No. 738-2, May 16, 2025,JRとは何者か、「Inside Out Project」、「JRクロニクル京都」

KYOTOGRAHIE2025のJRさん関連展示と映画

KYOTOGRAHIE2025が4月12日から5月11日まで京都市内各所で開催され、国内外のアーティストの写真が展示されました。Tateishiさんのお気に入りの会場のひとつが、京都新聞社ビル地下1Fの印刷工場跡です(HOWE*GTR、HSNo. 735)。今年は、フランス人写真家/アーティストのJRの作品「JR京都クロニクル」が会場8A(京都新聞ビル地下1F)会場8B(JR京都駅)で展示されました。さらに、JRが映画監督アニエス・ヴァルダと制作したドキュメンタリー映画「顔たち、とこどどころ」がUPLINK京都で特別上映されました。

今回のHarukana Showでは、このJRさんとは誰なのか、どのような活動をしているのかについて、展示や映画、その他の資料をもとに紹介しました。

Part2. JRとは誰なのか、個人参加型アートプロジェクト「Inside Out」

Part3, JR京都クロニクル @京都新聞ビル&JR京都駅

JRとアニエスがフランスを旅して、人々を撮影

「顔たち、とこどろころ」(Visages Villages/Faces Places, 2017年/フランス、2017年、脚本・監督・出演:アニエス・ヴァルダ、JR)は、映画監督アニエス・ヴァルダ(当時87歳)とJR(当時33歳)が、JRのスタジオ付きトラックでフランスの村々をめぐり、人々の写真を撮りながら旅するロードムービーです。

誰もが人生の主人公ー社会とつながり、世界とふれあう

2人は、旅先で出会った人々の話を聞きながら写真を撮影し、それを巨大に引き伸ばして、街の建物や、廃墟のなった村の家々や、組み立てたコンテナなど、さまざまな場所に貼っていきます。その写真をとおして、一人ひとりが、自身の営みや関係を誇りにおもう瞬間を、映像がやさしく包み込んでいきます。また、年齢差54歳のアニエスとJRが、時にぶつかり、時に寄り添い、いたわりあいながら、偶然に満ちたシナリオのない旅をつむいでいきます。観客もまた、何かにふれていると感じる映画でした。

JR(ジェイアール)とは何者か?

本名を語らず、サングラスを常に着用し、自分の作品について解説しない。こうした姿勢が、JRとは誰なのかをますますと知りたくさせるところが、JRの巧みな戦略なのかもしれません。映画のパンフレットには、次のように紹介されています。

1983年、パリ近郊で生まれる。10代の頃からグラフィティ・ペインティングを始め、17歳のときにパリの地下鉄で拾ったカメラで、自分と仲間たちによるストリートアートの写真を撮って街の壁に貼り付けるようになる。以来、自分を「photograffeure=フォトグラファー+グラフィティ・アーティスト」と称し、ケニアのゲットー、ブラジルの貧民街、パレスチナの分離壁、東日本大震災後の日本など、各国の壁を展示場所として、人々の巨大ポートレートを貼り、世界で最も注目されるアーティストの一人となる。」(p.6)

個人参加型プロジェクト「Inside Out」

2010年に、JRは「世界を変えるアイディア」に贈られるTED Prizeを受賞し、その賞金10万ドルをもとに、個人参加型のアートプロジェクト「Inside Out」を開始しました。このプロジェクトについて調べてみると、近年のの日本でも「INSIDE OUTKOBE 2022」(8/15-8/28)が開催されていました。そのイベントサイトでは、「Indide Out Projectについて」次のように紹介されています。

「2011年より参加型アートプロジェクトInside Outを開始。大都市から紛争地帯と様々な場所で、そこに住む人々のモノクロのポートレートを巨大なポスターとして街に貼り出し、一人一人の語られない物語を街に映しだす。2011年からの11年間で、世界138カ国で44万人以上のポートレートを展示。日本では、2012年に撮影室とプリンターを兼ねたトラックが東日本大震災の被災地を巡回した。あらゆる人が鑑賞可能な壁をギャラリーにするプロジェクトを通して、アートが世界の見え方を変えうることを提示している。」

このサイトに掲載されているYouTube映像、KOBEE WATERFRONT ART PROJECT 「Inside Out Project〜WATERFRONT AREA〜」や、JRによるTEDスピーチ「Why art is a tool for hope(APRIL2022 )などを視聴すると、JRがアートプロジェクトを「ツール」として用い、多くの人々を巻き込み、対話を生み出し、社会を変革しようとする可能性を呼び起こそうとする、仕掛け人としての熱情が伝わってきます。

《クロニクル京都2024》@KYOTOGRAHIE2025

JRさんのこうした活動のプロセスを少し知ってから、KYOTOGRAHIEのJR「京都クロニクル」の紹介文を読むと、作品への親しみをより感じます。以下はその一部です。

JRの作品を通じ、住民たちはただ「観る」者ではなく、作品や都市の風景を積極的に「創る」者となり、道ゆく人は自分自身の認識と対峙する問いを投げかけられます。JRはそのような記念碑ともいえるパブリック・アートを精力的に制作し続けているのです。KYOTOGRAPHIE 2025では、《クロニクル京都 2024》を展示します。….

2024年秋、JRと彼のチームは京都駅前、京都市役所前、鴨川デルタ、出町桝形商店街、大原、など京都市内8カ所に移動式のスタジオを構え、505人のポートレートを撮影し、同時にそれぞれが語る自身のストーリーを録音しました。舞妓、茶人、僧侶、職人、ドラァグクイーンなど、年齢もバックグラウンドも異なる多様な人々が、町家や四条通りなど昔ながらの町並みと現代建築が共存する京都の風景にコラージュされ、縦5メートル横22.55メートルの巨大写真壁画となって京都駅の壁面に登場します。….

ストリートと「世界の現場」で鍛えられた即応力と設計力

これまでのJRの活動や写真、映像、そして「京都クロニクル」の展示をみて、Mugikoが特に印象的だと感じたのは、「写真」とともに「声」が記録・共有されていることです。JR自身は作品の意味を詳しく解説しないかもしれませんが、作品に登場する人々が自分の言葉で語る。JRはアートを、人々が他者に何かを伝える道具として用い、自らは媒介者=ファシリテーターとしての役割をより意識しているように見えます。誰が参加するのか、どのような出会いがあるのかは、偶然の産物かもしれないけれど、そこから協働で「作品」を生み出すことができるのは、JRがストリートで鍛え上げた即応力と、現場から考える企画・設計力をそなえ、人への深い愛着があるからからだろう、思いました。-Mugi

来週はいよいよTateishiさんを迎えてKYOTOGRAHIE2025のボランティスタッフとしての体験談を伺います。どうぞお楽しみ。

◼️ミノタウロス「路地裏の宇宙人」◼️竹内まりや「On the Street Where You Live」

 

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