栗原奈名子監督とのSpecial Talk
第77回のHarukana Showは、『A Grandpa from Brazil (ブラジルから来たおじいちゃん)』(2008)の栗原奈名子監督をお迎えしたSpecial Talkでした。インタビューは、2012年9月13日、京都で行いました。9月14日の放送では、Skypeの接続不良など、お聞き苦しい箇所があり、申し訳ありませんでした。Podcastで、栗原さんのトークを、たっぷりとお楽しみいただければと思います。
A Grandpa from Brazil
『A Grandpa from Brazil』は、1931年に日本からブラジルへ渡った紺野堅一さんの人生と日本への旅を追ったドキュメンタリーです。映像は、紺野さんの個人の人生と人とのつながりをとおして、日本とブラジルやその時々の世界の政治や経済状況、移民の歴史にもふれています。(Study Guide)
栗原さんのトークは、2部構成になっています。前半は、『A Grandpa from Brazil』をめぐって、後半は、長年ニューヨークに住み、その後、日本に拠点を移した栗原さんにとっての現在の日本やそこでの活動について話が展開します。
トーク前半:HS Podcast No.77-1, September14,2012 (18m20s)
トーク後半:HS Podcast No.77-2, September14, 2012 (19m47s)
紺野さんの距離感のやさしさ
『A Grandpa from Brazil』のなかの紺野さんは、いつも誰かと話しています。相手を包み込むように見つめ、状況をやさしく受けとめる言葉を返しながらも、相手を「リスペクトする距離感」に、監督の栗原さん自身がひきこまれ、励まされます。紺野さんの人生がどれほど厳しいものであったか、だからこそ、今の紺野さんがある。そこから学びたい、伝えたい、栗原さんのトークからも、そんな想いが伝わってきます。
映画が旅して問いを重ねる
ブラジルでこの映画が上映されたとき、監督が予想していない場面で“爆笑”が生じます。アメリカでの上映会では、日本では、「第2言語としての日本語教育」がどのようになされているのか、という質問が出ます。日本での上映会では、日系ブラジル人のなかには、日本からブラジルへ向かった紺野さんの姿が自分と重なります。移民の歴史について知る機会がなかった、考えるきっかけになった、とこの映画に感想が寄せられます。
栗原さんのお話を伺っていると、映画が移動しながら、立場が異なるさまざまな人々に問いを重ね引き出していく、場を作り出していることがわかります。
インディペンデント・メディア〜多様性を尊重する、つなぐ
トークの後半では、栗原さんは、インディペンデント・メディアについても語っています。日本でもアメリカでも、お金や力はより大きなものに集まっていく傾向にあります。メインストリームにたいして、独立した活動を始めること、続けることは容易ではありません。栗原さんが暮らしてきたニューヨークは、さまざまな意味で厳しい環境ではありますが、異なる視点、多様性を尊重する気風と、次へとつなげていく仕組みがありました。日本ではどうだろうか?
人をつなぐ場をつくる
栗原さんは日本でも、人と人が出会う場づくりをすすめています。たとえば、パーカッションなどのパフォーマンスをとおして、言葉をこえて人がゆきかう、ふれあう場を生み出す。音楽やグラフィティなどのアートがコラボして地域を照らし面白いわ〜とつながっていく。そんなことができたらいいな、と栗原さんの視線は、これからへと向かっています。
Urbanaでの『A Grandpa from Brazil』のアンコール上映会は、9月20日(木)Urbana Free Libraryで7時から、無料です。また、AEMSのAsia LENSの秋の映画上映は、これからも続きます。詳細は、AEMSのサイトへ。