コミュニティラジオと地域連携〜DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)への取り組み

コミュニティラジオと地域との関わり

UrbanaにあるUC-IMCとWRFUに関わるようになって、ほぼ2年。疑問に思っていることがありました。コミュニティラジオとしてのWRFUは、どんなふうに地域と関わっているのだろうか。WRFUの1週間の番組表をみても、ローカル色が豊かな放送局、という印象を受けません。

しかし、今回のイリノイに滞在中に、こんなふうに、地域の活動、時事的な問題と、コミュニティラジオがリンクしているのか、と感じることがありました。たとえば、WRFUのTriple R(月曜夜9時から7時)。これは、スペイン語と英語の番組で、メキシコやチリなどからのアメリカへの移民が抱える問題を扱うトーク&音楽番組です。

DACA(Deferred Action for Childhood Arrival)

そこで話題として取り上げられていたのが、DACA(Deferred Action for Childhood Arrival)です。子供の頃にアメリカに入国した若者への国外強制退去を延期し、2年間の滞在資格を認める措置です。一定の条件を満たし、申請がある場合に限られます。オバマ大統領が2012年6月に発表し、8月15日から申請受付が始まりました。(内畠嗣雅「今、何が問題なのか〜DREAMers」SANKEI EXPRESS IZAβ 2012/8/23)

8月後半のMugioは、Urbana-ChampaingでDACAをめぐる地域の活動とWRFUの番組との関わりを追ってみました。

●8月13日(月)Triple R@WRFU, 7pm~チリのコミュニティラジオ

チリ出身のイリノイ大学院生のKaraが、この日のパーソナリティです。夏のあいだ帰国し、アメリカへ戻ったばかりのKaraが、チリのコミュニティラジオについて熱く語ります。スタジオ内にいる私に、ときどき、突然にマイクがまわってくるので、あわてます。

●8月14日(火)C-U Immigration Forum DACAに関する広報と支援活動@University YMCA

このTriple Rや、他のWRFUの番組のメンバーも関わっている活動が、C-U Immigration Forumです。Chamapign Urbanaで移民問題に取り組む複数の団体が情報交換をしながら、移民たちがおかれている状況を改善していこうとする取り組みです。WRFUのメンバーをとおしてお願いして、私も会議を見学させてもらいました。

議題の1つが、DACAについてです。U-C在住者のなかにも、不法滞在者やその子供たちが多数います。子供のなかには、自身が不法滞在であることさえ知らない場合もあります。この日の集会には、高校教員も参加していて、当事者の実情を説明していました。

DACAの該当者に適当な情報を伝えるために、申請希望者を支援していく説明、相談会を開催する。そのためのボランティアを募りDACAについての講習会を行う、その準備のための話し合いでした。広報はどうするのか。各団体のサイトやメーリングリストでも情報を伝えていきますが、誰かが、「ラジオでも流したら?」、と。会話はこんなふうに続きました。

「ラジオなら、WRFUの番組でも、DACAについて伝えることができるよ」「WRFUって?」「Urbanaにあるコミュニティラジオ局だよ」「へ〜、そこで番組を担当しているの?じゃあ、そこでも広報、お願いね」

WRFUは意外と知られていないんだ、と思いつつも、ラジオが情報伝達の手段として認識されていることが、印象的でした。

●8月16日(木)DACA についての説明会の見学 by Immigration Project @Bloomington

BloomingtonのImmigraion Projectによって、DACAの相談会が開催されるので、Immigration Forumのメンバーが見学へいくことになりました。私も、YMCAのExecutive DirectorのMikeさんの車に同行させてもらいました。教会で開催され、Immigration Projectの関係者が、英語とスペイン語でDACAについて資料を配付し説明。参加者は50人あまり、高校生くらいの若者も多く、1時間の説明と質疑応答のあとも、Immigration Projectの関係者たちを取り囲んで質問が続いていました。

BloomingtonからChmapignへ戻る車で、運転中のMikeさんにDACAについて気になることを尋ねてみました。「DACAは、申請者には一定期間の滞在資格をえることはできても、不法滞在しているその親や親戚たちに影響を及ぼさないだろうか。」「国外強制退去の期間が2年は延長されたとしても、その後はどうなるのか。今後、政権が変わり、政府の方針が変われば、DACA申請者が2年後、一斉、国外退去を迫られないだろうか」。今の段階では、誰も答えられない問いです。

8月20日(月)DACA関連のトーク、Triple R @WRFU 7pm〜9pm

この日の放送は、前半は、英語でDACAの内容と申請条件などを、US Citizenship and Immigration Serviceのサイトに掲載されているガイドの紹介です。Consideration of Deffered Action for Childhood Arrival Process,  US Citizenship and Immigration Service 行政からの文書を理解するのは、容易ではありません。番組のなかで、説明や疑問をはさみながら、一緒に読んでもらえれば、申請について知り、考えるきっかけになります。

番組の後半は、Immigration ForumからMauricioさんが出演。来週、8月29日(水)4時半から、Urbana Highschoolで開催されるDeferred Action Information for the Public eventについての案内をしました。高校が場所を提供し、Immigration Forumが主催、フォーラムに関わる諸団体がぞれぞれがもつネットワークにメールなどをとおして参加を呼びかける。そして、WRFUからも、トークをしながら、丁寧に情報を伝えていきます。

8月21日(火)DACA Volunteer Training@Parkland College 6.30pm~

Champaignでも、Immigration Forumが開催するDACA申請支援のボランティアにたいする説明会が始まり、第1回は、ChampaignのParlkand Universityが会場となりました。今回は、University YMCAのCommunity  Program DirectorのFranciscoが、30人ほどの参加者を前にPower Pointのスライドを見せながらボランティア希望者へ、DACAの内容、申請書類、手続きのプロセスなどを説明していきます。

説明会のあと、参加者にまぎれている私をみつけてFranciscoが話しかけてくれました。「GRCでのあたなのセッションに、僕も参加していたんだよ」と。こんなところで、つながるんだ。

8月27日(月)Deffered Action Volunteer Training@YMCA, 6.30pm~

第2回のボランティアトレーニングはYMCAで開催され、Mikeさんが基本的なプレゼンテーションを行い、より専門的な内容や質疑応答では、Immigration Forumに参加している弁護士が応えていきました。この日は、50人ほどが部屋ぎっしり、議論もよりつっこんだものになってきました。

DACA Volunteer Training@University YMCA, August27, 2012

会場からのコメントは、大きくは3つの内容でした。

1つは、DACAの申請書類についてです。申請者の立場によって、証明書類の種類も異なってきます。提出可能な書類が複数ある場合に、どれがもっとも適当か、など、質問もつきません。DACAの相談会には、弁護士も参加しているので、分からないことは、専門家に尋ねることができます。

2つめは、Securityの問題についての懸念です。DACA申請をとおして、最終的に不利になることはないのか。移民にたしいて、ポリスによる強引な尋問や不当なレポートが移民局に送られるといった事態があるなか、DACAという制度が、情報、管理、国と個人の安全と保障のために、どう利用されうるのか。

3つめは、DACAの説明、相談会についての実務的な質問です。当日の集合時刻、会場設営や、どのようにブースをわけ、ボランティアを配置するのか、など。

●8月29日(水)Deferred Action Information for the Public event@ Urbana High School, 4:30pm

以上のようなプロセスをへてボランティアを募り、トレーニングを行い、DACAについての説明、相談会が、Urbana High Shoolに場所を借りて行われることになります。私は、この日、日本へ帰国したので、残念ながら、実際の説明会の様子を見ていません。

さまざまなネットワークを実践に向けてつなぐ

それでも、緊急に対応を要する問題を、地域の関係者がどのように集まり情報交換をし、活動していくのか、その際に、コミュニティメディアが発信方法の1つとして利用される様子を垣間見る機会になりました。

法律や制度の専門家でないボランティの人たちが、自ら学びながら準備をすすめ、実践に向けて異なる組織のネットワークが具体的に動きだす。普段は、NPOの組織や人がゆるやかにつながりながら、必要なときはエネルギーを結集させていく。DACAをめぐる活動がどのように展開していくのか、Harukana Showでも、機会があれば、話題としてとりあげていきたいと思います。

 

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