No.601-2, Sept. 30, 2022, ライブラリーでTRPG & VRも(後半) with Takakuraさん

ライブラリーでボードゲーム、TRPG、そしてVRも(まとめ by Ryuta)

今週はゲーム司書Takakuraさんとのトークの後半です(前半はNo.600へ)。今回は、ボードゲーム以外の取り組みについての話も伺いました。(今回の番組Part1はNo.601-1にあります。)

Part2, 文化体験としてのゲーム、TRPG「自分が知らない自分に出会える」

Part3, 図書館とVR、情報、体験機会の格差を縮める

「見える風景」が変わる

まずは、図書館でゲームと本をつなげることで「見える風景」が変わる事例をTakakuraさんに2つ紹介していただきました。ひとつはアナログゲームで、『グリッズルド』 という、第一次世界大戦の戦場を生き延びる協力型ゲームがあります。Takakuraさんは、ここを入り口に、『戦争は女の顔をしていない』(原作はノーベル文学賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著のノンフィクション。日本で漫画版が出ている) や、バンドデシネ (フランスの漫画)『汚れた戦争』を紹介するそうです。これらを読んでゲームに戻ると、ゲームの背景をよりよく理解して、あたかも戦場を自分ごととして体験するかのようなゲーム経験になるということでした。

もうひとつの事例は元寇をモチーフにしたデジタルゲーム『Ghost of Tsushima』(トレイラー) で、 ゲームをプレイしながら、元寇研究の専門家に場面や画面を解説してもらう企画を福岡市総合図書館でされたそうです。(「図書館×ゲーム」活動報告日誌: 2022-08-24 “ゲームで知る歴史~ Ghost of Tsushimaと蒙古襲来~”の動画を公開して頂きました)

ボードゲームに使うタイル、カード、コマなどの一例 (Forbidden Islandという協力型ゲーム)

「自分の知らない自分に会える」

これに関連して、『グリッズルド』のようなボードゲームや、あるいは、自分が物語世界の中でキャラクターを演じるTRPG (テーブルトップ/テーブルトーク・ロールプレイングゲーム) は、ゲーム内のできごとを「自分ごと」として経験しつつ、他者とコミュニケーションをとりながらプレイしていくので、自分の内面や、自分でも知らなかった自分と出会ってしまうことがあるのでは? そのようなときの精神面のケアは? という質問がMugikoさんからありました。

Takakuraさんによれば、ボードゲームはわりとゲームシステムにより没入感が制御されているところがありますが、TRPGはプレイスタイルが様々で、キャラクターに入り込みすぎることはたしかにあるそうで、イベント時には、そうなりそうになったら現実世界に引き戻すような機会を作るなど、気をつけているとのことでした。一方で、ゲームを通じて「自分の知らない自分」に会えたり、他人の知らなかった側面を知れたりすることには新鮮さもありそうです。

体験機会の格差の解消

TRPGは複数人でプレイする会話型ゲームなので、伝統的に、コンベンションと呼ばれる有志による大人数イベントも催されてきました。ただ、こうしたイベントは、やはり大都市に集中することが多く、また、中高生ぐらいだと、親を説得しないといけない、参加する資金がない、など、参加への障壁も色々とあります。なので、公共図書館や学校図書館で経験できるのは、とてもよいことだと思います。(Urbana Free Libraryでも小規模なComic Conが開催されていたことがありますが、これも、似たような理由で企画された側面がありそうです。)

またTakakuraさんは、図書館のVR(Virtual Reality)イベントも似たような動機で企画されているようです。VRも、パワフルなコンピューターやヘッドセットなど、特別な機器が必要なので、地域間の情報格差が大きく、地方だとイベントがない、周囲のユーザー数が少ないといった理由から、メディアやYouTubeを通して存在を知っていても体験できずに終わってしまうことが多くあります。TRPGやボードゲームでも、VRでも、経験することで、将来進む道の選択肢のひとつになれば、という思いもあるようです。

TRPGでゲーム内の判定に使うダイス (サイコロ)

VRと本をつなげる

Takakuraさんは、図書館でVRイベントを開催する際は、イベントと関連させたブックトークや展示を通して体験と本をつなげるようにもしているとのことです。VR世界では自分は3Dモデルのアバター (分身) となって活動するので (VRに限らず、いわゆる「バーチャルYouTuber」として動画を作る際などもそうですが)、自身の身体的外見の変容と行動の変化、といった内容を扱ったこころと体の心理学』などを紹介することがあるということでした。

VR美術館見学会でRyutaが中継に使用した右側のキャラクターも3Dアバターの一種

図書館とVR

VRに関しては、「役に立つ立たないは後でわかるので、今はとりあえず体験してほしい」という思いもあり、イベントとしてはゲームコンテンツやVRゴーグルのチュートリアルを体験してもらうことが多いそうです。一方で、将来的には、リアルで図書館に来れない人がVRでイベント参加や図書館利用できるようになるといいなとも思っているとのことでした。

市町村立図書館には、図書館から離れた場所や交通の不便な場所に出向いて貸出や図書館サービスを行うための移動図書館車 (ブックモービル) を持っているところもあります。巡回するときにVRゴーグルも搭載していき、VRワールドとして作った図書館本館を体験してもらう、というようなことが実現したら、ブックモービルの機能の向上につながるかもしれないですね。

Harukana ShowとVR

他にもMugikoさんとRyutaの間では、番組前後の雑談などで、バーチャルzineライブラリー (WRFUスタジオのあるIMCには物理的なzine図書館があるので) や、バーチャルラジオスタジオ (Harukana Showは、元々、世界各地をビデオチャットでつないで番組制作しているので、VRワールド内で収録してもいいのでは……) を夢想した会話をわりとよくしたりしています。これらも技術的にはまだ少し難しいかもしれないですが、実現したら面白そうですよね。- Ryuta

Takakuraさんのお話は、ゲームをとおして自分が未知の世界に引き込まれそうで少し怖くて、ワクワクしました。TRPGが一定のルールと世界観にそって、参加者が一緒に物語りをつくっていくように、Harukana Showも、その日の番組参加者によって、トークがどんなふうに展開するかはわからない。グループダイナミックスの面白さという点では、似ているかも、と思いました。-Mugi

■Malo (feat. 初音ミク) 「ハジメテノオト」■フレデリック「オドループ

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