春の散歩日和@Champaign
Urbana Champaignは、今週は最高気温が28℃まで上がっています。Satomiさんからお便りいただきました。
「先週末からこちらは春らしい天気が続いています。芝生も日に日に緑になりつつあります。水仙の花が綺麗です。外を歩くのがとても心地よい季節です。来月のハーブセール(C-U Herb Society 2023 Herb Sale, May 13, 2023)の宣伝等で忙しくしています。」
今週の番組収録は、4月13日、MugikoはKyotoから、RyutaさんはShizuokaから参加しました。新年度が始まり、KyotoからOsaka行きの電車が、コロナ前に戻ったかのように混み合っています。Part1 は Satomiさんからのお便りとイベント情報、Part2 &3 は、Yutaさんが語る「緑の流域治水」プロジェクト第2話です。
Part1, Satomiさんからの春便り、イベント情報
■ Nikkeijin Illinois, 2/19/2023-12/10/2023@Spurlock Museum of World Cultures
「大学キャンパス内のSpurlock Museumで催されている日系米国人のプログラムのことをお知らせします。現在、博物館内で(10人ぐらいの)イリノイ州に関わる日系米国人が第二次世界大戦の際にどこにいて、どのような状況で過ごしていたかといったテーマで展示されています。」Satomi
■Boneyard Art Festival , April 14- 16
Champaign Countyの90以上のスペースで地元アーティストの作品展示やイベントが開催されています。アーティストの作品だけでなく、それがどんなスペースに展示されるのか場所とのコラボも楽しめます。
球磨川の「緑の流域治水」(2)5つの課題とスタディツアー with Yuta
Yutaさんは、2022年4月より信州大学農学部の研究員をされています。これまで、アメリカと日本でランドスケープデザイナーとしてお仕事をされてきましたが、熊本県の球磨川流域治水に関するプロジェクトと関わったことから、大学に勤務することになりました。
令和2年7月夏豪雨の被害を受け、「10年後の球磨川流域を見据えた持続可能な地域構築のための『緑の流域治水』」が始まりました。前回のトークではYutaさんに、プロジェクトの5つの課題について概要を伺いました。今回は、各課題に関して具体的な活動事例をあげて説明してもらいました(HS No. 628)。さらに、Yutaさんが関わる課題4「サステナブルな産業創生」を中心に文章にもまとめていただきました。5つの課題が相互に連携しながらプロジェクトが展開していく様子が伝わってきます。-Mugi
Part2, 地理と気候、洪水体験、地域計画、最新の通信技術とコミュニティ
part3, 地域内循環、地域連携のテークホルダー、雨庭パートナーシップ
スタディツアーについて
研究チーム課題4(「緑の流域治水」と連動したサスティナブルナ産業創生)では、流域治水の現場を視察するスタディツアーを企画しています。全課題が取り組む緑の流域治水に関わる場所を視察するツアーです。視察先は、例えばチーム課題3(デジタル技術を活用した「緑の流域治水」のスマート化と地域DXの実現)が取り組む市民参加型のIoTシステムの現場や、チーム課題2(ボトムアップ型統合計画と環境再生)が取り組む“もたせ”と呼ばれる湿地の再生現場などです。
市民参加型のIoTシステム
市民参加型のIoTシステムとは、市民のみなさんと話し合い、流域治水のモニタリングシステムを構築するものです。河川の水位を確認できるカメラの設置位置やカメラや水位センサーの利活用を市民のみなさんと話し合いながら進めています。カメラの映像はこちら。このカメラは、土地所有者の方の協力を得て設置しており、遠隔で河川水位を確認することができます。以下の写真の雨樋の上に小さなカメラがありますが、安価で、市民のみなさんにでも簡単に設置ができるようにインストラクションしています。
“もたせ“(迫湿地)
もう一つの代表的なスタディツアーでの視察先は、“もたせ”と呼ばれる迫湿地です。“もたせ”とは、水が下流へ行く時間をもたせるから“もたせ”と言います。時間を保つ、水を保つ、というところから来ているそうです。ちなみに“迫”とは、九州地方や山口県の一部で使われる言葉で、山あいの入り組んだ谷地のことを指します。
治水効果と生物多様性を高める
人吉球磨地域では、このような迫に貴重な生物や植物が残る湿地が残っており、生態学的にも、治水効果的にも重要な場所になります。しかしながら、迫につくられていた田んぼが放棄され本来の生態系サービスと“もたせ”効果を最大化できていない場所も残っています。そこを再生させて治水効果と生物多様性を高めるプロジェクトをチーム課題2が中心になって取り組んでいます。
村と研究チームと企業の協働
相良村のとある迫湿地は、もともと稲作をしていた場所が耕作放棄地になっていたところを村が管理していました。しかし少ない予算で村が管理していたところに、私たちの研究チームが入り企業も巻き込むことで、多くの予算で再生活動ができるようになりました。これから治水効果を高めるための工夫を施して整備していく予定です。
「緑の流域治水」を身近に理解、他地域へも普及
他にもいくつかの場所を視察して6か所前後を1泊2日で回る行程を予定しています。まだ公開はされていませんが、今年度内に多くの人が参加できるツアーになるように準備をしています。ツアー内容に関しては現在、研究段階で今後変更する可能性がありますが、緑の流域治水を学ぶコンテンツとして、雨庭、迫湿地、市民参加型IoTなどがある、と捉えていただければ幸いです。ツアーでは「緑の流域治水」の考えを他地域へ普及するだけではなく、地域経済への貢献や、地元の人が自ら案内できるようにしています。水が生活に密接に関わっていることはもちろん「緑の流域治水」も身近であることを理解してもらうことも目的にしています。
住まうことの魅力、経済的な持続可能性
地域に人が集うようにするには、ツアーのように交流人口を増やすことも重要ですが、そこに住まうことが魅力的であることを知ってもらう必要があります。暮らすためには、経済的にも持続可能である必要があるため、地域内で一定の経済を循環できることが望ましいです。他地域に依存しすぎると、地域内のお金が他地域へ流出してしまうからです。
地域経済循環率の向上、得意な産業を活かす
そこで課題4では、人吉球磨地域の得意な産業と苦手な産業(他地域に依存している産業)を分析し、得意な産業で苦手な産業の代替ができないかなどを検討し、地域経済循環率の向上を狙っています。例えば、得意な産業である林業をいかして地域木材を使ったガードレールを導入するようなアイデアや、小水力発電による電力自給率の向上を考えたりなどしています。
65歳をこえても元気に働く、労働力の実態
他にも、課題4では生産年齢人口や労働力人口の増加を目標に掲げています。一般的に生産年齢人口は65歳までになっていますが、特に人吉球磨地域ではその年齢を越えても働いている元気な方がいることから、労働力の実態を測り分析したいと思っています。その結果をもとに労働力向上のシナリオを提案していくことも今後行っていきたいです。
人吉球磨地域でくらす多彩な魅力を引き出す研究
この地域に暮らし、儲かって、しかも幸福に暮らしていけることが重要です。そこで熊本県の幸福度調査などを参考にしながら、人吉球磨地域で暮らすことがウェルビーイングな状態につながるのだということを、地域の魅力と合わせて伝えていければと思っています。人吉球磨地域は、水質日本一の川辺川、温泉、球磨川下り、釣り、寺社仏閣巡り、米焼酎、SL機関車、トレイルラン、アニメの聖地巡礼など多世代かつ多様な人に受け入れられる魅力で溢れています。この研究がきっかけとなって、人吉球磨が自然とともに生きていける楽しい地域であることが伝わり、地域が元気になればうれしく思います。
その他研究に関する情報は、研究拠点のホームページをご覧いただければ幸いです。-Yuta
IoT技術がつなぐ新しいコミュニティのあり方
Yutaさんのお話の中でMugikoは、課題3「市民参加型IoT」の活動の展開が印象に残りました。地元の人々の協力をえて設置したカメラが、都市に住む人々にとっても、いつでも地元の状況を知ることができ、緊急事態に「危ない、避難して」と家族が電話で呼びかけることもできる。また、地域の集会場でカメラの映像をスクリーンに映すだけでなく、そこに設置されたスマート・スピーカーに話しかけ、スマホを使い慣れていない高齢者であっても、見たい映像や、聞きたい音楽を引き出し、最新の情報技術を感覚的に楽しむことができるというお話は、わくわくしました。
来週は、Yutaさんの3回連続トークの最終回です。「緑の流域治水」プロジェクトに、Yutaさん自身は、どのような面白さを感じ、何に関心があるのか、お話を伺います。お楽しみに。-Mugi