時差ボケのまま、フィールドワークの日々
今回のアメリカ滞在は、体調も整えながらゆっくりと動き始めようと思っていました。ところが、「あなたの研究テーマなら、この人に会うといいわよ」「来週のこのイベントは、絶対気にいると思います。お見逃しなく」「もうそろそろ、こちらに来ているんじゃないの?私たちの活動、落ち着いたら見に来てね」といったメールが次々と届き、この2週間は、時差ボケの睡魔に襲われながらも、たちまちフィールドワークの日々です。このブログにも、印象に残ったことを記してゆきます。
Welcome Awardsとは?
2018年9月14日から23日まで、Welocomoing Weekにちなんだ様々なイベントがChampaign Urbanaでも行われていました(詳細)。Welocoming Weekというのは、2009年に設立されたWelcoming Americaが始めた全米各地で開催されているアメリカへの移民を歓迎する行事です。
地域の図書館で授賞式
9月22日(土)には、Urbana Free Libraryで5th Annual Welcome Awards Ceremony & Celebrationが行われました。Champaign-Urbanaにおいて移民をめぐる活動に貢献した団体や個人を、コミュニティ、ビジネス、学生部門などに分けて表彰する催しです(詳細)。C-U Immigration Forumが主催し、The Urbana Free Library, University YMCA New American Welcome Center, the Channing Murray Foundation&CYFIR, the City of Champaign, the City of Urbanaなどの行政や団体が共催しています。
移民フォーラムのネットワーク作りとアクション
この賞の主催者であるCU Immigration Forumは、Champaign Urbanaに拠点を置く、移民に関わる諸団体が集まる連絡協議会です。2009年12月から月1回の定期的な集会を開き、多様な個人や団体が情報交換しながらつながり、その時々の情勢や問題に対応できるネットワークを築き、アクションを起こしてきました。(CU Immigration Forum:草の根の意味, April 10, 2017)
コミュニティメディアを活用
WRFUでも、月曜日7pm-8pmにC-U Immigration Forum(CUIF)のラジオ番組を放送しています。また同時に番組の様子を動画に収録し、Urbana Public TV(CPTV)でも、放映しています。8年前に、WRFUの集会を見学に来た私に、「日本語ラジオ番組を始めてみたら」と声をかけてくれたのは、同ラジオ局でスペイン語の番組を担当していたCUIFのメンバーたちでした。私が、Harukana Showを始める時に、機材担当を引き受けてくれたのが、現在CUIFの代表を務めるTomです。
ローカルな場所からCUIFをとおして移民問題とアメリカに触れる
そうした縁から、この8年間、渡米する際には、CU Immigration Forumの集会やイベントにもできるだけ参加してきました。オバマ前大統領からトランプ現大統領への政権交代を含む政治的状況の大きな変化を、アメリカの移民問題をとおして、ローカルな場所から見る、私にとっては貴重な機会となっています。今回のWelocom Awardsの表彰式も、2日前の打ち合わせの会議を含めて、見学させてもらいました。
行政が共催とは?
表彰式の当日は、Urbana Free LibraryのCarolが全体の進行を担当し、CU Immmigration ForumのTomとYMCAのGloriaが選考理由と表彰の説明などを行いました。表彰式の始まりには、City of Champaignの市長が挨拶をしました。また、City of Urbanaは、2016年12月にSanctuary City宣言を採択しています(HS Podcast No.315, March31, 2017)。移民受け入れや多文化共生には前向きな地域において、移民を歓迎するこの賞や行事は、行政主導で始まったのだろうか。CUIFが主催、行政が共催とはどのような意味なのか、Tomに尋ねてみました。
CU Immigrationのアイディアとネットワークから生まれた賞
Tom「Welocome Awardsは、CU Immigration Forumが始めたんだ。移民問題について、批判や抗議ばかりでなく、称え合う機会があればいいなと考えて、僕ががCUIFに提案してみた。Welcoming Weekの合わせて、賞を作ろうよ、って。CUIFは、さまざまな個人や団体が関わっているので、推薦や情報も集まりやすい。賞を創設して何年か後に、UrbanaとChampaignの両市から、共催にしましょうと働きかけがあった。図書館もこうして場所を無料で提供してくれ、地方のテレビ局や新聞などでも報道されて、この賞が、知られるようになってきたんだ」
草の根の賞に行政が関心
Tomの話を聞きながら、草の根の活動と地域のネットワークの中で生まれた賞が、行政を動かしていくという流れが面白いなと思いました。仮に、市が移民を歓迎する賞を創設しようとすると、政治的にも多様な立場の意見を調整する必要があり、また、様々な背景がある移民とそれをめぐる活動について行政が広く情報を得て、受賞者を選考するのは容易ではありません。しかし、CU Immigration Forumが創設した賞に市が協賛することで、授与式などにかかる費用の一部を負担することにはなりますが、選考までのプロセスはCUIFを中心とした選考委員会に任せ、移民受け入れや多文化共生へ前向きであるという市の立場は表明することができます。
日々の暮らしの中の少し特別な地域のイベント
Welcome Awardsという「草の根の賞」が回を重ね、地方の行政がこれにある意味では便乗し、またアメリカという国の政府の方針が移民についての政策を大きく転換しようとするなかで、この賞はさらなる意味をもち、報道され、全国的な動きとも連携していく。そのような賞の展開はあっても、9月22日に地域の図書館で行われた授賞式は、80名ほどの参加者の多くは普段着で日々の暮らしのなかでの少し特別な集まり、という印象を受けました。
賞を支える人々の手作りの工夫
授賞式の2日前の準備の集まりでは、当日の会場の椅子や地方テレビ局のカメラの配置や時間配分やイベントの進行方法について打ち合わせが行われました。限られた時間の中で7名の表彰とスピーチを滞りなく行うにはどうしたらいいだろうか。昨年は、表彰、スピーチ、撮影が終わるのを待って次の受賞者の表彰をしていたけれど、今年は、受賞者の紹介と表彰をする人を2名にして、一人の表彰とスピーチが終わると横に移動してもらい写真撮影を行い、その間に、次の受賞者の紹介を始めるようにすればいいんじゃないか。そんな具体的な話し合いがされていました。
賞をめぐる状況にはいろいろな展開はあっても、主催者やイベントを作る人たちが、受賞者にも参加者にもいい時間を過ごしてもらえるように、毎回、手作りの工夫をしているのだと思います。そんな裏方の活動の一部を見学させてもらえて有り難かったです。(このブログを書いて後、10月2日のUC Immgiration Forumの集会に出席しました。今年の授賞式は、進行ばかりに気を取られていて、会場とのやりとりや全体としての一体感がなかったなあ、来年は、参加者どうしが打ち解けて話せるような工夫をしてみよう、とふりかえりをしていました。)
詳細は、CU Immigration Forumのコミュニティラジオ番組とUPTVで
授賞式の後の9月24日月曜日のCU Immigration Forumのラジオ番組とUPTVの収録では、Welcome Awardsの賞について話をしてくださいとTomにリクエストして、ラジオ局のスタジオに見学にゆきました。ところが、スタジオのソファーに座って番組の始まりを聞いているうちに、時差ボケの睡魔に襲われ目を覚ましたら番組がほぼ終了していました。後日、WRFUアーカイブ(2018-9-24 1900.mp3)とYoutubeに公開されたUPTVの番組(CU Immigration Forum-episode#170)を後から視聴して、なるほどと復習した次第です。誰でもアクセスできますのでご覧ください。