No.643, July 21, 2023, 音楽とDIYカルチャーと”編集”業 with Oda-san

International Zine Monthに素敵なゲスト, Oda Akinobuさん

本日のHarukana Showのゲストは小田晶房(Oda Akinobu)さんです。hand saw press Kyotoというリソグラフスタジオを運営されています。また市内で、ヴィーガン料理の食堂もされています。今週は、Odaさんにとっての音楽とDIYカルチャーとZINEについて、そして来週は、リソスタジオについてのお話をお届けします。そういえば、7月は、International Zine Monthです。

収録は、7月14日(金)、OdaさんとMugikoはKyotoから、RyutaさんはShizuokaから参加しました。Part1では、UCIMCの月例集会について、Part2&3では、Odaさんとのトークです。

Part1, WRFUのMonthly Meeting, スタジオをリノベしたいけれど…

毎月、第3月曜日の夜7時からUCIMCのホールで、WRFUの番組担当者やスタッフのMonthly Meetingがあります。この春から3年ぶりに対面に戻りましたが、オンラインでの参加もできます。人が集まるまでよもやま話。日本にいるMugikoに、「カナダの森林火事の影響がまだ続き空が霞んでいることもあるよ。ところで、IMCで最近、鳥を飼っているのを知っている?」とZoomの画面に映し出して見せてくれたりします。

予算はなく、皆で知恵を絞る

先月の集会では、WRFUの新番組の申し込みについて話し合いました。ラジオ局のスタジオにターンテーブルを置いて生放送の番組を始めたいが、どのように接続するのか、といったことを、会議の場所をスタジオに移して話し合いました。今月の会議はその続きで、「ターンテーブルを置く机が必要だし、ついでに古いソファもなんとかしたい」。しかし、WRFUの財政は厳しく、スタジオをリノベする予算はありません。そこで、先週のHSでも紹介した、University YMCAのDump & Run(8月19日、20日)のBIG SALEで探してみよう、ということになりました。

WRFUのラジオ局の機材はもともと中古品ばかり、スタジオそのものも、電波塔の建立も、手作り、DIYです*。8月のWFUの集会は8月21日(月)、スタジオは少しは変わっているでしょうか。-Mugi

*No.90 December14, 2012 祝WRFU NEW TOWER! SAVOYまでKohaku Talk(紅編)*3900 poundsのTower 到着(Nov.5)、作業開始(Nov.6)Dig Dig Dig!*No.597, Sept.2, 2022, 楽平家オンラインサロン(後半)カウンターカルチャーとしてのコミュニティラジオ

自分たちで作るDIYなプロセスを“編集”する with Oda-san

Part2, 小学生からブルーグラス、アメリカのDIYカルチャーへの憧憬

Part3, Fanzine、自分たちが支える、こぼれ落ちる情報を発掘、つなぐ

Odaさんは「編集者」だと自己紹介されました。ただし、本や雑誌の編集だけではありません。「自分たちで何かをすることが基本です。インディーレベル、出版、ベジタリアンレストラン、リソグラフの印刷スタジオなど、音楽、文章、食べ物を、編集します」。Odaさんが、何を“編集”するのかは、その時々の出会いや状況によってさまざまですが、DIY精神は一貫しています。Odaさんのお話を、今回はMugikoが要約します。詳細はPodcastをぜひ、聞いてください。

ブルーグラス、DIYカルチャーとの出会い

Odaさんは、小学生の頃からブルーグラスが大好き、バンジョーも弾いていました。日本ではマイノリティな音楽ですが、80年代のKyotoでは、大学にアメリカ民謡研究会などもあり、また民放ラジオでもブルーグラスが流れていました。ティーンエイジャーのOdaさんは、一般のメディアにはのらないような情報を、当時の同人誌などから探すようになりました。ブルーグラス、カントリー関連の情報をとおしてOdaさんは、アメリカのDIYカルチャーにふれ、自分でログハウスを作ってしまう、車を丸ごと改造しちゃう文化に驚き、憧れるようになりました。

PunkとDIYカルチャー、Fanzine

20歳の頃にはOdaさんは、アメリカやイギリスのパンク音楽にハマりました。商業主義を否定し、チャートなんて無関係、メジャーレーベルでなくても、自分たちのレーベルを立ち上げレコードを作ればいい。そんなパンク音楽とDIYな生き方は、Odaさんにとっては、強烈に”クール”なものでした。ファンもまた、応援するバンドを知ってもらうため、自分たちで冊子を作り配布し、離れた地域に住むファンたちとも情報を交換しました。こうして70年代後半から80年代にかけてPunk Fanzineが作られるようになりました。

貴重な情報発信、コミュニケーションツール、Distroの増加、展開

インターネットもない時代、 Fanzineは、ファンコミュニティをつなぎ、情報をより広く届ける重要なツールでした。販売を目的としたものではなく、互いのZineを交換したり手紙で送っていたものが、アメリカでは、Zineを扱うDistroが全国で増え、ローカルなZineを受け取り別の場所に移動して配布したり、メールオーダーでZineを遠方にも郵送するようになりました。当時は郵便料金も、現在と比べてかなり安かったのです。こうしてディストロが成長し運営規模を拡大したり、インディレーベルを立ち上げるものまでありました。

*US Zine Distro, International Zine Distros, Zine Library, Zines at the Library Congress

日本のZineなるもの〜レアな音源発掘、情報発信

日本では、Zineという言葉が使われるようになったのは、2005年頃からですが、音楽に関してZineなるものや同人誌は、それ以前からありました。また、1980年代にCDが登場したことによって、廃盤となっていたレコードがCD化され、レアな曲も入手しやすくなりました。しかし、英米でも忘れられとりこぼされたような音源を発掘して情報発信するミニコミが作られたり、独自の音楽批評が展開していきます。

『三ちゃんロック』

20歳代のOdaさんは、『三ちゃんロック』(1988〜1992)を読み、また当時の湯浅学安田謙一岸野雄一といった人々の活動に憧れました。Odaさんと同時代、あるいは少し若い世代のTokyoを中心とした音楽の盛り上がり(後に「渋谷系」とよばれるJPOPへと展開)には、のることはできませんでした。20歳代後半はフリーのライターをしていましたが、ある時、東京の音楽雑誌で仕事をえて、「編集者」としての基礎を学ぶことになります。

*Akinobu Oda, Note, D.I.Y. パブリッシングのすすめ, 「第2話 じゃ、自分たちで出版社をやってみるか?」2023年7月6日

Odaさんの”編集”のお仕事

小田晶房『渋谷のすみっこベジ食堂』(2016)の筆者プロフィールによると、Odaさんは、その後、「福田教雄(Sweet Dreams)とのインディーマガジン『map』の発行、二階堂和美やトクマルシューゴを輩出したインディーレーベル、compare noteの運営、海外アーティストの招聘業務などを行う。2007年12月、渋谷の鶯谷町に、素材に肉や魚を用いないベジタリアン食を提供する『なぎ食堂』をオープン」。そして、2019年よりTokyoからKyotoへ移住します。次回のHSでは、さまざまなDIYな活動をされてきたOdaさんが、どうしてリソグラフと関わるようになり、Kyotoからどんな活動を展開されているのか、続きのお話を伺います。-Mugi

今週のOdaさんの選曲、パンクではありませんが

今週のOdaさんの選曲は①Shaggs “Philosophy of the world“と②Brave Combo “A Night On Earth“です。①シャグスを聴くとへっぽこでどうしようもないように聞こえて、その向こうにとんでもなく美しい音楽への愛情を感じるのです。何十年という時間音楽を聴き続けても、気づくとこの場所に戻ってくる感じがします。②ポルカで世界を包み込む最高のライブバンド。世界のどこかの田舎の片隅で行われるタレントショウ(素人名人会)のバッキングを永遠にやり続けているかのような、そして常に笑顔が浮かぶ音楽。-Oda

Punk Fanzine〜音がないPunkな世界

2019年1月MugikoはLondonのBishopsgate Library*で、たくさんのPunk Fanzinesを手に取ってみました。音がないPunkの世界です。激しい言葉やデザインに圧倒されますが、その一方で、紙と印刷の手触りには懐かしさもおぼえました。その年の3月にはHSで、「Punk Fanzineに触れて、Punkを聴いてみる」(No.416)と題した番組をお届けしました。この時のトークと、Tomさん、Ryutaさん、Kanaさん、Tateishiさんからのコメントは、今回のOdaさんのトークの内容と、す〜とつながるような気がします。今日の3曲目は、Ramones“Now I Wanna Sniff Some Glue”をお届けしました。

*Blog:LondonからZine レポート(12) Bishopsgate LibraryのPunk Fanzineに圧倒される, Jan.21, 2019

リンク、リンク、リンクなダイナミズム

1980年代、英米発の音楽や「対抗文化」の活動スタイルや精神に、日本も直接に影響を受けながら、独自に「深化」していったそのプロセスに、Odaさんは「編集者」として立ち会ってこられたのだなあと思いました。

Odaさんのお話はまた、Harukana Showのメンバーの活動やゲストのトーク、そしてMugikoのロンドンやイリノイでの取材とさまざまにリンクします。ZineやDIYな活動は、それぞれはパーソナルで小さなつながりかもしれないけれど、だからこそ、人を介して、偶然にもつながっていきます。その連鎖のダイナミズムと手応えのようなものが、Zineなるものの面白さだなあと、Odaさんのお話を聞いて、改めて思いました。

来週のリソグラフスタジオのお話も、ワクワクしますよ。お楽しみに。ちょっと先にリソスタジオやD.I.Y.パブリッシングについて知りたい方は、Oda Akinobu Notesへ。ーMugi

 

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