No.499, Oct.16, 2020, 偶然の出会いが恋しい、地図をオンラインで楽しむ with M. Wataru

秋の夜にデジタル地図話

U-Cも朝夕は零度前後まで冷えてきました。紅葉が進みそうです。U-CからM. Wataruさんをお迎えして、ShizuokaからRyutaさん、KyotoからMugikoの3人でトークをしました(日本時間10月15日)。今週と、来週の2回に分けて放送します。WashingtonDCのTamakiさんからパンプキンの写真、WataruさんからはU-Cの季節の写真を送っていただきました。ありがとうございます。

もうすぐHalloween, CUPHDのガイダンスはこちら、trick-or-treatもsocial distanceを保ち直接の手渡しではなく工夫をして。

今週はトークの前半をお届けします。WataruさんからU-Cの季節やイリノイ大学の様子、コロナ禍での大学図書館の利用法や、Wataruさんが専門とされる地理情報科学、GISとの関連で「地図」のデジタル化のお話を伺いました。来週のトークは、地域図書館のお話へと展開します。

Part1, イリノイ大学の秋学期、HALLOWEEN GUIDANCE、大学図書館の利用法

M. Wataruさんの前回の出演は8月(HS No.491-2, No.492-1)。それから2か月の間、キャンパスの生活、学業、どんな様子なんだろう。また、先週のHS (No.498)で話題として触れた、COVID-19と大学図書館についても、Wataruさんに聞いてみました。

偶然の出会いが恋しい

「受講している授業は全てオンラインなので、多くの時間を寮の自分の部屋で過ごしています。ZOOMで食事会、研究会、日本で開催されるシンポジウムなど、オンライン上でのミーティングに参加する機会は増えました。しかし、選択的な集まりなので、思いがけない偶然の出会い、いわゆるセレンディピティの発見は少なくなりました。せっかくアメリカにいるのに、それがいかされない気がするのは残念です」。

文献はオンラインで申し込み、図書館でピックアップ

「図書館は書庫には入れませんが、オンラインで基本的な文献、資料は入手できます。大学図書館に事前に申し込み、受付完了の連絡が届いたら図書館へゆき、学生証で入館し、指定の場所で資料をピックアップします。返却も指定のボックスに入れておくと、返却しても数日間は本には触れず、1週間ほどしてから返却完了手続きの通知がきます。学部の図書館では人数や利用時間を制限して、館内の一部を利用することはできます。いずれにせよ、本棚から偶然に面白い文献を見つけたりする機会がないです」

コロナ禍で研究のモチベーションを維持することも大きな課題です。Part2では、Wataruさんが専門とされる地理学の「地図」のデジタル化について話題にしました。「地図」をオンラインでもいろいろ楽しむことができそうです。Wataruさんに文章でも解説していただきました。

Part2, デジタル・マップを楽しむ、オープンアーカイブ、GISと共同研究

地図のデジタルコレクション

私の分野(地理)でも、電子化が加速しているように感じられます。例えば、この間、空間認知に関する新刊本の購入を大学図書館にお願いしたところ、電子書籍として蔵書に加えられました。オンラインでいつでもアクセスできるのは、コロナ禍では特に有難いですね。所蔵する古い地図をスキャンして電子データ化する動きもあります。例えば、イリノイ大学図書館には、150周年記念の際に作られた Mapping HistoryというWebサイトがあります。イリノイ大学に関する昔の地図や図面、写真等が公開されていて、当時の様子を知ることが出来ます。コーネル大学図書館には、Persuasive Mapsという「メッセージ性」を強く持つ地図の電子コレクションが あります。戦争時に描かれたプロパガンダ目的のものなど、様々な地図が収集されていて、見ていて飽きません。

位置をキーにデータをまとめ、質的研究にも生かす

古地図をデジタル化するメリットは、コンピュータ上で絵として楽しめるだけではありません。位置参照がしっかり出来れば、複数の古地図を重ね合わせて、時代の変化等を追いかけることも出来ます。また、以前 No.451でご紹介した「Virtual Cemetery Walk」(大学敷地内の墓地に眠る先駆者たちの話をweb地図で紹介するコンテンツ) のように、位置が分かれば写真や書類もデジタル空間上に重ねられます。GISは理系なイメージがつきがちですが、このように歴史的な情報の集約にも役立つことから、歴史学や文化人類学での活用も広がっています。

なにより、地図を見ながらその土地の昔話をすると、よりイメージが湧いて楽しいですよね。私も、祖父母が昔経営していた駄菓子屋の話を、県立図書館にて当時の住宅地図を片手に、祖母から聞く機会がありました(これは電子版でなく冊子を用いました)。地図のおかげで、祖母はいろいろ思い出し、私もイメージがしやすかった記憶があります。図書館のありがたみも再確認しました。

様々なGISデータ

いろいろなデータを、位置に紐づけてデジタル空間上で重ねるためには、基盤となる電子地図が必要になります。これは、アメリカでは Census Bureau が TIGER  というWebサイトで道路や行政界などのGISデータを提供しています。日本でも、国土地理院、国土交通省等より基盤となるGISデータが提供されています。上に重ねる様々な情報も段々豊富になってきています。人口等の基礎的な内容は各国の統計局にて入手できます。例えば、日本のe-Stat 、アメリカ のUS Census Bureauのサイト、デンマークのSTATISTICS DENMARKなど、 見比べると仕様も様々で楽しいです(そういえば、今年はアメリカも日本も国勢調査の年ですね)。地域の細かい情報は、近年、各自治体がオープンデータ化を進めています。NYCOpenDataや シカゴのCHICAGO DATA PORTALなどのサイトが有名で、事故や犯罪が発生した場所、タクシーやシェアサイクルの乗降データなども公開されています。No.429-2にてAEDマップの話で少し触れた OpenStreetMap も貴重な情報源です。

民間会社のデータも少しずつ入手できる環境になりつつあります。例えば、東京大学空間情報科学研究センター  では、電話帳や住宅地図等のGISデータを共同研究という形で全国の研究者に貸し出すサービスを展開しています。私の研究でも電話帳のデータを使っています。GISデータの流通拡大と共に、学際的・国際的な研究がますます増えそうです。byWataru

地図のデジタル化、オープンアーカイブ、共同研究

地図がデジタル化されオープンアーカイブとして公開され、制作された時の意図とは異なる視線と情報を重ねて見ると、その地図が多様な意味をもって蘇えることもある。そんなふうに想像すると、地図は生きているなあと思います。また、地図が作られ利用される背景には政治的な企図も多分に含まれます。デジタル化されオンライン上でのグローバルに共有が可能となった時に、どのような共同研究が進むのか、GISシリーズの今後のお話、楽しみです。Mugi

GISは社会科学系の研究や歴史学の他にも紀行文や文学作品、作家の日記などに描かれた道筋などの可視化(と、それを利用した分析)といった文学研究にも使えるので、近年はデジタルヒューマニティーズ(人文情報学)分野で地図による可視化に通り組んでいる研究者もいます。(エモリー大学のCheryl Crowley教授の田上菊舎の紀行句集の研究など)

こういった研究と、その成果の共有・発表のためには、ベースとなる地図や基盤情報、古地図のデジタル化の他にも、古絵図や古写真のデジタル化、文学作品のデータ化なども必要となり、また、それらの著作権や引用のしかたなどが明確になっているほうが望ましくなります。オープンデータ、Creative Commonsライセンスなど、そのあたりの整備も最近は進んできており、デジタルアーカイブを活用する環境が少しずつ整いつつあるのではないかと思います。- Ryuta 

第22回UIUC JPN Community COVID-19 Town Hall資料

UIUC JPN Community COVID-19 Town Hallは、現在2週間ごとにZOOMで開催されています。本日10月16日のミーティングのためにTatsuyaさんが作成された資料の一部を共有します。Tatsuyaさん、ありがとうございます。なお、2020年3月から9月にかけてのU-CのCOVID-19感染拡大の推移と対策については、TatusyaさんがHS No.496 & No.497で解説されています。ご参照ください。

イリノイ州全体の傾向として、この2週間のあいだに陽性者の数が、1日2000人ほどから3000人へと急増しています。Champaign Countyは大きな変化は見られません。10月16日現在では、感染者数累計が5505人(現在陽性364, 回復5,113, 死亡28)です。

Selected COVID-19 Information by Tatsuya: UIUC (10/3-10/16)

Selected COVID-19 News by Tatsuya: IL & C-U (10/3-10/16)

Prep for Fall Events & Holiday Season (from 10/2/20 TH)

  • (10/2) Mayors announce trick-or-treat hours and guidelines
    • Champaign and Urbana will have their trick-or-treating hours from 5-7 p.m. on Halloween.
    • Those measures include wearing proper face coverings, following social distancing guidelines and frequently using alcohol-based hand sanitizer. Officials wanted to remind families that costume masks are not a substitute for proper face coverings.
  • (9/30) IDPH releases safety guidelines for Halloween festivities (IDPH全文)
    • Anyone trick-or-treating, including those passing out candy, should maintain six feet of social distance and wear proper face coverings
    • Consider leaving individually wrapped candy, spaced apart, on a table in driveways or in front of walkways, sidewalks, or any space outside
    • A costume mask is not a substitute for a cloth mask
    • You should trick-or-treat in groups with only your household members
    • Do not eat candy collected from trick-or-treating until after washing your hands.
  • (10/1) Coronavirus response | Ask the Admin: Holiday gatherings and false negatives

Our plan: All nine of us work and attend school from home. The week of Thanksgiving, we get tested on say, Monday, then stay home until the holiday, when we will gather (assuming all tests are negative, of course)

■NOKKO「人魚」1994年(作詞NOKKO、作曲筒美京平)■ピチカート・ファイヴ1998年「恋のルール・新しいルール」(作詞:小西康陽、作曲筒美京平)■井上陽水「カナディアン アコーデオン」1993年(作詞:井上陽水、作曲筒美京平)
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