No.548-2, Sept.24, 2021, 「京うちわなお話」独立編 with 蜂屋うちわ職店

「京うちわなお話」、いよいよ、独立編

蜂屋さんの「京うちわなお話」基本編(No. 547-2)、修行編(No.547-3)に続き、いよいよ独立編です。HachiyaさんとRyutaさんとMugikoとのトークは、8月20日に収録しました。Podcastを聞いても、Hachiyaさんが書いてくださったエッセイを読んでも、ワクワクします。今週のトークの始まりは、No.547-1に掲載しています。

Part2, 平成のうちに独立!「蜂屋うちわ職店」の特徴、これから  with Hachiya

Part3, うちわの発注と流通、「うちわ物語」伊勢真一監督への1本 with Hachiya

独立につい

蜂屋は21歳で京うちわの世界に入りましたが、当初から「30歳までには自分の店を持ちたい」とは考えていました。というのも、どこかで無理矢理締め切りを作らないと自分はいつまでも動き出さないなと薄々感じていたからです。そして修行を始めて数年経ち、独立を少しずつ意識し始めたそんな折に、どうやら2019年の5月から新元号に変わることを知りました。それを聞いた平成2年生まれの蜂屋は「よっしゃ平成生まれのわしは、平成のうちにいっちょ事を起こしちゃる」と一念発起。その後およそ半年間の準備期間を経てなんとか「蜂屋うちわ職店」をオープンさせたのが令和へと変わる4日前の2019年4月27日、蜂屋が28歳のときでした。

蜂屋うちわ職店につい

蜂屋うちわ職店は京都の街中からは少し東に外れた鹿ヶ谷というエリアに位置しています。有名どころで言えば銀閣寺と南禅寺のそのちょうど中間地点となり、近くには哲学の道とそれに沿う疏水があり静かでゆったりと過ごせる場所です。それでいて春と秋はそれぞれの界隈にある桜や紅葉を目当てに、多くの観光客が訪れ賑わう場所でもあります。

そのようになかなか良い場所に構えている蜂屋うちわ職店ですが、実は通り抜けできない(つまりそこの住民しか入らない)路地の一番奥で営業をしています。観光の方が偶然通る場所ではまずありません。近く哲学の道沿いに置いている看板に目が留まり、なおかつそれに興味を持った人がそこから1分歩いてようやく辿り着きます。そして靴を脱いで店へ上がるストロングスタイルなので、はっきり言って物好きな方しか店へ入ってきません(もちろんMugikoさんもその一人です)。ですがそのような方々とお話しさせていただくと、これが例外なく面白いんです。なのでこのスタイルは今後も継続していくつもりです。

そして蜂屋うちわ職店ではいつも蜂屋が何かしら作業をしています(たまにサボってますが…)。 そのため訪れた方はうちわ自体はもとより、実際にうちわ作りの作業工程を見たり使っている道具について説明を聞くことができます。単にうちわを並べて売るのではなく、どのような方法・どのくらい手間暇をかけて作られているかを知っていただくことも大切な要素となるので、それを伝えるために作り手である蜂屋とお客さんが近い距離でコミュニケーションを取れる店でありたいと以前から感じていたためです。なのでその考えに近いような営業形態ができている現在を嬉しく思います(どうやって訪れる人を呼ぶのかの課題も残りますが…)。

コロナ禍になる前は海外からのお客さんのちらほらあったので、例えば偶然訪れた中国人の女の子2人と翻訳アプリ片手に1時間話し込むなんてこともあり、それはそれで楽しい時間でした。現在のような移動を自粛するような状況が明け、また色々な方と関わえる日を今から待ち遠しく思います。

蜂屋うちわの特

蜂屋うちわ職店に並ぶうちわには基本的な和紙以外にも、日本の古い着物の生地やインド・パキスタンの伝統的な生地など様々な素材が用いられています。これは蜂屋が個人的に色々な布に興味があったという部分も大きく、ほぼほぼ独学で布を用いたうちわの仕立てを習得したためです(案外あっさり作れました) 。その結果としてお客さんの持つ布をお預かりしてうちわの仕立てができるようになり、請け負える仕事の幅が広がったことは良かったなと感じています。ちなみに今現在においての蜂屋はここに来て和紙の素材としての魅力を強く再認識し、改めて和紙について深く掘り下げ知識を付けたいと思っているところです。

また当店では、手持ちの紙や布や作品などを持ち込んで1枚から自分のうちわを仕立てることができます。従来のような作り手とお客さんに距離がある形態だとこのようなことをするのにもハードルがあったと思いますが、そのハードルをなるだけ下げ、作り手である蜂屋とお客さんが一緒になって物づくりを行える店にしたかったというのが理由です。結果として少なくない方々からの仕立てを請け負い喜んでいただくことができ嬉しく思います。また蜂屋と比べてよりアーティステックに活動されている作家やデザイナーの方々との交流も生まれ、良い刺激やフィードバックをもらえています。

蜂屋うちわの今

【ハード面】

・うちわの量産数を増やすべく加工道具の改良・新設

→うちわに用いる竹をもっと効率良く、そして良い仕上がりで作ることができたらうちわの量産数も増やすことができます。その状況になってようやく「当店ではこんなことができますよ」と世間に向けて積極的に情報を発信し、請け負う数を増やせるようになるのかなと思っています。(なので現在は正直言うと情報を発信することも意識的に少し控えている状況です。今後に期待。)

うちわに用いる和紙への加工・装飾技法の習得

→和紙を染めたり模様を付ける多くの技法に興味があり、「あれできるかな?この技法はどうだろう」と試してみたいことばかり溜まっているのが今の状況です。これから少しずつそれらの技法を試していき、より美しいうちわ作りへと繋げられるようにできたら何よりです。

うちわの技法を応用したプロダクトの制作

→詳細はまた伏せておきますが、うちわ制作における素材や技法を応用したアイテムを制作・販売したいと考えています。現段階ではまだ試作の試作といったレベルですが、こちらも今後は面白くなる予感。今から楽しみです。

【ソフト面】

・ウェブサイトとオンラインショップの立ち上げ

→どちらもいまだに立ち上げられていない状況です(ハード面での設備改善を第一で進めているので…)。何かと凝り性なので、きっとプログラミングからやるんだろうな…絶対時間かかるんだろうな…と今から確信しています。でもwebデザインなど興味がある分野でもあるので楽しみでもあります。来春には立ち上げたい!

最後

この度は2週にわたり「うちわなお話」をさせていただく良い機会となり感謝しております。普段の生活でうちわ職人と関わることはまずないと思うので、そういった意味ではこんな世界があるんだということを少しはお伝えできたかなと思います。蜂屋側のマイクの調子が今ひとつで、つられるように喋りもグダグダになってしまったことは大いに反省しています(本当に…!)。もし今後またお話しさせていただく機会があればマイクはしっかり改善し(新調します!)、より一歩踏み込んだディープな「うちわなお話」ができたらそれはそれで面白いのかなと思っています。その時はまたよろしくお願い致します。

それでは! -Hachiya

蜂屋うちわ物語ー「埴生の宿」うちわ, Mugiko

伊勢真一監督『やさしくなあに〜奈緒ちゃんと家族の35年〜』(2017年)の英語タイトルが、”Home, Sweet Home”。もともとは、イングランドの民謡で、日本では「埴生の宿」というタイトルがついています。この映画が、2019年3月のミズーリ州ColumbiaのTrue/False Film Festで招待上映された時に、Harukana Showでは伊勢監督に、お話を伺いました(HS Podcast No.414, No.423, No.424-2)。

Mugikは、この「埴生の宿」をデザインした古い布の切れ端を、Kyotoの古裂屋さんで偶然、見つけました。面白い柄だなあと思ってつい購入。でも使いようがなくしまっていました。昨年、「蜂屋うちわ職店」と出会い、この端切れがなんと、「京うちわ」になりました。初夏の頃、伊勢監督にお送りしました。すぐに手書きのお手紙が届きました。

東京は、繰り返し非常事態宣言が発出され、映画上映会の開催もなかなか難しい。「太宰治の小説に、気に入った浴衣が届いたから夏まで生きていよう、というくだりがある、そんな気分です」とつづられていました。そして、伊勢監督の最新作『いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム』についても記されていました。来月も、日本各地で上映が予定されています。

その人に届けたい世界に一つの京うちわ、蜂屋うちわの魅力にはまっています。Mugiko

*読売新聞オンライン21-09-1o「戦時中、ジャワで日本のプロパガンダ映画制作…父の足跡たどったドキュメンタリー完成」読売新聞オンライン21-09-1o

■mabanua「Scent 」■Nulbarich 「TOKYO」 ■サニーデイ・サービス「愛し合い 感じ合い 眠り合う

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