No. 765-2, Nov. 21, 2025, Interview with Danielle(3)Against AI Machine? 反ファシズムとArt

Danielleさんへのインタビュー(3)

UCIMCの共同設立者Danielleさんとのトークの3回目です(今週のトーク前半は、No. 765-1へ)。先週は、UCIMCはインターネットが地域にまだ普及していない時期に、ワイヤレス・メッシュネットワークを開発し、また行政・大学とも連携して地域のブロードバンド化の推進に貢献してきたというお話でした(HS No. 764)。そのUCIMCが、設立25周年イベントのパネルディスカッションで「Independent Presses Against the AI Machine」というテーマを扱っています(No. 763-1)。

なぜ、今、Against AI Machineなのか?

情報インフラの整備やテクノロジーの民主化を支援してきたDanielleさんたちが、なぜ現在のAI(人工知能)の普及に疑問を呈し、印刷による紙媒体の活動に注目するのか。今週のトークはそんな問いから始まります。Part2のDanielleさんの英語トークを、Part3でRyutaさんが日本語で解説しています。続いてPart4では、インタビューの最後に、Danielleさんが頻繁に使う「ファシズム」とは、どのような意味なのかを尋ねています。

Part2,  企業の利益優先とAIの危険性、人が織りなす無数の空間-Danielle

Part3, 技術開発の差別的側面、AIによるプロセスの切断-Ryuta & Mugi

インターネットは、本来は人間関係、コミュニケーションへの願い

インターネットとは、開発された当初は企業が主導したものではなく、「何10億という人々が互いにコミュニケーションをとりたい」という願いから生み出されました。有機的なインターネット(organic internet)とは、私たち自身の人間関係のことなのです。ところが企業は、その関係を企業側の利益と支配のために奪い取り、私たちを対立させようとします。

AIはアルゴリズムをとおして不平等を再生産

AIは道具としては有用な可能性がありますが、企業の利益に取り込まれると、ジャーナリスト、作家、アーティストといった文化の生産者に換わり、アルゴリズムを使用して、人種差別、性差別、同性愛嫌悪、階級主義といった既存の不平等を再生産し、悪化させています。今やインターネットはAIによって汚水溜め(cesspool)となっています。

優生学の歴史と情報操作とシリコンバレー

こうした状況に対抗するために、パネルディスカッションのテーマにAIを選び、独立系プレスの役割について考えました。その議論のなかで、Community Data ClinicDr. Anita Chan(UIUC教員)は、優生学の歴史を振り返りこうした差別やデータ操作は今に始まった事ではないと述べ、また将来シリコンバレーでは働く学生たちは、優生学に基づく(人種差別を含む)テクノロジーを求められていると指摘しています*。

*Anita Chan, Predatory Data: Eugenics in Big Tech and Our Fight for an Independent Future(2025) U. of California Press

Panel Discussion@ Independent Presses Against the AI Machine, UCIMC, Oct. 26, 2025

その技術は誰のためにあるのか

AI時代にメディアの民主主義をどう進めるのか。それはテクノロジーの問題ではなく、人々の問題です。テクノロジーそれ自体は本来は中立的なものです。重要なのは、その技術が誰のためにあるのか、民主主義のためなのか、それとも独裁体制や資本主義のためなのか、有限な地球資源を食い尽くすためなのかを考えることです。

オンラインとオフラインの空間をどう行き来するのか

今のアメリカでは、憎悪のイデオロギーがシリコンバレーの力と結びつき合体しています。ビックテックと独裁政権との結びつきは以前からありましたが、それがあまりにも露骨になっています。だからこそ、我々は自問しなければなりません。オンラインとオフラインの空間をどう行き来するのか。

インターネットと環境破壊、気候変動

また、AIを動かすデータセンターはエネルギー消費を激増させ、気候変動を加速させ、私たちの生活を脅かしています。25年前、UCIMCはプリングス缶のゴミを使って(カンテナ)インターネットを共有しましたが、今はインターネット自体が環境破壊に繋がっているという状況に直面しています。AIを支えるデータセンターが公共料金を倍増させ、人々が電力なしで冬を迎えることになる。

小規模なグループの小さな抵抗を多数広げる

今後に必要なのは、人による小さなスペースをたくさん、たくさん(many many small spaces of humanity)持つことです。小規模なグループでの小さな抵抗を多数広げていくことが重要です。例えば、何人かの人々が集まってZineを作り、それを家の玄関の小さな箱に入れて配るようなことかもしれません。

Part4, Global Fascismとは?ArtとLoves-Danielle、解説-Ryuta

Danielleさんへのインタビューの最後に尋ねました。あなたがいうファシズムとは何か。Danielleさんは、来年の春に出版予定のDanielle Chynoweth & Elizabeth Adams, REMAKING DEMOCRACY: HOW WE MAKE THE WORLDS WE WANT COMMON NOTIONSにふれ、こう説明しました。

ファシズム:国家権力と企業権力の融合、システム維持が人より重要

私がナチス・ドイツのホロコーストを生き延びた友人や恩師から受け継いだのは、ファシズムとは国家権力と企業権力が融合し、その構成員の維持よりもシステムを維持が重要になる状態です。体制はそのメンバーを犠牲にして維持されます。

民主主義制度が企業権力によって解体、現状分析と戦略

私たちが今ファシズムについて語るのは、目の前で民主主義制度が企業権力によって解体されようとしているからです。資本主義がグローバル化したように、ファシズムもグローバル化している。国民国家は、 そうした利害関係者に利用されている。私たちが今置かれている状況をしっかりと分析し、私たちを救う価値観と、私たち全員を高みへと導いてくれる戦略をもつ必要があります。

私たちが望む世界をどう作り出すかーLoveと「普遍的参加」

今この瞬間に必要なのは「愛をもって導く」ことです。隣人への愛、コミュニティへの愛、そして多民族・多様なジェンダーの民主主義という世界的なビジョンへの愛です。それを実現するための梃子は「普遍的参加(universal participation)」にあると私は考えます。民主主義の再構築、私たちが望む世界をどう創り出すのかという問いへの答えなのです。

アート:AIの画一的なイデオロギーに抗う独自性

私たちが書いた本は、この瞬間にどう参加するかという数多くの試みの一つにすぎません。どうすれば参加する力を再構築し、生活のあらゆる側面を企業に支配される状況から人生を取り戻せるのか。こうした状況においても、アートは実験と探究を可能にし、AIロボットを通じて画一的なイデオロギーに抗う独自性を生み出しうるものです。-抄訳 by Mugi

技術が白人・男性中心の社会で発展、例えばカメラ-Ryuta

Ryutaさんの日本語での解説で最初に述べられたように、Danielleさんは、テクノロジーそのものに反対しているわけではありません。Danielleさんが指摘しているように、技術そのもの中立的なものですが、それが白人中心・男性中心の社会で展開するなかで、人種差別的な側面を助長することが多々あります。Ryutaさんが例として挙げたカメラは、かつては白人が良く写るように作られていました。

AIとプロセスの切断-Mugi

Danielleさんのお話を聞いて、Mugikoが思い出したのは、1960年代末にLondon、Nottinghillで女性たちが始めた印刷所についての話です*。看護師だった二人の女性が、中古の大きな印刷機を購入し、街中で印刷所を始めます。すると、そこで自分たちの新聞を作るため、毎夜、人が集まり情報を寄せ合い、編集作業するようになります。印刷所は、機械が置かれているだけでなく、そこに仲間が集まって議論し作業をしながら新聞を作り配布するという営みを生み出す場でもあります。

AIは即座に回答を出し便利なものですが、人と人との協働の場やプロセスを私たちはいつの間に失っているのかもしれません。-Mugi

*西川麦子「1960年代、ノッティングヒルにおけるコミュニティアクションとしての印刷所ーNootting Hill Pressの『新しい運動』のかたち」『甲南大学紀要 文学編』173(2023)91-108

◼️Milky Chance「Indigo」◼️The Beatles「All you need is love

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