Blog: LondonからZineレポート(8) London Print Studio & London Centre of Book Arts, Sept.20, 2016

Notting HillにLondon Print Studio

次のGMZ#4制作にむけて、当時の印刷機を見てみたい。←Blog:LondonからZineレポート(7) インターネットで検索するなかで見つけたのが、London Print Studioです。ここのスタジオには、さまざまな印刷機があり(Screen Printing, Intaglio, Stone Lithography, letterpress, Digital)、多様なコースも用意されています。住所(425 Harrow Road London W10 4RE UKは、ノッティングヒル北部Hammersmith & City LineのWestbourne Park 駅から徒歩10分ほどでしょうか。

Westbourne Park, London, Sept.20, 2016

Westbourne Park, London, Sept.20, 2016

場所を確認するだけでも

2016年9月20日、今回のロンドン滞在の最終日、午前中は長年お世話になっているお年寄りに「来年またくるね」と挨拶し、ホテルに戻るか、ノッティングヒルへゆくか迷いました。というのは、この夏は、私は足を故障し湿布を貼り鎮痛剤を飲み、折りたたみの杖を鞄に入れて、2週間のフィールドワークをなんとか持ちこたえました。帰国の長旅にむけて少しでも足をやすめるべきか。でもLPSの場所だけでも見ておきたい。フィールドワークの道具はもたず、そのまま電車に乗りました。

そこから長い午後が始まりました。

LPSに到着、ギャラリーっぽい

London Print Studio, Sept.20, 2016

駅から徒歩20分くらいかけて、LPSに到着。Harrow Roadの外から展示が見え、スタジオというよりも、ギャラリー&ショップに見えます。意外に入りやすそうです。ショップの奥のスタジオに、印刷機が見えます。

いろいろな印刷機!

私は、ショップを通り抜け、スタスタと(歩けるやん)とスタジオに入り、わ〜すごい!と興奮。スタッフの方に、「1960年代のコミュニティ活動について勉強しています。1968年に設立されたNotting Hill Pressに関心があり、印刷機を見たくてここに来ました」と話しました。

London Print Studio, Sept.20, 2016

予約なしにいきなり入ってきて話す失礼な客に、その日スタジオを担当していたValentinaさんは、丁寧にスタジオを見せて説明してくれました。スタジオの裏には、運河が流れていて、そこからGMZ#2の表紙にもなった、Trellick Towerが見えます。

Trellick Tower from London Print Studio, Sept.20, 2016

Trellick Tower from London Print Studio, Sept.20, 2016

コミュニティベースのオープンスペース

「このスタジオは、アーティスや地域の人々に開かれています。誰でも、会員となって、ここの機械を使って自由に印刷をすることができます。ワークショップもあります。LPSの始まりは、1970年代だと聞いています。そうした歴史に関心があるなら、設立者のJohnさんにお話を伺うのがよいかと思いますが、残念ながら今日は不在です」

コミュニティベースの印刷所という発想は、Notting Hill Pressと共通するところがあります。GMZ#4を制作するまでにもう一度ここに来て、LPSの歴史についてお話を伺うことができればと思います。

London Print Studio, Sept.20, 2016

London Centre of Book Artsがおすすめ

このとき、GMZ#3を手元にもっていませんでしたが、スタジオのパソコンでGMZのサイトを見ていただき、どんなフィールドワークをして、それをZineにしているのかを伝えました。Valentinaが、「それならぜひ、ここに行ってみたら」とすすめてくれたのが、London Centre of Book Artsでした。

最寄り駅は、Hacney Wick、ロンドンの東の端、行ったことがない場所です。地図も、それ以上の情報もなく、wifiがないところではスマホで検索できず、不安ですが、”London Centre”と銘打っているくらいだから、駅前の地図にのっているような施設なんだろう、と思ったのが間違いでした。

Kensal Rise駅, Sept.20,2016

Kensal Rise駅, Sept.20,2016

午後2時、28番のバスにのり、OvergroundのKensal Rise駅からHackney Wickへ向かいました。

Hackney Wick駅で愕然、LCBAはどこに?

Hackney Wick, Sept.20, 2016

駅員に尋ねても、コミュニティセンターしかわかりません。降りたプラットホーム側に歩いていっても駅前の地図には、LCBAらしきものはありません。道行く人に尋ねましたが、知りません。レコードショップありました。アート系のお店なら知っているかも。店員は、親切にも、ネットで検索して、ここからは、駅とは逆方向だと教えてくれました。LCBAの住所と、そこへたどり着くまでの地図を書いてもらいました。

Hackney Wick, Sept.20, 2016

グラフィティだらけの街

このメモを頼りに、少し動いては、何人もの人に道を尋ねました。手元に詳しい地図もなく、インターネットも使えない。初めての場所で、しかも、落書きだらけの、よくわからない街。

Hackney Wick, Sept.20, 2016

私はどこにいるのか、とどこに向かっているのか。

Hackney Wick, Sept.20, 2016

こんな閑散とした場所に、Book Artsのスタジオがあるのだろうか。足と顔がひきつってきます。(向こうの見えるスタジアムは、Queen Elizabeth Ⅱ Olympic Parkと呼ばれるものらしい、ということを後から知りました。)

Hackney Wick, Sept.20, 2016

橋を渡り、建物が立ち並び落書きを見てたら、大丈夫そうな気分になりました。道を歩いている人をみつけ尋ねたら、「そこ曲がって、こういって、それで、道の反対側」、と明るく言ってくれたので、もうすぐらしい。
Hackney Wick, Sept.20, 2016

London Centre for Book Artsに到着!

こうして、4時半ころ、確かにLCBAと書かれた建物に到着しました。LPSのような外から見えるギャラリーではなく、スタジオそのもの、のようです。

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

「静かな場所」

LCBAは、LPSよりも広く、そしていくつもの種類の印刷機だけでなく、裁断や製本のための複数の機材があります。LPSもそうでしたが、ここでも、誰かが入ってきても、自分の場所はあなたの場所でもあるようにさりげなく、他人を迎えてくれます。夕方の閉館前で機械が作動していないからかもしれませんが、それぞれが自分の作品つくりに集中できる「静かな場所」という印象を受けました。

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

中央の大きな作業机でパソコンを見ていたGeorgeさんが、入口の側にあった黄色のパンフレットを手渡して、プレスをかけ本の表紙を創っていたLouisaさんが、手を休めながら、2人でいろいろな説明をしてくれました。

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

『本』作りができるオープンアクセス・スペース

LCBAは、2012年10月(つまり、ロンドンオリンピック、パラリンピックの直後)Simon GoodeとIra Yonemuraという2人のアーティストによって設立されました。 [about us]

London Centre for Book Arts (LCBA) is an artist-run, open-access studio providing education programmes for the community and access to resources for artists, designers and makers. 

いろいろな印刷だけでなく、製本もできる!

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

LCBAでは、多種の印刷機だけでなく、裁断、製本のための機械、道具をそろえた[What we have]オープアクセス・スペースです[Access]。その使い方の知識、技術をシェアするため、いろいろなワークショップも開催されています。[workshops]

Shopには、本や道具や、そしてTotobagなどが販売されています。[Shop]

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

Book Artsのつながり

LCBAのスタジオを見学しながら、2週間前にArtists Self-Publishers’s Fairに行ったと話すと、大きな作業机でパソコンを見ていた男性が、「僕もそこにいたよ」と言いました。ブースを出していたアーティストの一人です。LCBAは、ASPの運営にも関わっているようです。

Bookartbookshop-ICA, ASP-LPS-LCBA

Bookartbookshop訪問[Blog: LondonからZineレポート(5)]、そこでTanyaさんに教えてもらったInstitute of Contemporary ArtsでのASPのイベント[Blog: LondonからZineレポート(6)]、そしてLondon Print StudioからLondon Centre of Book Artsへと、Book Artsのネットワークを、私はそれとは知らず歩いたようです。そういえば、TanyaにもらったThe London Bookshop Map-116 independent bookshops, 2016という地図が、LCBAにもおいてありました。

The London Bookshop Map 2016

The London Bookshop Map 2016

ポートランド発、Publication Studio

LCBAの活動はまた、アメリカから始まったPublication Studioの動きと連動していることをLouisaさんが教えてくれました。

Publication Studio (founded in 2009 in Portland, Oregon) prints and binds books one at a time on-demand, creating original work with artists and writers we admire. We use any means possible to help writers and artists reach a public: physical books; a digital commons (where anyone can read and annotate our books for free); eBooks; and unique social events with our writers and artists in many cities. We attend to the social life of the book. ..[about]

このサイトによると、Publication Studioは、2009年にアメリカ、オレゴン州のポートランドで設立され、その後、欧米にネットワークが広がっているようです。Louisaさんは、ロンドンのPublication Studioのメンバーです。

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

同時代的な動きのゆるやかなつながり

Publication Studioの話を聞いて、この夏にお会いしたPuerto Rico出身の舞踏家Nibia PastranaさんからZineをもらったときのことを思い出しました[Blog: Aug.21 & 23 ]Puerto Ricoでは、印刷機などが使える工房があってそこで印刷したと話していました。アーティストたちが機械や道具やスペースを共有するという動きは、いろいろなかたちで、それぞれの場所でおきているのかなと思います。(NibiaからもGMZ#3をPuerto Ricoで受け取ったよ!とメールをいただきました。)

知る人ぞ知る

LCBAからHackney Wick駅まで楽に行く方法を尋ねましたが、歩くほうが早いようでした。LCBAは、誰でも利用可能だといっても、一般の人が、街を歩いていたら偶然にこんなスタジオが見つけた、というノリではなく、それなりの関心と情報と時間がないとここまでたどり着かないなあ、「知る人ぞ知る」場所だ、というのも訪問した実感でした。

London Centre for Book Arts, Sept.20, 2016

印刷機は、とても重そう

Berylたちが、1968年にNotting Hill Pressを始めたときに、どんな印刷機を使っていたのか、LPSやLCBAに類似の印刷機があるのかまでは分かりませんでした。ただ、印刷機はとても重く、2人の女性が簡単に組み立てたり、運んだりできるものではない、ということは容易に想像がつきます。それだけでも、Beryl Fosterから伺った10年分のインタビューを聞き方、解釈が変わります。次のGMZ制作に向けて、これからまた長い道のりです。

印刷機は重い@LCBA, Sept.20, 2016

印刷機は重い@LCBA, Sept.20, 2016

カテゴリー: Mugi-chan blog パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です