No.596-2, Aug. 26, 2022, 楽平家オンラインサロン(前半)誰でもメディアになれる?Harukana Showの試み

米国のコミュニティラジオ局から伝えて、つなぐ

8月10日に開催された第24回楽平家オンラインサロン (LOS)では、Mugikoが、「多文化接触のメディア空間」と題して、アメリカ、イリノイ州のUCIMC (Urbana-Champaign Independent Media Center) 内にあるコミュニティラジオ局WRFUの日本語ラジオ番組がどのように始まったのかを説明しました。UCIMCが掲げる”Become the Media”とはどういう意味だろう、という問いを参加者と共有したいと思い、Harukana Showを事例としてお話をしました (Podcast Part2 & Part3前半)。

続いて、Ryutaさんが、アメリカのMedia Historyについて概説し、UCIMCやWRFUといった独立系の草の根メディアが誕生する背景についてふれました (Part3後半)。第24回楽平家オンラインサロン全体についてのレポートは、LOS サイトに掲載されましたら、HSサイトでもお知らせします。このPodcastでは、トークの内容を補足する形で記します。

Part2, 誰でもメディアになれる?Harukana Showの始まり

“Impossible!”と “You can do.”

Mugikoは、2010年9月から1年間、UIUCに客員研究員として在籍し、Urbana市にアパートを借りました。街歩きをしながら、IMCを発見。面白そう!といくつかの集会に参加しました。そこでWRFUのメンバーに声をかけられました。「あなたもラジオ番組を担当できます。日本語でもいいですよ」。

絶対無理と心の中で即答するMugikoに、WRFUのメンバーはこう言いました。「You can do!」今から思えば、突然集会にやってきた英語が不自由な見学者に、明るく声をかけ、番組作りをすすめること自体、すごいなあと思います。この時から、UCIMCが掲げるbecome the Mediaというメッセージについて考え始めました。

今回のLOSで話をするために、番組を始めた頃のMugi-chan Blogを久しぶりに読み返してみました。あの頃のことばが、今の自分の背中を押してくれるような気がします。

よくわからないけれど、オルタナティブメディアについて

Sept.17, 2011, Mugi-chan blog @ Harukana Show old siteより一部抜粋

そこにWRFUがあったから

ラジオ番組を始めたきっかけを尋ねられたら、知らない街を歩いてみたら、そこにIMCがあったから、WRFUのメンバーが何だか楽しそうだったから、あなたにもできるよ、と言われて、そうかあ、と思ったから、でした。そんな偶然を楽しんだ、というには、刺激あふれる濃い時間でした。

好きにやっていい

WRFUの番組は、担当者のそれぞれのスタイル、持ち味で制作されます。その前提は、しかし、英語や言語を不自由なく使え、その社会での常識や、その道のスタイルや“当然”をある程度は知っていて、仲間がいてネットワークがあって、一定条件を満たした人たちにとってのスタート地点。その場所が、誰にでも開かれていても、そこでの当たり前にたどりつくまで、見えないバリアがたくさんあって、なかなか踏み込めない。けっこう、不自由!小さな憤りというか、いらだちが自分のなかにありました。

失敗したくない、迷惑かけたくない、みっともないのはいや

Harukana Showをスタートして気づいたのは、何かを始めるときに、基本を習得したら、次へ進むことができる、と私が、思い込んでいたことです。誰も、その基本を教えてくれない。どうして?今から考えると、私にとって、その”基本”とは、実は、「失敗したくない」、「迷惑をかけたくない」、わざわざ「みっともない」目に遭いたくない、ためのものだったんじゃないかなあ、と思います。

とんだハプニングは、人との関わりの始まり

どんな準備しても想定外のことは起きうる。ましてや、 設備も機材も資金も限られていて、 それぞれの人が使える時間もエネルギーも経験も、立場もゆきたい方向も違う。 全てが思うとおりにはいかないし、みんなが同じようにもいかない。でも、ハプニングや、失敗を自分で抱えこんだり、何かの、誰かのせいにするのではなくて、その時にこそ、どうしたらいいかを、人と一緒に考えることはできる。何かを始めないと、動いてみないと、トラブルにさえも出会わない。とんだハプニングは、人との関わりのはじまり。

IMCやWRFUで出会った人たちの、そうした姿勢は、私には、カルチャーショックでした。

失敗は成功のもと、という発想ともちがう。

つまづいたとき、何が必要なのか、何に困っているのか、何が分からないのか、に気づくことができます。そんな時、迷わず相談してよ、できることがあれば何でもするよ、すっと口がでる手がでる足がでる、ともに考えて、知恵を出し合う。

オルタナティブという言葉について

オルタナティブという言葉に、アメリカで、あるいはイギリスや日本で、耳にしたり,目にしたりしました。それは、ひとつの問題や考えや生き方に収斂していくことではなくて、ばらばらなまでの他人の多様性を認めながら、何かをシェアしていくことなのかなあ、とまだ言葉にうまくできませんが、思います。それが、私が、Urbana-Champaign Independent Centerに出会い、コミュニティFMでのラジオ番組をとおして学んでいることです。

これから、Harukana Showは、新たなスタッフが加わって、にぎやかに、ゆったり楽しくRadio Spaceを開いていきます。私も、引き続きスタッフの一人として関わっていきます。場所を移動しながら、私のラジオな旅は続きます。これからも、よろしくお願いします。-Mugiko, Sept.17, 2011, Mugi-chan blog @ Harukana Show old site

Harukana Show フライヤー 2012年版

*西川麦子 2012, 「コミュニティラジオをグローカルに開く : アメリカ、イリノイ州、WRFU-LPの日本語番組の試み」『甲南大学紀要文学編』162, 51-68,  西川麦子2013「運動としてのコミュニティ・メディア : アメリカ、イリノイ州、WRFU-LPとグローカルなネットワーク」『甲南大学紀要文学編』163, 133-152, 西川麦子 2014「地域の多様性をつなぐメディア実践 : アメリカ、イリノイ州、アーバナ・シャンペーンのメディア表現者たち」『甲南大学紀要文学編』164, 113-132

Become the Media

このブログを書いてから10年がたちました。Become the Mediaとは、最初は、いろいろなメディアを使って表現し、社会とつながることだと考えていました。今もそう思っていますが、もう一つ、誰でも、人をつなぐ媒体になることができるということを実感するようになりました。

どんな人にも物語りがある

インターネットやSNSなどのメディア環境は変化していますが、Harukana Showの番組つくりの考え方は基本的には変わっていません。ラジオ局スタジオという場所とオンライン上の開かれた空間があれば、いろいろなゲストが来てくれるだろう。どんな人にも物語りがある。その一つひとつの語りを番組にしてきました。

偶然をつなぐ協働

Harukana Showは、いつも誰かとの協働でつくられています。パーソナルなネットワークがつながり、ときには偶然も重なり、さまざまなゲストを迎え、番組が続いてきました。番組を開始するときに、Mugikoがとくにこだわったのは、放送後のPodcast作りです。フィールドワーカーとして、出会った人たちからたくさんのことを教えてもらうのに、それをなかなか共有できない。時間に追い越されてばかりというジレンマをずっと抱えてきました。今のことばを未来につなぐ、記録と記憶の開かれたプラットフォームをつりたいと考えていました。

番組後の記録を作り足跡を残してきたことによって、その人が再出演して次の言葉を残してくれたり、別の人が続きを話をしてくれたり、番組をさまざまな方向に展開しやすくしているのではないかと思います。

声のあたたかさ

また、人の声は多様で、毎週、いろいろな息づかいにじっくりふれることができて、わたしは気持ちが落ち着きます。SNSをとおしてメッセージが瞬時にゆきかい、短い時間で効率よく伝えることが求められる時代かもしれません。でも、わたしは、どこに向かうのかよくわからなくても、その人の暮らしや身体から発せられるそのことばの響きに圧倒されたり面白かったり考えさせられます。ときには、自分の何かを重ねて、つられて話し始める。そういうさまざまな「途中」を楽しみつなぐ場を、これからも共有できたらいなと思います。-Mugi

Part3, コロナ下のWRFU、米国メディア史と草の根メディアとHarukana Show

コロナ禍におけるWRFUの活動や放送・配信の方法については、次のPodcastに図を入れて説明しています。No.527, April 30, 2021, WRFUと「故障」、DIY Radioを学ぶ

メディア史、メディア環境の中のHarukana Show

トークではメディア史、メディア環境の中のHarukana Showについて、上の図を用意して話しました。左の線がラジオを中心とした放送史、右の線がインターネットとウェブの技術史で、Harukana Show開始前後に関しては、間の部分に、「インターネット/ウェブ技術を利用したビデオチャット (オンライン会議) システム」、「ソーシャルネットワークサイト (SNS)」、「ウェブを利用した『個人メディア』」のサービスや技術、概念が生まれた年をプロットしてあります。これらの中には、ビデオチャット、ポッドキャスト、ブログなど、Harukana Showで使用している技術も含まれます。

メディア寡占に対する「抵抗」としてのグラスルーツメディア

米国の放送史 (放送技術と放送を巡る法制の歴史) は、Harunaka Showの放送局であるWRFUのような「グラスルーツメディア」の立ち位置や存在理由を知るためにも重要です。米国のラジオ、テレビ放送は、(日本や他の多くの国と異なり) 国営放送ではなく完全な民間放送からスタートしたこと、1980年ごろからの規制緩和で巨大グループによる放送網の寡占、スタジオ (番組作成局) の寡占が起きていることに特色があります。

アメリカの商業放送には日本で「ラジオ」と聞いたときにイメージするような「リアルタイムの番組」、「地域コミュニティの中で作られた番組」が少ないのですが、こういった状況も、その理由のひとつだとRyutaは思います。(このあたりについてはHarukana Showの下記の回でも話しました。) 草の根で運営される低出力コミュニティラジオは、そういった状況に対する「カウンター」として生まれている、という側面もあるようです。- Ryuta 

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