボランティア活動に参加することから始まるかもしれません。

” one of the designs of the IMC, as you’ve seen, is it’s kind of like you’re inside of snail shell. It’s like a spiral.” Danielle”

カタツムリの殻のようなスパイラル状の設計、好奇心を刺激

UCIMCに一歩入ると、カタツムリの螺旋状の殻の中みたいなものです。ある目的のためにUCIMCに来た際に、通りがけのWRFUスタジオでラジオ放送中だったり、ギャラリーではアフリカ系アメリカアートが展示されたり、Zine Libraryが目に入るかもしれません。そうすると、もともとの目的とは別に、ある人はZineって何だろうと関心を持ち始めるかもしれないし、ある時にはThe Bike Projectを発見するかもしれません。

パーマカルチャーのエッジ(境界)の概念

UCIMCは、「エッジ(Edges)」という「パーマカルチャー(Permaculture)*」の概念を使って設計されています。パーマカルチャーにおいてエッジは、多様な種、生態系は、2つの異なるゾーンが接する場所であり、たとえば、草地と水辺の間のエッジには、最も多様な人々が住んでいると考えます。これを応用して、IMCにはたくさんの「社会的エッジ(social edge)」が設計されており、人々はある目的で使用されているスペースからはみ出て、意図しなかったプロジェクトを知ったり、偶然にイベントを見かけ、あちらで大声で騒いでうるさいなあと思うこともあるかもしれません。そうした重なり合う境界を作ることによって、人々の好奇心を刺激しています。

*パーマカルチャーとは「1974年、タスマニア大学で教鞭をとっていたビル・モリソンが、同僚のデビット・ホームグレンと共に、permanent(永続性)とagriculture(農文化)という2つの言葉を持つメッセージを紡いだパーマカルチャーという新しい造語を創りだした。ビル・モリソンは、パーマカルチャーを『人間にとっての恒久的持続可能な環境をつくり出すためのデザイン体系』と定義している。」(p.59) 今堀洋子,2009「パーマカルチャー:デジャーデン・ゆかりさんの『ささやく樹』での実践からの学び」追手門学院大学オーストラリア研究所『オーストラリア研究紀要』第13号59-69.

UCIMC 1階、Libraryの後ろにステージ、右手奥にはアート展示、ホールなどが広がるが、固定した仕切りはない。30 Oct 2025

資本主義と現在のインターネットへの抵抗、予期せぬ繋がりを持つ空間の提供

IMCのデザインは、現代社会における資本主義や商業化されたインターネットへの抵抗でもあります。私たちがインターネットを使い始めた頃は、今よりオープンな空間でした。ところが今ではオンライン空間は、アルゴリズムによって企業がその個人が関心を持つ情報を送り続け、広告主を売り込むための空間と化しています。私たちが海を越えて連絡を取り合えるのもインターネットのおかげではありますが、戦略的に意識してネットを利用する必要があります。今、私たちが必要としているのは、想定しなかった出会いや繋がりを持てる空間であり、小さなグループ、たくさんの泡の外で個人がお互いを知ることができるスペースです。

社会をデザインするための学校、人間性の回復

この反ファシズムのプロジェクトは、人々が自分たちの問題を共に考えそのその解決、求める社会に対応をすべく「社会をデザインする」(The School for Designig a Society)*のアイディアから生まれたもので、多くの人々が集まり、会話し、考えるための広範な活動が展開するスペースとなりました。お互いに好奇心を持ち、優しく謙虚な交流をすることで、より人間らしく存在することができるのです。

*Rob Scott,  “Early History of the School for Designing a Society“, Public I, posted 07/07/2011

UCIMCは、人間を労働者ないしは消費者としてのみ扱う資本主義のプロジェクトとは根本的に異なります。私たちの価値を消費や生産に変えようとするシステムに捕らえられていますが、私たちはロボットではありません。真の幸福とは、どれだけお金を稼いだかではなく、豊かな人間関係やコミュニティから生まれるという価値観に基づいているのです。-抄訳Mugi

UCIMC地下1階 25 Oct 2025

社会的な境界は、豊さだけでなく、対立を生み出すこともあるのでは?

Danielleさんとの英語でのトークは 難しかったけれど、UCIMCがこうした概念に基づいて設計されていたのかと知ることができました。ただ、異なるものが接する境界領域において社会的な豊かさが生まれる可能性と同時に、その境界が対立や抗争を生み出すこともあるのではないか、と疑問も生まれました。来週のHSのトークでは、この点をDanielleさんに尋ねるところから始まります。-Mugi

◾️Wu-Tang Clan「A Better Tomorrow」◾️Nick Lowe「Peace, Love and Understanding

 

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