うっかり、忘れていました。Harukana Show、満5年
今週の放送でHarukana Showは262回、満5年、来週から6年めということを、放送日にすっかり忘れていました。UrbanaのWRFUのラジオ局にきて、そのスタジオから番組に参加できることが今でもとてもうれしく、それがなぜなのかなあ、と思います。
スタジオとインターネット
いつもは、日本のKyotoの自宅からgoogleのハングアウトを利用して、WRFUのスタジオとつなぎ番組に参加しています。番組開始直前に、ようやくアメリカのスタジオやSt. LouisのRyutaさんとつながり、打ち合わせをする十分な時間なく番組が始まります。スタジオから参加するときも私が出演者とおしゃべりをしてしまい、うっかり時間を忘れ、機材担当のTomさんに、「2 minutes」と言われたりします。
生放送の高揚感と息づかい
面白いのは、番組が始まった瞬間に自分のなかのスイッチが切り替わり、声が少しだけ高くなり話すテンポもわずかに早くなることです。そして出演者と話していると、聞いてみたいことが次々浮かんできます。こうした高揚感は、パソコンの画面をとおして相手と話すときも同じなのですが、スタジオで直接に話すときのほうが、互いの声が出てくる息づかいを体で感じることができ、無理なく話ができつい時間を忘れてしまいます。
間をとらえるタイミング
ラジオ番組のなかで、さまざまな人と出会い鍛えられるのは、間をとらえるタイミングのとり方です。(なかなかうまくいきませんが。)インターネットをとおして話すときは、私のパソコンの画面には話者の顔が写らないときもあり、スタジオにいる時以上に意識を音に集中します。時にはスタジオからの声が明瞭には聞こえないまま番組を進行する場合もあります。しばしば相手の声に、私の声をかぶせてしまいます。逆に、スタジオからの出演者は、Tomさんのパソコンに映る私の小さな顔が見えるとは限らず、スタジオに流れる私の声と話すことになり、不思議な気分だろうなあ思います。
ライブな話と出会う
生放送が楽しいのは、予想していなかった話が出てくることです。たとえば、今週の放送でTamakiさんが話したエッグハント(子供たちが庭などあちこちに隠されたイースターのエッグを探して自分の籠に入れていく)については、事前の打ち合わせにはありませんでした(Podcast No.262)。私は、幼い頃の誕生日に、大きなキャンディー缶のお菓子の摑み取りをして興奮したことを思い出していました。番組の翌日の土曜日、Champaignで、4歳くらいの子供が派手な籠に色とりどりの卵をいくつも入れて、お父さんと手をつないで歩いているのを見て、Tamakiさんの話に出会えてうれしくなりました。
生放送のストリーム配信
ストリーミングが始まり、低出力で地域限定のコミュニティラジオの生放送の声を、世界のいろいろな場所から聞くことができるようになるとは、Harukana Showを始めた5年前には考えもしなかったことです。これからも起きるだろう番組中の数々のハプニングも、そのまま発信され、公開されたアーカイブに残ることを想像すると、ストリーミングに参加することに戸惑いを感じています。しかし、今回の渡米で、スタジオから番組に参加し、ゲストを迎えたり、Tamakiさんと話して、ライブ放送を届けたいなあと思いました。毎回のかけがえのない時間、番組のなかで流れる音楽や声や息づかいが、リスナーの暮らしや関心や記憶の何かにふわっとふれることができたらいいなあと思います。
たくさんのコラボレーション
また、WRFUの集会に参加したり、他の番組を見学して、番組が自動的に配信されているわけではない、ということを改めて知りました。配信が始めるまでに1年以上、毎月のミィーティングで、手続きや料金について話し合いが行われていました。FCCへの申請だけでなく、音楽を含めた番組をストリーミングする場合には、複雑な手続きと料金が必要となります。その1つ1つを、WRFUやラジオ局が含まれるUrbana Champaign Independent Media Centerのメンバーが行ってきました。費用についても、特別な予算があるわけではなく、WRFUの会費でもまかなえず、ストリーム配信を始めたい!という個人が、初期費用を寄付しています。
ステップ・バイ・ステップ
ストリーミングの許可を得ても、自動的に配信が行われるわけではありません。機材のセッティング全ては、「誰か」がボランティアで行っています。配信が可能になったあとも、wrfu.netのサイトを作り、実際に配信しながら、2ヶ月をかけてサイトを少しずつ改良していきました。最初は、このサイトからストリーム配信を受信できるだけでした。それから、ストリーム配信の番組スケジュールと現在と次の放送予定を示す機能が加えられました。そして、過去の配信された放送の番組ごとの録音アーカイブができました(音楽を含む全番組が録音されていますが、音質はあまりよくありません)。
トライアル・アンド・エラー
配信が始まって3ヶ月たちましたが、まだまだテスト期間中です。とにかくやってみる。失敗を含めてそこから学び、改良していく。たとえば、ストリーム配信の音声は、話者のあくびの気配がわかるほどよく聞こえますが、その他に小さなぶーーーーーーんという雑音が入ることがあります。私も日本からWRFUの番組を聞いて、「番組の途中からストリーミングが始まった。雑音が大きすぎて話し声がよく聞こえなかった」と番組ホストにメールを送ることがあります。スタジオから番組を作っている人には、生放送のストリーミングが受信者にどのように届いているのかわかりません。受信者からのコメントを受け番組制作の状況を含めて番組担当者は、技術担当者へ連絡します。後日、技術担当者からWRFUのメンバーへ、humを改良するためにいろいろやってみて、改善はされたけれど完全には解決できない、といった報告が届きます。
ボランティアの心遣い
先週のWRFUのミィーティングで、「ストリーミ配信後の録音は、何時間後にwrfu,netにアップロードされますか。Harukana Showのその日の番組サイトにリンクをはりたいのですが」と尋ねました。私は、録音は自動的にアップされるものだと思っていました。技術担当者は、「う〜ん、よい質問だね」と言いました。というには、現在10番組が配信されていますが、彼が時間があるときまとめて、全番組のアーカイブを手動で更新しています。なので、何時間後、いつ、といったことは明言できません。しかし、今週のHarukana Showでは番組終了数時間後には、wrfu.netのなかのHarukana Showのアーカイブのページに録音がアップされていました。私からの質問への配慮を有り難く、申し訳なく思いました。
多くの人が、それぞれの気持ちと時間と労力と知恵と経験と技術と資金を出し合って、WRFUというコミュニティラジオが設立され、100フィートのタワーが建てられ、地域のいろいろな人が参加して手作りでひとつひとつの番組が作られています。ストリーム配信が始まったことによって、私は日本からHarukana Show以外のWRFUの番組を聞くことができるようになりました。番組を担当して5年がすぎ、WRFUというコミュニティラジオを再発見、どんなに通信技術が発達しても、身近なことに気づくことはいつでも難しい。