プレゼンテーションもコミュニケーション
2018年9月から客員研究員としてイリノイ大学に在籍し、あっという間に時が過ぎ、残り3ヶ月となりました。毎週のHarukana Showの制作や、アメリカやイギリスで調査研究をするだけでなく、Grassroots Media Projectの活動について話す機会に恵まれました。慣れない英語に苦労しながらも、言葉が不自由だからいっそうに、プレゼンテーションはコミュニケーションなんだなあと、様々な場面で実感しました。
いきなり、素手でプレゼン
2018年の秋学期には、学部生対象の「都市研究」と大学院生対象の「図書館学」のZine Workshopに参加しました。10月の都市研究のクラスでは、甲南大学の学生たちが制作した Zine作品を紹介する準備はしていました(Blog:U-CのThe Idea Storeと「工芸品」としてのZine)。ところが、授業開始直前、「今日は、ゲストから話してくださいね」と言われ、「えっ!?」。初めて参加する授業で、20人ほどの学生に囲まれ、いきなり、素手でプレゼン。
問いかけ
考える時間もなく、でも、これから都市問題についての調査をしてZineを作る予定の学生たちの顔を見ていたら、「誰に何を伝えたくてZineを作るのか」と問いかけてみたくなりました。Zineは、教科書から「作り方」を学ぶというよりは、何かを伝えたいという思い入れが、その人のZineを形作っていくと思います。それを伝えたく、気がづいたら手振りを交えて、15分ほど話していました(Blog:Zine in the Classroom(1)「Zineを使った授業の作り方」)。
英語の原稿を目が弾いてしまう
11月の図書館学の大学院の授業では、事前に授業の進行予定も確認して、話す準備もしました。パワーポイントのスライドと配布用の資料も印刷し、プレゼンの内容を記した英文を作成しました。ところが、話の途中で英文の用紙を見ても目が弾いてしまい(アルファベットの文字と脳が交信せず)、プレゼンの助けになりません。スライドを道しるべに、話を脱線しないように、なんとか半時間ほどで話を切り上げました。(Blog:Zine in the Classroom(2)図書館学のZine Workshop。
対話の中で引き算
ラジオ番組を通して 、トークの時間調整には慣れているはずですが、自分のプレゼンとなるとなかなか難しく、英語では特に、時間内には予定した内容の一部しか伝えることができません。でも、焦って全部話すより、内容をだいぶ削っても、話の流れでふっと思いついたエピソードを入れたほうが、聞いている人には伝わりやすい気がしました。日本の大学で授業をする時は、準備した内容をそのまま伝えようとして、言葉を一方的に時間の中に押し込めていたなあと思います。
地域イベントでのパネルディスカッション
4月のSmall Press Festでは、Grassroots Media Zineの制作と頒布を通したアメリカやイギリスでのフィールドワークについて話しました(Blog:Small Press Fest@UICIMを3倍楽しむ)。この時は、地域で開催されるイベントで、しかも、第1回目のSPFです。どのような人が参加するのか、想像ができませんでした。英語でのパネルディスカッションという形式も、私には初めてです。3人のパネラーと1人のコーディネーターが事前に顔をあわせる機会はなく、打ち合わせはメールのやり取りだけでした。
私の話も聞いて欲しい
会場では、パネラーが全員、一列に前に座り、オーディエンスと向き合う形になります。私のプレゼンは最後です。2人が先に話す間、フロアの人たちが熱心に耳を傾けている様子がよく見えました。すると、ここに居る人たちが、私が話す時になって帰ってしまったら悲しいなあ、私の話もけっこう面白いから聞いて欲しい、という気持ちが湧いてきました。2人の話し手のエネルギーと目の前にいる人たちに触発された感じです。
テーマに対する話者の親密度
SPFのプレゼンテーションでは、パワーポイントは、写真を中心に作成しました。準備のためにスライドを繰り返し見て、何度も順番を入れ替えていくうちに、話す内容が、映像とともに体に入っていきました。話の内容に対する話者の親密度は、聞き手に直接に伝わります。私の言葉がたどたどしくても、スライドがテンポよくつながると、観ている人が映像から意味を補い楽しんでくれる。時には笑いがこぼれる。面白い体験でした。ただ、最後のディスカッションで、会場からの質問の意味が十分に理解できないまま、トンチンカンな回答をしてしまい、後から落ち着いて考えたら、こう言えばよかったなあと、残念な思いも残りました。
イリノイ大学での発表
イリノイ大学のCEAPSでの発表(VASP BROWN BAG SERIES PRESENTS@UIUC, April25, 2019)は、コミュニティラジオ局WRFUとHarukana Showを事例に、Grassroots Mediaについての私の調査と、メディア実践を取り入れた大学の授業について話をしました。聞き手は、イリノイ大学の教職員、学生など30人ほどです。
この時は、スライドだけでなく、短い動画も2本を使いました。1本は、Harukana Showのプロモーションビデオ(Youtube)、もう1本は、甲南大学の授業で、教室とWRFUのスタジオをつないだラジオ番組制作の実習の様子を記録した動画です。
聞き手の集中力に支えられる
この日の反省は、動画の要点を説明する時間を用意していなかったことです。発表は予定とおり40分で終えましたが、またもや情報を詰め込みすぎました。それでも、聞き手の集中力が途切れず、オーディエンスに支えられたプレゼンテーションでした。
うれしい、つながり
また、5月のHarukana Showに出演していただいたゲストは、CEPASでの発表を聞いてくださった方々です。秋から甲南大学に留学予定のYessica さん(No.424-1)、同じくMariaさん( No.426) とは、会場で初めてお会いしました。イリノイ大学付属高校の日本語担当のMariさん(No.425)、イリノイ大学大学院生のKojiさん(No.427)、そして、先週は、CEAPSのOutreach CoodinatorのMikeさん(No.428-2)。うれしいつながりです。
ここに記したいずれのプレゼンテーションも、イリノイ大学の関係者に声をかけてもらい、大学内外の会場でも機材の設定や映像を撮影など、いろいろな方に助けてもらいました。そこにいる人たちと場を共有するしあわせな時間でした。この経験を大切に活かしていきたいなと思います。Mugi