日本各地で梅雨入り、U-Cも蒸し暑い週末
Harukana Showの6月は、京都国際マンガミュージアムのYuさん(伊藤遊さん)をゲストにお迎えして、マンガトークを爽やかに届けします。収録は6月2日、YuさんとMugikoはKyotoから、RyutaさんはOsakaから参加しました。マンガ、ミュージアム、そしてYuさんとの関わりを、さまざまな角度から深掘りしました。3回の番組に分けてトークをお届けします。
今回のHSのPart1で京都国際マンガミュージアム(MM)の設立経緯とYuさんの専門について、Part2でマンガとアカデミズム、日米の大学や公共図書館やでのマンガの扱いについて、Part3でMMで開催中の企画展示「台湾の少年と日本の少年〜巡り合うマンガ文化の百年〜」と、日本のマンガ文化の商業的な側面を含めた展開について話しています。今回のトークの内容は、下記でMugikoが文章にまとめています。
Part1,京都国際マンガミュージアムの設立の経緯とYuさん
Yuさんの紹介、民俗学研究から、マンガ文化の研究へ
Yuさんは、京都国際マンガミュージアムに勤務し、また京都精華大学国際マンガ研究センター研究員でもあります。MM内での展示などを企画、実施するだけでなく、国内外のマンガ関連のミュージアムや展示の調査を行い、マンガ文化について幅広く研究されています。YuさんのHSへの出演は10年ぶりです*。YuさんとRyutaさんとは初対面ですが、お二人の落ち着いた声の波長がよく合い、3人でのトークが楽しく広がります。
*No.205, Feb.27, 2015 趣味(しょうもないもの集め)からマンガミュージアム研究員に(なっても)with ITOYU-san *No.206, March6, 2015 「考現学」〜日常を観察する「私」たちと自己表現with ITOYU-san
京都国際マンガミュージアム〜博物館機能と図書館機能、展示、イベントも
Yuさんは、もともとは大学院で「民俗学」を専攻していました。指導教員のすすめもあり、2006年のMM開設に関わり、考現学的な視点をとりいれたマンガ文化の研究してきました。日本にはマンガに関連したミュージアムが全国に約70箇所あり、著名なマンガ家のゆかりの地での「偉人館型」ミュージアムやキャラクターの「テーマパーク型」ミュージアムなどがあります。
そのなかでMMは、マンガ文化のアカデミックな研究を目的としてマンガをめぐる資料を収集、保存するアーカイブとして当初計画が始まりました。実際の設立にあたっては、より多くの人々にマンガ文化に触れてもらう図書館としての機能もそなえ、また展示やイベントなども企画、実施するより開かれた文化施設として展開してきました。
Part2,マンガとアカデミズム、大学、図書館でのマンガの扱い
アメリカの大学、公共図書館でのマンガの扱い
Ryutaさんのお話では、アメリカでも2000年代初め頃から東アジア研究においてはマンガを研究対象とする動きが大学でも見られ、2010年代には専門の研究者も現れました。UIUCでは、授業でマンガやアニメを扱うことはあっても、大学のコレクションとしてマンガ本を扱うことはあまりありません。しかし、地域の公共図書館ではマンガはある種の翻訳文学や異文化体験として広く扱われているのではないか、とRyutaさんは考えています。
U-CでもPublic LibraryやUCIMCでもイベント、HSでもManga Talk
HSでもUIUCのマンガ、アニメが好きな学生や研究者が出演しています。また地域の図書館でもマンガに関連する集まりが定期的に行われていました。コミュニティラジオ局があるUCIMCでは、6月12日(木)に「MANGA MANIA」が午後5.30から午後7時30分に開催されます。
日本の図書館におけるマンガの扱い、基準設定、分類の難しさ
日本では、Yuさんのお話によると、公共図書館や学校図書館でマンガを扱う明確な基準がありません。MMでは、地下のアーカイブにおいても、地上の共有スペースでの開架本棚においても、マンガ本を系統立てて分類するのではなく、基本的な情報(たとえば作者名など)を検索できるようにしています。手塚治虫(1928-1989)が亡くなった後、日本におけるマンガ文化が再認識され、またハードカバーのマンガも多く出版されたことで、図書館でも扱いやすくはなりました。
京都国際マンガミュージアムと元・龍池小学校建物と京都の「番組小学校」
MMはまた、元・龍池小学校校舎を建物を活用しています。これは、京都の「番組小学校」のひとつで、明治五年の学制配布以前に、区民との寄付と協力のもとで作られています。MMの建物には、旧校長室や職員室、そして町民たちが集会場に使ってきた畳の部屋も残されています。マンガにふれるだけでなく歴史的な小学校の建物を存分に味わうことができ、コスプレーヤーが集う撮影会の日もあります。
Part3, 台湾と日本のマンガ百年企画展示、大衆文化としてのマンガと政治
マンガと政治、台湾と日本のマンガの100年
MMで現在で開催されている企画展、「台湾の少年と日本の少年〜巡り合うマンガ文化の百年〜」(2025年5月24日~6月24日)についても、Yuさんにお話を伺いました。マンガは、台湾においても日本においても、その時々の政治体制からの抑圧や影響を受け、また制作においては商業的な成功を求められます。この展示では、日本統治や「白色テロ」などの影響とマンガについて、台湾の雑誌編集者蔡焜霖(サイ・コンリン 1930-2023)の生涯を軸に、日本に関しては、手塚治虫(1928-1989)を軸に展示が構成されています。
日本のマンガ界〜メジャーとカウンターの二重路線の新陳代謝
Yuさんはさらに、日本の大衆文化としてのマンガのメジャー路線とカウンターカルチャー路線が絡み合う展開について語っています。手塚治虫も、もともとは、関西のアンダーグラウンド(赤本、貸本屋)出身です。アンダーグラウンドゆえに、新しい「実験」を試みることができます。子どもたちには、この路線が面白いと受け入れられ、手塚はマンガ界においてメジャーになっていきました。これに対して「打倒手塚!」路線が生まれていきます。日本のマンガ界は、こうした主流と対抗文化のクリエイティブな緊張関係と新陳代謝が続いてきました。
Yuさんとのトーク来週へ続きます。お楽しみに!-まとめMugi
Part4, Yuさんの今回の選曲と解説
ヒップホップが大好きなYuさんに、今回の選曲をお願いしました。「海の向こうでも大人気な日本アニメの主題歌となった曲を選んでみました」 -Yu。
◼️Nujabes feat. Sing02「battlecry」「サムライチャンプルー」(2004年)という、海外でも大人気となったアニメのオープニング曲です。Shing02が日英バイリンガルラッパーなので、「日本語ラップ」ではありませんが…◼️Creepy Nuts「オトノケ」、『ダンダダン』(2024年~)という、たぶん今一番人気なアニメ作品のひとつを盛り上げている曲です。Creepy Nutsは、これもアニメ主題歌の「Bling-Bang-Bang-Born」をグローバルヒットさせてます。◼️Awich「Frontiers」、『シャングリラ・フロンティア』(2024年~)という、元はライトノベルで、マンガになってアニメになって…という作品の主題歌です。Awichは、沖縄出身のフィメールラッパーで、グローバルな活躍も目覚ましい、日本を代表するラッパーです。-Yu