Blog: Chrisさんのインタビュー(April22, 2011) Zine:メインストリームに抗するメディア

Harukana Show No.4, April22, 2011「アメリカのZinesとは?」

Rizo Chrisさん(ライブラリアン)と出会ったのは、2011年4月16日にUCIMCで開催されたMini Maker Faireです。Chrisさんは、2週間後に同じ会場で開催されるMidwest Zine Festを宣伝していました。Zineについて詳しく知りたくて、Harukana Showへの出演をお願いしました。

Mini Maker Faire@UCIMC, Urbana, April16, 2011

自由な物作り、とにかく、大人たちが楽しそうだったMini Maker Faire@UCIMC, Urbana, April16, 2011

Zineカルチャーを支える人々の想い

第4回(2011年4月22日)のHarukana ShowでのChrisさんのお話は、Zineの初心者にも分かりやすく、また、Zineにたいする熱い想いが伝わってきます。デジタルな情報化時代に紙媒体の小さなメディアであるZineがなくならず広がっているのは、商業文化への批判や、DIYカルチャーを求める人々のなかで、ある種の思想や運動として展開しているのかなと思います。そんなことを考えながら、第296回(2016年11月18日)のHarukana Showで、5年半前のインタビューを再放送し、Ryutaさんにも感想を聞いてみました(Podcast No.296-3) 。ここでは、英語でのChrisさんのお話を日本語で要約します(青文字)。

Chrisさんのトーク(April 22,2011)の抄訳

Zine:反主流のオルタナティブメディア

アメリカのZineのはじまり

Zine(ジ~ン、ちょっとあいだをのばして)と発音します。マガジン(magazine)のzineと同じ発音ですが、アメリカでは、SFのファンジン(fanzine)から生まれた言葉です。SFが好きな人たちが、20世紀の初め頃に小さな出版物、パンフレットなどを作っていました。そうしたファンジンがZineと呼ばれるようになりました。さまざまな形態がありますが、ジンは、小さな冊子で、しばしば手作りかコピーしたもので、大量に流通するものではありません。

Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

メインストリームにたいする挑戦

ライブラリアンになるため大学で勉強しながら、Zineに関心をもつようになりました。Zineは、普通の本や記事や雑誌とは違って、メインストリームからは外れ挑戦的なところに興味をもち、たくさんのZineがあるUCIMCのライブラリーの活動に関わるようになりました。Zineの作り手たちは、ラディカルというか、主流とは違う観点を表現しています。今ではZineも、多様なテーマを扱っていますから、必ずしもそうとも言えませんが。

カワイイ、、、Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

反主流というよりも、カワイイ、、、Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

DIYカルチャーとZine

大学卒業後も、何人かの仲間とUCIMCのZine Collectionの活動を続けています。できるだけお金をかけずにZineを収集しています。ジン・イベントへ行って、自分たちが作ったZineを販売したりもします。Zine作りは誰でも簡単に始められます。作り方はいろいろありますが、身近にあるジンを参考にし、ジンを作っている人に聞いてみる。お互いに学び合う感じです。USにはdo-it-yourselfカルチャーの大きな流れがありますが、ジン作りもそのひとつです。

ジン・ライブラリーについてのZineを作ってZineを集める

私たちのライブラリーについてのZineも作りました。このジン・ライブラリーについて知ってもらい、Zineを作っている人たちに、私のたちのライブラリーに何部か送ってもらえればと思っています。

A Zine of UCIMC Library by Radical Librarian Group

A Zine of UCIMC Library by Radical Librarian Group:

(*上の写真は、Chrisさんたちが作ったUCIMCのライブラリーを紹介するZineです。2016年8月25日に、現在はUCIMCの地下1階にあるZine LibraryでKathrynさんからお話を伺ったときにいただきました。Kathrynさんはイリノイ大学准教授で情報科学を専門に教えています。Chrisさんをはじめとする学生たちの影響でZineに関心をもち、今ではZine Collectionの活動に携わるようになりました、とお話されていました。この時のインタビューは、HS Podcast, No. 287, Spet.16, 2016に掲載しています。)

独立経営のレコードショップや本屋、インフォショップ

どこに住んでいるかによりますが、地域や学校の図書館にもZineを扱っています。たとえば、大きな都市では、多くの図書館にジン・コレクションがあります。地方でも独立経営のレコードショップや本屋で、委託販売という形でよくZineを扱っています。大規模展開のチェーン店では、売れないものを本棚に置いたりはしないし、Zineを扱わない。Zineがあるのは、個人経営の小規模なお店です。ジンの作り手は、そうしたショップにZineを持ち込み扱ってほしいと依頼し、売り上げの何割かを書店に納めます。

Exile on Main Street@116 N Chestnut St., Champaign, March29, 2015

Exile on Main Street@116 N Chestnut St., Champaign, March29, 2015

Champaignにもそんなレコード店があります。Main StreetにあるExileというお店です。地域住民か作ったジンがいくつかあります。その他にも、メインストリームと異なるインデペンデント・メディア・センターのようなところは、いろんな都市にありますが、そういった場所にZineがあります。(HS Podcast No.209, March27, 2015, レコードショップにZineがあった頃with Tom-san)

図書館とは人々が必要とする情報へのアクセスをサポート

図書館は、人々が必要としている情報へアクセスできるようにするのが仕事です。大企業やメディア産業は、私たちに消費させるための情報ばかりに焦点をあてます。Radical Librarian Groupは、隣近所やすぐそこに住んでいる人たちが気楽に自分の意見を交換でき、人々の多様な意見を聞いたり読んだりできる場所があればと思いました。UCIMCのライブラリーでは、ジンや、その他の本の寄付も受けつけています。

Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

DIY、自己PRを基礎としたアンダーグラウンドな動き

Zineは、数えきれないほどたくさんのテーマがあります。典型的なfanzineは、SFのジャンルや、バンドのファンから始まりましたが、1970年代、80年代にはバンドのfanzineがさかんに作られ、また、インディーズのバンドが自分たちでもZineを作りました。Zineは、DIY(do-it yourself)、セルフプロモーションを基礎とした、独自のアンダーグランドな動きです。

Zine Library@UCIMC, April30, 2016

Zine Library@UCIMC, April30, 2016

読みたいテーマに関するZineがたいていある

ラディカル・ライブラリアン・グループが集めたジンは、UCIMCのジン・ライブラリーでいつでも閲覧できます。さまざまな種類があります。自分の暮らし、人生を語るパーソナルジン、DIYに関するジン、たとえば自転車の修理や、料理―たとえばベジタリアンの食などもよくあるテーマですね。健康やセクシュアリティーについて、LGBTやトランスジェンダーなどもあります。あなたが読みたいと考えるテーマについては、それに関するジンがたいていはあります。

シルクスクリーン・プリント@Midwest Zine Fest, April30, 2011

シルクスクリーン・プリント@Midwest Zine Fest, April30, 2011

主流文化から排除された人々の声

少なくともアメリカでは、ジンとは、企業文化、商業的なラジオ局やテレビ局などの大きなメディアに対する声、利益追求とは異なる声、主流のメディアでは聞くことのない声を反映しています。ジンは、アンダーグランドなネットワークのなかで、メインストリームから外れた人々が要している情報を提供する場合が多いです。私が知る限り、主流文化はある種の集団を排除してしまいます。ジンは、オルタナティブな立場を代弁し、メディア産業がそれを阻止しようとするときは自分たちが声をあげる手段にもなります。

Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

Midwest Zine Fest@ UCIMC, Urbana, April30,2011

ミディウェスト・ジン・フェス(2011)、さまざまなグループとのコラボ

私たちのグループは、昨年(2010年)、Urbana Public Art Councilから助成金を獲得しました。Urbana市も、新しいグループ活動にたいする支援をしていいます。これらをえてさまざまなグループと協力してZine作りを普及させるワークショップを開催してきました。そうした活動が実り、ミッドウェスト・ジンフェスが開催できるようになりました。これは、Zineを読むのが好きな人、作るのが好きな人が集まり、Zineを展示販売します。何人かのZine作家が話し、またいろいろなワークショップあります。そんなZineをめぐる文化祭です。(Chris Rizo, Harukana Show, April22, 2011, 日本語抄訳 by Mugi) 

現在のZine Library@UCIMC, Urbana, Aug.3, 2016

現在のZine Library@UCIMC, Urbana, Aug.3, 2016

カテゴリー: Mugi-chan blog パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です